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休日・夜間の患者と医師をマッチング 『コールドクター』の“現代版往診”ビジネス

財界オンライン / 2021年9月15日 18時0分

深夜に急変したときに夜間救急の病院を探すだけでも大変──。そんなニーズに応えるサービスを展開している企業がある。自宅での診察が受けられる夜間・休日の往診サービスを展開する「コールドクター」だ。社長の中原毅氏は「限られた医療資源の有効活用」を訴える。患者と医師をマッチングする同社の”現代版往診”の仕組みとは?

非常勤の医師をシフト制で雇用

 コロナ感染第5波が迫り来る中、夜間・休日に医師が患者宅に往診に来るサービスに注目が集まっている。「コールドクター」だ。社長の中原毅氏は「自宅療養で外出できない患者からの依頼が増えている。要望に応じてPCR検査や酸素投与も行っている」と話す。

 2018年設立のコールドクターは「休日や夜間に診察を求める患者と診察する時間がある医師をマッチングする。診察以外の業務を当社が代行することで、医師は本業である診療に集中することができる」(同)。同社のサービスを利用した保育園児を持つ母親は「子どもがよく腹痛を起こしたり、発熱したりする。夜中に突然、発症して救急医療の病院を探すのも大変。もしものときに助かる」と話す。

 同社は最短30分で医師を患者の自宅に呼ぶことができるプラットフォームを運営する。夜間・休日といった医療機関の診療時間外でも、患者が自宅に医師を呼ぶことができる仕組みだ。診察の予約は患者やその家族が電話またはWEBで行い、診察する時間がある医師と診察を望む患者をマッチングさせる。

 医師は提携する8つの医療機関からの紹介などが中心。他には大学病院や市中病院などで働く勤務医や開業医もいる。「登録している非常勤の医師をシフト制で雇用することによって、限られた医師のリソースを有効活用している」と中原氏は語る。

 寝たきりの在宅医療の患者や通院できない患者の要請を受けて医師がその都度、診療を行う「往診」。昭和期は近所のかかりつけ医が患者宅を訪問する光景が見られたが、今では患者が自らの足で病院に行くことが当たり前。その点、コールドクターは”現代版の往診”とも言える。

 さらに医療を巡る課題の1つに年々増加している救急車の出勤回数がある。救急車が出勤しても、患者がそれほど重症ではないというケースが半数程度を占めると言われているが、コールドクターを利用することで救急車を呼ぶこと自体がなくなる。


中原毅・コールドクター社長

 冒頭のような子育て世代をはじめ、通院が困難な高齢者や忙しいワーカー層など、自ら病院に行けない患者の受け皿としてコールドクターが活躍しているのだ。これは足元のコロナ禍でも当てはまる。中原氏によれば「自宅療養で外出できない患者からの依頼が増えている。要望に応じてPCR検査や酸素投与も行っている」

 コールドクターでは1日平均100件以上の申込みがあり、登録している医師は400人を超える。診察エリアも川崎市からはじまり、東京23区、神奈川県、埼玉県、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県、佐賀県など順次拡大中。「主要都市から広げ、日本全国どこでもサービスが受けられるようにしたい」と同氏。

 コールドクターの意外な使われ方としては「遠方にいる祖父母を心配した孫から往診の依頼が来ることもある」(同)という。診察料も健康保険や15歳以下の子どもは診察料が無料となる医療助成制度が適用されるため、法外な費用を求めることはない。

 また、医師の往診を待つ患者やその家族にとっては、いつ医師が到着するかが重要になる。そこでコールドクターには往診に来る医師がどこにいるのか、リアルタイムで分かる機能も搭載しており、医師が自宅に来るまでの所要時間を把握できる。

 そして最も大きなメリットが前述したように、その場で薬をもらえることだ。医師は50種類以上の薬を用意した上で患者宅を往診する。医師によっては「鞄を3つ持ち運んでいるケースもある」(同)ほどだ。もちろん、重度の患者もいるが、そのときは医師が紹介状を書いたり、患者に代わって救急車を呼ぶ。

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「医師のウーバー版ができないか」

 一方で医師にとってのメリットとは何か──。中原氏は「隙間時間に働いてもらえること」を挙げる。そのため、診療以外の業務はコールドクター側が担う。患者からの問い合わせには、同社に所属するコールセンターのスタッフが対応する。

 しかし、患者宅まで医師自ら車を運転するわけではない。車を運転するのは各医療機関所属の専属ドライバー。そのため、医師は自分がいる医療機関や自宅で待機し、各医療機関が手配した車に乗って患者宅に向かうだけとなる。このドライバーも「タクシードライバーの経験者が応募してくる」(同)。他にはカルテの入力なども同社が代行している。

 コールドクターに登録している医師は30代~40代が多い。「少しでも人命を救いたい医師や往診を重ねて診療経験を磨きたい医師、収入を増やしたい医師などが多い」と同氏は語る。研修を終えたばかりの医師などは収入の面で厳しい環境に置かれているのも事実。医師の副収入源にもなっているのだ。

 そんな同社を起業した中原氏はサイバーエージェントの出身。同社で「マッチングアプリのチームでマーケティングなどに携わっていた」(同)。そんな中、医師になった高校時代の同級生を通じて、救急医療の現場が過度な救急車の利用によって医療従事者の負担の大きさを知る。

 加えて需要があることも実感し、「医師のウーバー版のようなものができないか」と起業した。コールドクターのアプリが患者や医師などにとって使いやすくなっているのはサイバーエージェントでの経験が生きている。

 今後は時間外の医療をベースとしたプラットフォームを構築していく考え。また、オンライン診療を既に行っているが、それに合わせたドローンでの薬の輸送も視野に入れる。IT企業の新たな知恵で医療現場の負担を軽減させる取り組みとなるか医療関係者からの視線は熱い。

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