日本を世界的に見て「異常な国」にした真犯人 金融正常化は日本経済を正常化させるか?
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 10時0分
これまで金利が抑制されてきたために、収益性の低い投資が正当化され、日本経済の生産性が低下した。金融正常化によって、この状態が修正されることが期待される。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第117回。
低金利がもたらしたのは収益性の低い投資
日本銀行は3月18日の政策決定会合で、金融正常化の開始を決定した。
これまでの金利政策は2016年に導入されたものであり、政策金利がマイナス0.1%に設定されていた。さらに、イールドカーブコントロール(YCC)によって、長期金利(10年債利回り)が0%程度に抑えられた。
今回の正常化決定によって、政策金利におけるマイナス金利を廃止して0.1%にする。また、YCCを停止する。これによって、金利が市場の実勢にしたがって上昇していくことが期待される。
これまでの金融政策は、日本経済の資源配分を大きく歪めてきた。特に問題なのが長期金利の抑制だ。正統的な中央銀行の金融政策は、政策金利だけをコントロールし、それ以外の金利については市場に委ねる。
しかし、イールドカーブコントロールは、直接的な介入によって長期金利もコントロールしようとするものだった。
したがって、本来あるべき金利体系よりは長期金利が抑えられた、歪んだ金利体系が継続してきたことになる。これによって、日本の資源配分が撹乱された。具体的には、収益率の低い投資が正当化され、資源の無駄遣いが行われてきた。
それが最もはっきりした形で表れたのは、財政支出だ。財政資金の調達コストが低下したために、国債が増発され、必要性の疑わしい支出が行われた。特にコロナ期においてそれが顕著だった。
また、ゾンビ企業が生き残るといった問題や、住宅ローンの金利が低すぎるために、タワーマンションに対する投機的な動きが発生するという問題も生じた。
最も大きな問題は、経済全体において収益性の低い投資が許容され、それによって、日本経済の生産性が低下したことだ。それがもたらした結果は、以下に見るように、さまざまな面に表れている。
日本企業の競争力が低下
スイスのIMD(国際経営開発研究所)が発表する国際競争力ランキング(2023年6月)によると、日本企業の国際競争力は、64カ国・地域中35位にまで低下した。2015年までは20位から25位程度を維持していたのだが、2016年以降、順位が低下したのだ。
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