ミスミG「部品の流通在庫がみえない」問題に一石 国内外の約300社と協力しリアルタイムで把握
東洋経済オンライン / 2024年3月22日 7時50分
ファクトリーオートメーション(FA)向け部品大手のミスミグループ本社(ミスミG)が、国内外の市場に散らばる部品在庫を可視化し、自社ECサイト上で顧客へまとめて販売できる新サービスを3月上旬から導入した。
新サービスの名称はD-JIT(ディージット)。海外の企業を含む約300社の部品メーカーや卸業者と協力し、独自の供給網をシステム上に構築。顧客の要求に応じて複数のサプライヤーのデータを組み合わせ、納期や価格を瞬時に回答する。
ミスミGはインターネットやカタログを通じて他社製品を販売する「商社」としての顔も持ち、3000万点超の品ぞろえを誇る。ただ、取り扱い点数が莫大で、自社で抱える1種類あたりの在庫数は少なくなりがちだった。
最短納期をアルゴリズムで算出
ディージットでは協力サプライヤーの在庫状況がリアルタイムで更新され、アルゴリズムが自動で最短納期を導き出す。
顧客がミスミGのECサイトで部品1000個を注文カートに入れたとすると、「A社から100個、B社から400個、C社から500個を調達するのが最も効率的」などと即座に計算。顧客に「1回目は500個を○日にお届け、2回目は400個を△日に~」と最短の納期を示す。
実際に注文が入ると、自動で各サプライヤーへ必要な個数を発注し、ミスミGが部品を仕入れて販売する。各サプライヤーが抱える在庫が、ミスミGのECサイト上にデータとして連携、集約される形だ。こうして市場に流通している在庫数を見えるようにしたのだ。
結果としてミスミGの1種類あたり受注可能数が大幅に増加する。例えば、某メーカー製の「アンギュラ玉軸受」という商品の在庫数は、これまで約50個だったが、およそ15倍の約740個に増えた。
ミスミGの担当者は「顧客の希望数量に合わせ、複数のサプライヤーのデータを組み合わせて最適な見積もりを瞬時に出す技術は特許も取得した。他社が真似するのは難しいだろう」と強調する。その背景には、製造業における流通プロセスの構造的な問題がある。
部品メーカーは販売機能を持たないため、製品のほとんどを卸業者に託す。卸業者は代理店にその製品を販売し、代理店はさらに二次店へ卸す。工場などのエンドユーザーはここから部品を買うケースが多い。
ただ、この流通の過程で在庫は散り散りとなり、「どこに何がいくつあるのか」が誰にもわからなくなってしまう。
エンドユーザーから見ると、足りない部品がある場合、最初は直接の購買先である二次店に問い合わせることになる。ただ、二次店は小規模な業者がほとんどで、すべての要望に応じられるわけではない。在庫を用意できなければ、工場側は別の調達先を探さなければならない。
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