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地球は自然に寒冷化するってホント? 忘れてはならない「気候変動問題の本質」とは

ウェザーニュース / 2024年3月5日 10時25分

ウェザーニュース

2023年の世界平均気温は観測史上最高を記録するなど、地球温暖化がだんだん身近に感じられるようになってきました。

一方、この地球温暖化については、「地球の長い歴史を振り返れば今よりももっと温暖な気候だった時代がある」「地球は温暖化と寒冷化を繰り返している。そのうちに寒冷化する」と考える人もいます。

確かにそれは地球科学的見地から考えると事実なのですが、私たち人類が現在直面している地球温暖化問題は、「私たちの未来」という視点で捉える必要があります。

今回は現在の温暖化問題の本質についてウェザーニュースLiVE「地球天気予報」の解説を務める、ウェザーニュース予報センターの森田清輝(以下、モリタ)と一緒に考えてみました。

地球は温暖化・寒冷化を繰り返している

地球は誕生以来、46億年の歴史を刻んできました。海の中に単細胞生物が活動し始めたのが35〜40億年前、やがて生物は陸に上がり2億3000年ほど前に哺乳類が誕生しました。地球を支配した恐竜が絶滅したのが約6500万年前、そして現生人類のホモ・サピエンスが誕生したのはわずか20万年前といわれています(いずれも年代には諸説ある)。

「『温暖な気候だった時代がある』『温暖化と寒冷化を繰り返している』という指摘は、こうした地球の長い歴史の中では、その通りです。恐竜が絶滅した6500万年前は現在よりもかなり温暖だったこともわかっています。

以降、温暖化と寒冷化を繰り返しながら寒冷化が進んできました。人類誕生前の数百万年を振り返っても、温暖化と寒冷化を繰り返し、それは現在も続いています」(モリタ)

温暖化・寒冷化の周期は4〜10万年!

ということは、現在問題となっている地球温暖化が進んでも、やがて寒冷化していくということでしょうか。

「地球は過去100万年ほどの間に、寒い『氷期(ひょうき)』と暖かい『間氷期(かんぴょうき)』のサイクルを約10万年単位で繰り返していて、現在の地球は間氷期にあたります。こうした寒冷化と温暖化の主な駆動要因は、地球の自転軸や惑星軌道の変化によるものです。

つまり、地球が温暖化しても次第に寒冷化するというサイクルがあるのは事実ですが、次に地球が寒冷化する氷期に入るのは、5万年後と予測されており、途方もなく長い期間を要します」(モリタ)

過去200年、平均気温は30倍のスピードで急上昇

「私たちの未来」を守るためには、温室効果ガスの増大による気候変動の進行を食い止めなくてはなりません。

「この気候変動は、太陽系の自然現象ではなく、人類活動により引き起こされた温暖化です。

次のグラフでは最寒冷期から現在までの平均気温の変化の様子を示しています。最寒冷期は7万年ほど前に始まり、2万年ほど前に最盛期を迎えて、1万2000年ほど前に終わったと考えられています」(モリタ)

「このグラフによると、最寒冷期から温暖な時代になるまでの1万2000年ほどの間に、最大8℃程度の気温が上昇しました。その後は1万年近くも平均気温があまり変わらない時代が続きます。

ところが約200年前、18世紀後半から20世紀初頭の産業革命以後、平均気温は急上昇しています。上昇スピードは加速度を増すように上がっています。

以前の自然変動では、1万2000年ほどかけて8℃程度の気温が上昇しました。つまり、1500年に1℃のペースです。

一方、産業革命後は、わずか200年で4℃上昇するというシナリオがあります。これは50年に1℃のペースです。

つまり、同じ1℃の変化でも、自然変動では1500年かかっていたのに対し、いま我々が直面している気候変動問題では50年しかかかっていないのです」

人間と自然は急激な温暖化に対応できるのか?

単純計算すれば、30倍の速さで平均気温が上昇したことになりますね。

「温暖化の問題点の本質は、【人類がこれまで経験したことのないスピードで温暖化】していることにあります。未知数の急激な温暖化に直面している現実そのものが問題なのです。

こうした急激な変化に人間や多様な生物が対応できるかが問題です。変化に合わせていくのは大変なことで、グリーンランドや南極大陸などの氷の融解、さらには熱波や干ばつ、森林火災など、自然界も大きな打撃を受けています」(モリタ)

ますます重要になる「適応策」と「緩和策」

今後の平均気温上昇は温室効果ガス排出量のシナリオによって変わりますので、温室効果ガスの排出をいかに抑えるかが重要です。

「温室効果ガス排出の抑制だけでなく、気候変動対策の2つのアプローチである『緩和策』と『適応策』がますます重要になってきます。

温室効果ガス排出の抑制によって『緩和』が進んでも、効果的な『適応』策を打ち出して、それを実践していかなければ、この急激な変化についていけません。

つまり環境変化に『適応』しながら、カーボンニュートラルを推し進める、車の両輪のような動きが必要になるのです」(モリタ)

加速度を増す地球温暖化は、人間の力によって軌道修正していくことができるはずです。生活の中の日常的な「緩和」と「適応」を実践していくことが、私たちの未来を守ることにつながります。

気候変動の急速な進行を食い止めるために、私たちも身の回りのできることから取り組み、一緒に地球の未来について考えていきませんか?



▶ 森田 清輝(もりた きよてる)

ウェザーニュース予報センター所属のベテラン気象予報士。現在は、24時間生放送の気象情報番組ウェザーニュースLiVEで「地球天気予報」コーナーの解説を務める。


参考資料
海部陽介 (2005) 現代人の起源:研究の現状と将来の展望. Anthropological Science (Japanese Series), 113: 5-16./JAMSTEC「海と地球を学んじゃうコラム」/IPCC第6次評価報告書(AR6)

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