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「仕方のない赤字」があるという、大いなる勘違い 日立もかつては黒字に頓着しない体質だった

東洋経済オンライン / 2024年5月8日 9時30分

「稼げる会社」にするために日立は何を推し進めたのか(編集部撮影)

川村隆・元会長、中西宏明・前会長の後を受けて2014年、社長に就任、2016年には最高経営責任者(CEO)となり、ほぼ6年にわたって日立グループのかじ取りを担った東原敏昭氏。

東原氏に課せられたのは営業利益率の高い「稼げる会社」にすることと、コト(サービス)を売る社会イノベーション事業への転換を加速させ、その分野で世界に伍していける「グローバル企業への成長」を果たすこと。東原氏はCEO就任3年目で目標の営業利益率8%を達成し、後半の3年間で1兆円を超える大型買収などを決断し、世界で戦える企業へ変革する道筋を付ける。

東原氏が初の著書『日立の壁』で語った、V字回復後にしかけた経営改革とは━━同書より抜粋・編集してお届けします。

稼げる会社にする方法

私は2016年に執行役社長兼CEO(最高経営責任者)になったとき、大事なミッションの1つは、全社の事業やプロジェクトの実態を把握し、不採算事業や将来性に乏しい低収益事業を整理することでした。「稼げる会社」にするためです。

【写真】日立製作所の改革を牽引した東原敏昭会長

カンパニー制を廃して新たに作った社内組織であるビジネスユニット(BU)のCEOには、「営業利益率5%以下の事業について、改善の合理的見込みがなければ撤退するのが原則です」と言い渡しました。事業継続するなら営業利益率8%以上をめざす。さもなければ事業撤退。二者択一を迫りました。厳しかったと思います。

こんな例がありました。旧社内カンパニーの電力システム社は、電力のニュービジネスとして「売電ビジネス」に取り組んでいました。先に触れた電力事業の自由化を受け、日立も新規参入したのです。

日立にはタービンやボイラーなどの発電設備の設計・製造技術がありますし、メンテナンスのノウハウと経験も豊富ですから、自由化をチャンスととらえ、売電ビジネスに参入したのだと思います。火力発電所も新たに建設しました。

しかし、電力システム社は利益率が低いままでした。BU制を導入してサイロを壊し、実態を見てみると、その売電ビジネス事業が赤字を垂れ流していたことがわかったのです。

売電ビジネスで競争力を得るには、コストを一定以下に保つため、安価な燃料を長期的・安定的に調達することやリスク管理が必須ですが、日立にはそのノウハウがありませんでした。

売電先との契約も、調べてみると首をかしげざるをえない内容でした。電力価格がほぼ一定となっているのです。燃料費など材料費が変動した場合には、そのぶんすべてを電力価格に反映させるという仕組みが不十分だったのです。

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