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「発酵」に対して世界で巨額マネーが動き出す理由 ビッグビジネスになりつつある発酵の分野

東洋経済オンライン / 2024年3月21日 11時30分

アメリカのパーフェクトデイは発酵技術により牛乳を使用しないアイスクリームなどを販売している(写真:パーフェクトデイ)

「発酵」は、今、世界のホットトピックとして注目されています。2024年には精密発酵と呼ばれる発酵技術の代表的企業であるアメリカのパーフェクトデイが130億円の資金調達を達成しました。他にも、近年世界中で多くの発酵を取り扱うベンチャー企業が誕生しています。

今、改めて発酵が注目される理由について、室町時代から600年続く種麹メーカーの第29代当主であり『ビジネスエリートが知っている 教養としての発酵』の著者である村井裕一郎氏が解説します。

テクノロジーとしての「発酵」

「タンパク質クライシス」という言葉をご存じでしょうか。人類の人口増加や途上国の進展に伴い、近い将来、地球規模でタンパク質の需要と供給のバランスが崩れてしまう危機のことです。他にも、倫理上の理由や、アレルギーなどの体質的な理由など、様々な理由から肉や魚を食べない人、もしくは少しでも減らしたい人たちがいます。

そのため、肉や魚に変わる「代替タンパク質」に注目が集まっており、2030年には市場規模は3兆円を超えるとも言われています。

その「代替タンパク質」をつくる方法の1つとして、発酵に注目が集まっているのです。なぜなら、発酵とは、「微生物の活動によって物質が変化すること」ですが、「微生物の力を利用すれば、タンパク質を効率的に産み出せるのではないか?」と考えられているからです。この分野で、多くのベンチャー企業が世界中で設立され、開発競争が進んでいます。

微生物の力を利用するメリットはいくつかあります。まず、生物の増殖の早さを活かして、人間が工場でつくるよりも効率よく物質を生産できます。また、もともと自然の中に存在している微生物を利用するため、人工的につくられた薬品を利用するよりも環境への負荷が少なく、人間の手や機械ではつくることができない複雑な物質も、微生物によって生産できます。

これらのメリットをより強化するため、狙った通りの物質を、より効率的に生産できる微生物になるように遺伝子を操作して活用しようと遺伝子工学の技術も使われています。まさに、微生物を「生きる工場」として「求める物質」を生産していく技術です。

これを「精密発酵」と呼ぶのですが、現在バイオテクノロジーの分野のホットトピックとなっています。これらの技術は、人類の食料生産や自然環境の保護という重要な社会課題の解決にも結びつくと期待されており、その社会的な意義は計り知れないほど大きいものです。

微生物を利用した「牛乳」を生産

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