JR西の新観光列車「はなあかり」完成までの舞台裏 車内のサービスは日本旅行のツアコンが担当
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 7時0分
スーペリアグリーン車の個室には工芸品アートを展示することにした。現在は越前や丹後の工芸品アートが飾られているが、「将来、別のエリアを走るときは沿線に合わせた展示を目指したい」(緒方氏)。
その意味で、車両の外観や内装に描かれている花や草木も特定の地域を象徴する植物ではない。「その辺の野原や畦道などどこにでもある花をモチーフとしてアレンジした。具体的なイメージはない」と川西氏は話している。また、家具、座席、テーブルなどの素材には福井産のヒノキや鳥取産の杉、調度品などには出雲たたら製鉄の一輪挿しなど西日本エリア各地の素材が使われており、「西日本の“とっておき”にあかりを灯す」というコンセプトを体現している。
客室内のカラーリングについては、川西デザインのウエストエクスプレス銀河では明るい基調の色が多用されたが、今回は落ち着いた配色だ。「ほかの観光列車には使われていない色で攻める」「長期間にわたって使う中で美観を保てる色にする」などさまざまな意見を集約して今回の色に決まったという。
こうした車両開発のコンセプトが決まり、いよいよ施工となるわけだが、施工時に苦労した点はなかったのだろうか。施工はJR西日本グループで車両の改造工事などを行う後藤工業が担当しているが、同社車両部計画課の長谷川慎司氏は「とくに苦労はありませんでした」とあっさりと答えた。
本当だろうか。他社の観光列車では施工に苦労したという話をよく聞く。JR西日本でもウエストエクスプレス銀河のときは施工時に車両限界が超過し、その修正に時間を要するなど無駄な工程が多く発生したという。
そこで、設計から施工への流れをあらためて聞いてみると、「現場の声を設計図面に反映させる取り組みを積極的に進めた」とJR西日本グループで車両の設計・製造・保守などを担当するJR西日本テクノス車両事業部技術部車両設計室の関岡樹氏が述べた。
通常なら、設計者が作った図面どおりに施工しようとしてもうまくいかない場合があるが、今回は事前に段階を踏んで施工担当者に図面を見てもらい、「こうしたほうがいい」「この構造は難しい」といった施工担当者から見た課題の洗い出しを行い、事前に図面に反映させた。また、実物大のモックアップも作成して、構造やスペースの検証も行った。確かにそれなら、施工で戸惑うことはない。過去の反省を生かし、設計段階で施工担当者とのコミュニケーションを密に取った結果、トラブルなく完成に至ったというわけだ。
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