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子どもを幸せにする非認知能力「創造性」の育み方 「目に見えない世界」に心を遊ばせよう

東洋経済オンライン / 2024年3月28日 17時0分

これは一概に、小さい子ほど創造性に優れているということではなく、心が現実と非現実の境界を行ったり来たりしている時にしか、創造性というものは大きく伸びないからではないか、と私は考えています。

小さい頃は、誰もが目に見えない世界に心を遊ばせられます。ですから、妖怪や妖精や魔法使いが出てくる物語を読むだけで、まるで自分がその世界に入り込んだように、ハラハラ、ドキドキしながら、リアルに物語世界を楽しむことができるのです。

ところが、学齢が上がり、そういうファンタジーの世界、非現実の世界を「どうせ作り話だろ、くだらない」と否定するようになると、その子の創造性は急速に萎縮してきます。目に見えるもの、手で触れられるものにしか価値を見出せなくなるために、想像の中で新たな価値あるものを生み出すことが難しくなってくるのです。

ですから私は、お預かりしたお子さんたちの心を、できる限り長く「現実と非現実の間」に置いておくことを心がけています。目に見えない世界を否定せず、愛や正義や勇気といった、手に取ることのできないものにこそ価値があるのだと繰り返し語りかけ、本やアートや哲学を用いて、可能性に満ちた子どもたちの柔らかな創造性を刺激し続けているのです。

例えば、こちらは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家、アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」という作品。草一本生えない不毛な砂漠で、月明かりの中、1匹のライオンが疲れ果てて眠るジプシー女に近づいている絵です。教室では、子どもたちにこの絵をじっくりと鑑賞してもらい、どうしてライオンが女性に襲いかからないのか? その理由を想像して説明文を書く、という課題に取り組んでもらいます。

非認知能力は、人生を豊かにしてくれる一生ものの財産

子どもたちが考え出す「理由」は千差万別。「ライオンはお腹がいっぱいで、獲物に興味がないのだろう」と考える子や、「このライオンは年寄りで、目もあまり見えず、鼻もきかないからジプシー女に気づいていない」などなど、ありとあらゆる答えが返ってきます。

あまりに理由が面白すぎて、みんなで読んで爆笑することもあるほど、個性豊かな記述解答ができ上がるのです。こうして楽しく記述をしているうちに、創造力はもちろんのこと、21世紀の新学力である思考力・表現力もぐんぐん伸びてきます。

親御さんたちは、「高い偏差値をとるための読解力と記述力を身につけさせたい」とよくおっしゃいますが、実は、そうした力が高まるのは、読書と作文の「副産物」であって、まず子どもたちの中に育てるべき力は、物語の登場人物の気持ちに寄り添い共感する力や、主人公が直面する課題を自分のこととして捉え複数の問題解決策を思いつく力、さらには、そうした自分の気持ちや意見を人に伝えるコミュニケーション能力、などといった非認知能力なのです。

「読解テストで高得点をとる技術」は、人生の前半ですぐに不必要になる受験のためだけの力ですが、非認知能力は、子どもの人生を豊かで幸せにしてくれる一生ものの財産です。そして、非認知能力が高まると、心配せずとも認知能力は自ずと、しかも驚くほどに伸びてくることを、私の教室で育った生徒たちがすでに実証してくれています。

久松 由理:イデア国語教室主宰

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