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歴史上、10数年だけ存在した幻の焼物 「臼杵焼」の制作の一端を体験する 【大分県の文化を身体で感じる旅】

CREA WEB / 2024年3月2日 9時0分


白を基調としたマットな素材感が現代的な印象の臼杵焼など、大分県にはさまざまな工芸品が今なお受け継がれている。

 源泉数、湧出量が日本一の温泉県として知られる大分県。県内のほぼすべてにあたる16市町村で温泉が湧き出るため、そこかしこで湯煙が立ち上る旅情にあふれた風景に出会うことができます。

 温泉も最高ですが、それ以外にも大分には魅力がたくさん。美食、民藝、歴史……温泉だけで帰るには勿体ないスポットが数多く存在しています。

 その中でも今回は、温泉と併せて行きたい体験型スポットに注目。大分の歴史や文化を身体で感じることのできる施設を紹介します。


焼き物の産地として注目の臼杵市


「ギャラリー皿山」では、臼杵焼の器の購入もできる。

 国宝の臼杵石仏で有名な臼杵市。実は近年、焼き物の産地としても注目を集めています。その名も臼杵焼き。洗練されたデザインや無地でマットな素材感が現代の暮らしにもぴったりな器です。聞けば、江戸時代後期に同市内の末広エリアで作られ、地元では末広焼と呼ばれていた焼き物がルーツになっているそう。

 末広焼きは、臼杵藩が九州各地の窯場から職人を呼び寄せ、藩営の窯場を開いて製造したものの長くは続かず、十数年という短期間で生産は終了。長らく途絶えた状態が続いていました。

美しい器を生み出すモダンなアトリエ


洗練された建物に期待が高まる「アトリエ皿山」。

 いわば幻の焼き物となっていた末広焼ですが、今からおよそ8年前に、大阪で陶芸を学んだ宇佐美裕之さんが帰郷し、知人の陶芸家とともに復興プロジェクトを立ち上げ、臼杵焼と名前を変え、地元で制作を始めました。

 こうした歴史をもつ臼杵焼の制作の一端を体験できるアトリエが「うすき皿山」です。

初心者でも気軽に作陶できる体験コースも


のし棒を転がして、素地を均一の厚さ、目指す形に整えます。

 宇佐美さんが運営するこのアトリエで体験できるのは「本格型打ち体験」、「選べる豆皿型打ち体験」、「臼杵焼金継ぎ体験」の3つ。中でも陶芸初心者にオススメなのが「選べる豆皿型打ち体験」です。

少しずつ形になっていく喜び


全体の形ができたら、周囲を削ぎ落とします。

 型打ちとは簡単に言えば、生乾きの生素地(粘土)をのし棒を使って平らにして型にのせ、上から手で叩いたりヘラで整えたりして型と同じ形に成形する作業です。最後に周囲の余計な部分を削り落としたら完成です。

 豆皿の型は10種類以上の中から好きなものを1つ選ぶことができます。

初心者でも綺麗な仕上がりに


右上が型で、左下が成形後の素地。初心者でも綺麗に作ることができます。

 成形した素地をアトリエに預けると、後日、窯で焼かれて豆皿が完成。1ヶ月ほどで自宅に郵送されます。「選べる豆皿型打ち体験」は陶芸体験を楽しみながら自作の豆皿も手に入る一挙両得な体験なのです。

ギャラリーやカフェも併設


キッチンでくつろぐかのような雰囲気が心地よい「皿山喫茶室」。

 またアトリエの隣には臼杵焼の器を手にとり購入もできる「ギャラリー皿山」や、中国茶や季節のお菓子を臼杵焼の器で味わえる「皿山喫茶室」、焼き菓子などが並ぶ「菓子工房 うさ味の縁側」もあります。体験の余韻に浸りながら、こちらでゆっくり過ごすのもありですね。

アトリエ皿山

所在地 大分県臼杵市深田816-3
電話番号 0972-65-3113
営業時間 10:00〜16:00
定休日 月・火曜
※ギャラリー皿山は11:30〜16:00、皿山喫茶室、菓子工房 うさ味の縁側は11:30〜16:00(15:30 L.O.)
https://usukiyaki.com/pages/うすき皿山

6軒の農家が守り継ぐ国東半島の七島藺


ものづくりの空気が漂う「七島藺工房 ななつむぎ」の工房。

 七島藺(しちとうい)と呼ばれる植物をご存じですか? 琉球畳の材料となるカヤツリグサ科の植物で、現在、この七島藺が国内で栽培されているのは大分県北東部にある国東半島のみ。しかも生産農家はたった6軒で、そのうち畳まで作っているのは5軒だけになります。

 2013年5月には構成する要素に七島藺を含む、大分県国東半島宇佐地域の農林水産業システムが国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産の認定を受けています。

 さらに2016年12月には、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価などの特性を備えた産品の名称を、地域の知的財産として保護する地理的表示保護制度(GI)に「くにさき七島藺表」として登録されました。

畳表に使われなかった部分で工芸品を制作


工房内には七島藺でつくられたさまざまなものが飾られています。

 そんな希少で価値の高い植物である七島藺の中で、畳表として使われなかった部分を利用して円座やラグ、アクセサリーやバッグなどの工芸品を制作しているのが「七島藺工房 ななつむぎ」を主宰する七島藺作家、岩切千佳さんです。

 ちなみに岩切さんは、2023年から七島藺の栽培も始めています。

強度と艶やかな質感が七島藺の魅力


畳表を織る織機について説明する岩切さん。

 七島藺の特徴は表面の皮が固くてツルツルしていること。同じく畳に使われるい草よりも強度があるため、1964年に開催された東京オリンピックの柔道では七島藺で作られた畳が使用されています。

 また、使うほどに艶が出て青々とした緑色からあめ色に変化。味わい深い雰囲気になってくることも特徴です。

三つ編みの要領で編み込んでミサンガづくりを体験


引っ張りながら七島藺を編んでいきます。

「七島藺工房 ななつむぎ」では、そのような七島藺の風合いを活かした工芸品づくりを体験をすることができます。

 例えば、手軽にできるのが、ミサンガづくり。紐状にした七島藺の片側を台のフックにひっかけた状態で、全体を三つ編みにしていきます。

 隙間ができないように力を入れながらギュギュッと編み込んでいくと……。

大人カジュアルにも合うミサンガが完成


独特の色味がいい感じ。大人のカジュアルファッションにも合わせやすいミサンガです。

 5分ほどでミサンガのできあがり! あらためて眺めてみると、七島藺の魅力がよくわかります。艶やかな質感にはラグジュアリーな雰囲気すら漂うのです。

 七島藺を使ってもっといろいろなものをつくってみたくなりました。

七島藺でさまざまな作品づくりに挑戦を


七島藺でつくられた作品が工房のそこかしこに。

「七島藺工房 ななつむぎ」では、ほかにも草履やコースターなどをつくることができるので、ぜひ挑戦してみてください。

 制作する過程で七島藺に直接触れること自体が、地域をより深く知る貴重な経験になるはずです。

七島藺工房ななつむぎ

所在地 大分県国東市安岐町明治522
Instagram https://www.instagram.com/shichitoui_nanatsumugi/
ワークショップの詳細はこちらのサイトをご覧ください。
https://www.millennium-roman.jp/jikuhaku/plans/detail/df106418-7f24-4eed-8cb2-76ce4625ea8d

文・撮影=石川博也

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