恩田陸作品史上「もっとも美しくヤバい天才」爆誕 萌え保証!一人の天才少年をめぐる「春」の物語
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 12時30分
小説家という生き物は「ロマンチストの最高峰」だ、そう思った——。3月22日発売の最新作『spring』の創作にあたって、稀代のストーリーテラーたる恩田陸がいのちを絞り込んだのは、この世にまだ存在しない美しき天才の物語をひたすら妄想し、紡ぎ出す作業。根がロマンティック好きじゃなきゃ、やっていられない職業だ。
【写真】モンスター級ヒット作品『蜜蜂と遠雷』を生んだ恩田陸さんの素顔
ホラーもファンタジーもミステリーも、ストレートな青春小説も恋愛小説も自由自在に操ってきたとばかり思われた、恩田陸。だがこの多作な直木賞受賞小説家は、作品を絞り出す代償としてロマンティシズムなんてものと正反対の犠牲を払ってきた、と告白してくれたのだった。
「主人公の中でこれほど萌えたのは初めて」
「会社員を辞めて専業作家になって、いくつも連載を抱えながら、眠くないなぁ、なんでだろうと思いつつ年間6000枚とか書いていて。そうしたらあるとき、バサっと髪の毛が抜け始めて、お風呂で見たら床が髪の毛だらけ。全身脱毛症でした」。そういうときって全身の毛が、上から下へ順番に抜けていくんですよ、発見でしたねぇ。ふふっと笑う。
創作の現場は、自身が紡ぎ出す美しい世界観とは正反対の修羅場。創作のプレッシャーと、自身の限界と。「才能ってなんだろう、というのが私のテーマなんです」。そして今回、恩田が身を削って書き続けた最新作に爆誕したのは、彼女自身「今まで書いた主人公の中でこれほど萌えたのは初めて」と語る、恩田陸作品史上もっともヤバく耽美な天才バレエダンサーだったのである。
構想・執筆10年。史上初の2016年直木賞&本屋大賞W受賞・累計発行部数150万部超のモンスター級ヒット作品『蜜蜂と遠雷』の恩田陸がたどり着いた最高到達点——と聞いて、期待しないほうが無理というものだ。かつて世界のピアノコンクールを舞台に、若き才能たちが音楽の神へ挑む姿を描き、2019年に松岡茉優、松坂桃李らの出演で映画化にも至った『蜜蜂……』の感動をよみがえらせた読者は、その手に取った青春群像劇の新作『spring』を今すぐ冒頭からめくってほしい。
8歳でバレエに出会い、15歳で海を渡った天才舞踊家の萬春(よろず・はる)が、才能あふれる人々との出会いを通して無二の振付家へと成長していくさまを4つの視点から描く、万華鏡のような、圧倒的にロマンティックで美しい世界が花ひらく。
子どもの頃から妄想が尽きたことはない
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