JR東海と県のどっちに有利?静岡リニア「新会議」 座長は県と関係深いがトンネル工事に精通
東洋経済オンライン / 2024年3月11日 6時30分
JR東海が工事を進めるリニア中央新幹線静岡工区をめぐり、2月下旬に2つの動きがあった。
【写真】山梨県側で進むトンネル工事や、2月29日に開かれたリニア静岡工区モニタリング会議の初会合の様子
1つ目は2月25日に静岡市内で行われた大井川流域10市町の首長とJR東海との意見交換会。10市町の首長と国土交通省の意見交換会が1月21日に行われており、これに引き続いて開催された格好だ。JR東海との意見交換会は2023年9月以来。丹羽俊介社長が同社の取り組みについてその後の進捗状況を首長に説明した。
大井川流域の首長はJRに理解
大井川流域10市町の首長は基本的にはJR東海の取り組みに理解を示す。意見交換会は非公開で行われたが、島田市の染谷絹代市長によれば、水資源への影響を調査・監視するモニタリング、および山梨県側に水が流出する可能性があるとして難色を示している高速長尺先進ボーリングについて、首長らがJR東海に「どちらも早く着実に進めてほしい」と伝えたという。
また、田代ダムは来年11月まで設備更新工事のため取水を停止しているため、もし工事期間中にボーリングにより水が山梨県側に流出したとしても、それ以上の水が大井川に戻るのであれば、山梨県側に流れた水を戻さなくてもいいという考えをJR東海に伝えたという。
流域市町とJR東海による事務レベルでの「連絡調整会議」もすでに2回実施していることも明かされた。両者のコミュニケーションは深まっているといってよい。
首長たちの理解が深まったのであれば、次はいよいよJR東海が10市町の住民に直接説明して理解を求めるというステージになるのか。この点については、染谷市長は時期尚早との考えを示した。県内のメディアは連日のように川勝平太知事の言動を批判的なトーンで報じており、世論の風向きが変わったようにも見えるが、流域住民に近い立場にいる首長たちはそこまでとは考えていないようだ。JR東海が先走りして直接対話に踏み切っても住民たちが拒否反応を示せば、これまでの努力は水の泡となる。拙速は禁物だ。
国交省の新たな会議がスタート
もう1つの動きは、国交省が有識者会議に続く新たな会議を立ち上げたことだ。もともと国交省は県とJR東海の意見を調整するため、水資源問題と環境問題のそれぞれについて有識者会議を設置し、水資源については2021年12月、環境保全と発生土については2023年12月に有識者会議が報告書をまとめた。これをもって国交省はこの問題に関する議論は終了したと考えている。
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