「ぬいぐるみと暮らす大人たち」の少し意外な本音 「ぬいぐるみ病院」を訪れる人々が大切にするもの
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 12時50分
ぬいぐるみはかわいいと思うけど、もう大人だし、自分には関係ない……?そう思ったあなたにこそかけ寄っておすすめしたいのが、今回紹介する『わたしのぬいぐるみさん』(こやまこいこ著 KADOKAWA)という作品です。
14の物語に登場する人々は、年齢も性別もさまざま。ひとり暮らしの若い男性もいれば、付き合いはじめのカップルや、親子ふたりの家族、歳を重ねた老夫婦もいます。それぞれいろんな事情を抱えつつ、ぬいぐるみという家族を愛おしんで暮らしています。
そんな、ぬいぐるみを愛する人々を陰で支えているのが「ぬいぐるみ病院」という場所です。長い間大切にかわいがられて、ボロボロになったぬいぐるみたちは、ここに「入院」することで、元気な姿を取り戻します。すると、家族はもちろんのこと、読んでいるこちらまで力が湧いてくるのは、いったいなぜなのでしょう?
この「ぬいぐるみ病院」、なんと実在するのだそう。今回は『わたしのぬいぐるみさん』著者のこやまこいこさんと、「ぬいぐるみ病院」を運営する堀口こみちさんに、お話を聞かせてもらいました。
ぬいぐるみに救われている人たちのための病院を
――「ぬいぐるみ病院」、大人気だそうですね。治療内容によっては、入院まで2、3年待つ状態だとか。堀口さんは、なぜこの病院を始めたんでしょうか?
【マンガより】ぬいぐるみと暮らす大人には、実は激務の男性やキャリア女性も多い
堀口:子どもの頃から引っ込み思案で、ぬいぐるみさんが心の支えになってくれた経験がありました。大人になり、20代の頃に心を壊したときにも、ぬいぐるみのおかげで笑顔を取り戻せたことがあって。
私はもともと医療機器のメーカーで働いていて、その会社の新規事業としてぬいぐるみを販売するお店を起ち上げて、独立しました。起業して1年ほど経ったころ、お客さまから「ぬいぐるみさんのからだが弱ってきた」「けがをしている」といったご相談を受けるようになり、お綿を入れるなど治療(お直し)をすることになりました。
ぬいぐるみが?と思われるかもしれませんが、命を救われている方は、たくさんいらっしゃるんです。クリーニングサービスのような感じではなく、本当の家族といいますか、命ある存在として迎え入れるような、そんなことをやってみようと思いました。
前例があまりなかった、ぬいぐるみの治療
――この本を読むまで、こういった場所があることをちっとも知りませんでした。
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