出版業界が不況なのは「読者を見てない」から? 読者に寄り添えば、今でもブームは生み出せる
東洋経済オンライン / 2024年3月21日 12時0分
今、書店が青く光り輝いている――。
本連載では、そんな現象を取り上げ、「ブルーライト文芸」と呼ばれている書籍が誕生した背景や、作り手の声をお届けしてきた。
初回:青くてエモい「ブルーライト文芸」大ブームの理由
2回目:「田舎/夏/恋人消える物語」なぜTikTokでバズる?
3回目:「恋空」のスターツ出版がスゴいことになっていた
4回目:ヒット連発「スターツ出版」読者に寄り添う凄み
最終回となる今回は、ブルーライト文芸の勃興が何を意味しているのか、その点について、これまでの書店空間の歴史から考えてみたい。
ブルーライト文芸の勃興は何を意味するか?
これまでの連載での議論をまとめよう。近年、女子中高生を主な対象読者としてシェアを広げつつある「ブルーライト文芸」。その表紙の多くが「青くてエモい」ものであり、また、「田舎」「夏」「ヒロインの消失」といった内容の類似点もある。
ブルーライト文芸の名付け親でもあるペシミ氏は、伝統的な日本文学の感性とブルーライト文芸との関連も指摘する。決して一つのムーブメントで見過ごすことのできない現象が書店に起きている。
こうした文芸作品を精力的に出版するスターツ出版は、意識してこうした表紙の作品を作っているわけではない。
「読者と作家と出版社」の三位一体で本を作ることを意識していった結果、そのようになっていったという。いうなれば、読者に寄り添った結果として、ブルーライト文芸は、偶然生まれたのである。
こうしたブルーライト文芸の勃興からは、どのようなことが読み取れるだろうか。
今回は、この点について考えてみたい。ポイントは2つある。
1つ目は、「出版社が読者に寄り添うことの重要性」、そして2つ目は「いま、物理書店にはどのような可能性があるのか」ということだ。
「作り手」と「書き手」が近かった、かつての書店
まず、1つ目の「出版社が読者に寄り添うことの重要性」についてだ。あまりにも当然のことのように思えるかもしれない。しかし、実はこうした読者に密着した書籍作りの難しさは、そもそも日本の出版システムが構造的に抱えてきた問題でもある。
ここで、日本における書店の歴史を振り返ってみよう。
日本における書店の始まりは、江戸時代の京都に遡ることができる。仏教が盛んであった京都で、仏教についての書籍である「仏典」をはじめとする書籍の商いが隆盛したのである。
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