フィリピン「ラスプーチン」で新旧大統領派が激突 指名手配犯の新興宗教教祖がカギを握る政局
東洋経済オンライン / 2024年3月28日 8時20分
あいさつに立ったドゥテルテ氏は約2000人の参加者に向けて、「改憲に熱心な大統領はこれまでに2人だけだ。マルコス・シニアとジュニア(ボンボン)だ」と話し、「デモはこの場にとどめ、マラカニアンに行くのはやめよう。国民の財産を傷つけてはならない」と呼びかけた。
1986年、マラカニアン宮殿(大統領府)に群衆が押し寄せて現大統領の父であるマルコス・シニアの独裁政権を倒した過去に例えたメタファーである。憲法改正を強行するなら父親と同じように群衆の蜂起で失脚するぞ、との警告だ。
前政権で大統報道官を務めたサルバドール・パネロ氏も壇上に立ち、2028年の次期選挙で大統領になるのは誰かと参加者に問いかけると、「サラ・ドゥテルテ」と参加者が唱和した。
それではサラ氏の後の副大統領は、と水を向けると「ドゥテルテ」「ドゥテルテ」とチャントが響いた。次期正副大統領にドゥテルテ娘と父のコンビの誕生を望むとのメッセージだ。
世論調査では、娘が大統領候補の首位、父が上院選に出馬すればトップ当選という結果も出ている。ドゥテルテ派は、マルコス派が改憲による任期延長などで居座りをねらっていると訴える。裏返せば選挙をやれば勝ち目があると考えているのだ。
サラ氏はこの日、訪欧中のマルコス大統領の職務代行者だったにもかかわらず、あえて集会に参加した。壇上にこそ上らなかったものの、SMNIのインタビューに「キボロイ師の支持者、教団のメンバーが言論と宗教の自由のために集会を開催することをうれしく思う」と答え、参加者と写真に収まった。
ドゥテルテ側の654丁の銃器を登録
現政権への不満を爆発させたドゥテルテ氏は2023年1月30日、南部ミンダナオ島の分離独立を求める署名運動を始めると宣言した。ところが政府関係者やかつての部下だった軍の高官らからも「憲法上認められない」「そうした動きには武力をもって対応する」と一斉に反発を受け、その後は独立に触れなくなった。
それでもファイティングポーズは崩さず、教団の財産管理者に収まった。キボロイ氏が逮捕を逃れるために身を隠せば、ドゥテルテ氏が教団の守護神として前面に立つという意思表示とみられる。
上院の公聴会で元信者が、教団の敷地からドゥテルテ氏とサラ氏が大量の銃器を持ち出したと証言した。ドゥテルテ親子はこれを否定したが、ドゥテルテ一家が5人で計654の銃器を所有しているとラップラーが報じた。
大統領退任直前の2022年5月6日、銃器登録の有効期間を10年に延長する法律が可決され、ドゥテルテ氏は退任までの3週間に358丁の銃器所持の免許を駆け込みで取得した。銃好きで知られているドゥテルテ氏だが、さすがに武力蜂起を起こす気はないだろう。それにしても尋常ではない数である。
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