信頼の国産車 自動車メーカーの責任とは
財経新聞 / 2024年3月21日 16時19分
自動車メーカーの責任は、「安全・安心」の実現だ。
産業技術レベルが低い故、部品点数が少なくて済み、部品供給できるだけの技術レベルの高い企業群の裾野が広くない自国に適しているからと、国民の一般的な生活にすら支障が出る様な「電力事情」の国が、内燃機関を回避して無理やり推進したのがEV車だ。
●新興EVメーカーに欠けているもの
問題は、世界的に見て、新規に「EV車分野への進出」を狙う企業には「自動車造り」に対する正しい認識と経験に欠けている事だ。筆者は経済統計学を専攻したが、新興のEVメーカーに共通していると感じられるのは、自分たちが生産している「乗り物」は、「安全面」に確たる技術を持たず、発火事故は「統計上の”確率”の問題」程度の認識の企業が殆どである、という事だ。
ここで少し横道に逸れる。
例えば、「10万回の開閉テストに合格した」ドアヒンジの品質管理上の理想は、「10万回達成までには絶対に壊れない」事は必須だが、これが15万回も壊れないのは逆に問題で、「10万回クリア後、僅かな回数で壊れる」のが理想だ。
●ゴルフクラブの例
未だウッドが「パーシモンヘッド」で「レザーグリップ」のクラブ、「タングステンカーバイトの金属スパイク」を取り付けたゴルフシューズの時代を最後にゴルフから遠ざかって永いが、当時のアイアンクラブは、大別すると「鍛造」ヘッドクラブと「鋳造」ヘッドクラブがあった。上級者向きは「スイートスポット(芯)が狭い鍛造」アイアン、初心者向きは「スイートスポットが広い鋳造」アイアンが適していた。
「鋳造」は、少しばかり芯(スイートスポット)を外しても、そこそこ前に飛んでくれる。しかし「鍛造」は、少しでも芯を外すと、極端に曲がった。
「真芯で球を捉える」事ができる上級者が双方のクラブを使うと、飛距離は「鍛造」の方が圧倒的に伸びるが、鋳造は距離が出なかった。
●工業製品の場合
正規分布(せいきぶんぷ、英: normal distribution)というと難しく感じるかも知れないが、富士山の様な、左右に広がったグラフが正規分布曲線だ。1000粒の大豆の重さを量ってグラフに表せば、平均グラム数の豆を中心に、それより重いものと軽いものが左右に分布し、数量的には平均値より差が少ないものが量は大きく、差が大きくなる程、量は減る。
これを図で表せば釣り鐘型のグラフとなる。
この重さの差が少ないほど「粒ぞろい」の品質が良い品で、ばらつきが大きいほど下級品となる。
工業製品の品質管理では、極力ばらつきを少なくして、規定数値との誤差を極力ゼロに近づける。
●「自動車メーカー」のあるべきスタンス
「統計上の”確率”の問題」として、事故率をゼロに近づける事を目標とする新興メーカーのスタンスに対して、長年の歴史を積み重ね、技術を蓄積した「日本の自動車メーカー」は、これをZD(ゼロ・ディフェクト 英: Zero Defects=無欠点)を目標として、日夜努力を重ねている。「人命を預かる”自動車”」を供給するメーカーの姿勢としては、欠点の発生頻度を少なくする「確率論」で、正規分布曲線のカーブを出来るだけ急峻なとんがったカーブを目標にする事は、本来あってはならない。
●飛行機嫌いの思考
例えば、「自動車」や「新幹線」で青森へ行く旅人は、「万一の事故」に遭っても「まず死ぬ事は無い」と考える。しかし、航空機会社には申し訳ないが、「飛行機」の場合は、万一事故に遭遇すれば「確実に死ぬ」と考える。
実際には「統計的」に見れば、飛行機の事故発生率が一番低いにも拘わらずだ。
これは、利用者にとっては「無事に着く」か「事故で死ぬ」かの五分五分の感覚から来るのだろう。
●日本メーカーの正しい認識
日本メーカーは「ZDを目標」にして自動車を開発している。これに対して、殆どの外国メーカーは、「事故発生率を極力下げる」事を目標に自動車を開発している。
これは、「万一事故が発生したら、補償で対応すれば良い」といった認識から来るものと思われる。
この様な認識で、「人命を預かる”自動車”」を供給する事は、本来あってはならない。命が惜しいなら、安心の国産車を選択する事を強くお勧めしたい。
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