小林製薬の「紅麹問題」初動対応の"致命的な欠点" リスク広報から見て何が悪かったのか?
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 0時44分
紅麹(べにこうじ)を配合したサプリメント「紅麹コレステヘルプ」の服用者が健康被害を訴えている問題。3月27日、小林製薬は4人の摂取者の死亡を報告するに至った。
【写真】小林製薬が扱う商品群。CMで見かける日用品や医薬品まで多岐に渡っている
複数の死者が出るという、企業の不祥事として最悪レベルの事態といえる。これを受けて、同社は入社式を中止、テレビCMも自粛することを決定している。
ここまでの重大な事態にまで陥るのを防ぐことはできなかったのだろうか? 本稿では、主にリスク広報という視点から考えてみたい。
“原因不明”の事態にどう立ち向かうか?
小林製薬に最初にサプリ摂取者の腎疾患の症例が報告されたのは1月15日。同社が消費者庁へ連絡したのが3月21日、消費者庁の指示を受けて大阪市保健所に連絡、大阪市経由で厚労省が知ったのが翌22日。同社が記者会見を開いたのも同日だった。いずれにしても、最初の症例報告から2カ月以上が経っている。「対応が遅すぎる」ということは、メディアからも、厚労省からも指摘されている。
不祥事が起きたとき、当事者やメディアは「起きてはならないことが起きてしまった」という物言いすることが多い。しかし、実際はそうしたことは、頻繁に起きている。いくら防止策を講じても、問題は起きてしまうというのが現実だ。
ただし、それへの「事後対応」によって、結果は大きく変わってくる。最も重要なの「初動対応」だ。リスクマネジメントにおいて「初動対応が重要」というのは基本中の基本だ。
記者会見では、小林製薬「本来はもっと早く報告すべきだったが、何が原因か分からず、できるだけ広く可能性を調べた」と説明。小林製薬がサプリに使われた原料などのデータを調べたところ、「未知の成分」の存在を示す分析結果が出たという。
要するに、「原因が分からなかったから」というのが、報告が遅れた理由である。一般的には、問題が発生したときには下記のようなプロセスをとる。
1. 事実確認
2. 事実関係と対応策の発表
3. 問題への対応
1に時間がかかったため、2ができなかったという説明になる。この問題を一般化すると「原因不明の問題が起き、事実確認に時間がかかる場合にどう対応するか?」となる。
では、こうしたケースではどう対応するのが適切なのだろうか?
どのタイミングで何を報告するのか?
症例が発覚した時点で、紅麹が原因で健康被害が起きた可能性があることをすみやかに公表し、被害を及ぼす可能性がある商品すべてを自主回収する――。供給先が173社もあるとされる中、「原因は不明ですが、紅麹を使った製品は全て回収してください」と取引先に強制することが簡単でないことはわかるものの、とはいえ、死亡事例が出るような事態を2カ月近く開示しなかったことがよかったとは思えない。
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