B型肝炎ウイルスが感染受容体に結合するしくみを解明
Digital PR Platform / 2024年1月17日 19時0分
発表のポイント
◆B型肝炎ウイルスは肝細胞膜に存在する胆汁酸輸送体NTCPを受容体として利用し、肝細胞に感染する
ことが知られています。本研究では、B型肝炎ウイルスのエンベロープタンパク質LHBsとNTCPの複合
体のクライオ電子顕微鏡構造を解明しました。
◆構造解析、ウイルス感染試験、胆汁酸輸送試験により、LHBsのN末端preS1ドメインがNTCPの胆汁酸
輸送経路を形成する膜貫通トンネルを塞ぐように複雑に折りたたまれて結合することを明らかにし、こ
の結合がウイルス感染に重要であることを見出しました。
◆NTCPを介したB型肝炎ウイルスの感染機構解明およびB型肝炎に対する新規治療薬の合理的設計に役立
つと期待されます。
[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/81746/350_215_2024011511515665a49dccd26e2.png
B型肝炎ウイルスが感染受容体NTCPを介して肝細胞に吸着するしくみ
概要
東京大学大学院薬学系研究科の浅見仁太 大学院生(研究当時)、清水敏之 教授、大戸梅治 准教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の朴在鉉(パクジェヒョン)研究員、石本直偉士 大学院生、朴三用(パクサンヨン)教授、京都大学大学院医学研究科の野村弥生 研究員、岩田想 教授、野村紀通 准教授、国立感染症研究所治療薬・ワクチン開発研究センターの小林ちさ 研究生(東京理科大学大学院創域理工学研究科 大学院生)、渡士幸一 治療薬開発総括研究官らの共同研究チームは、B型肝炎ウイルス感染初期にウイルスタンパク質が、肝細胞表面に存在する感染受容体である膜タンパク質NTCPに結合する様子をクライオ電子顕微鏡分析により可視化しました。
本研究成果は2024年1月17日付(英国時間:17日午前10時、日本時間:17日19時)で
Nature Structural & Molecular Biology ウェブサイトに掲載されました。
発表内容
B型肝炎ウイルス(HBV)の感染は、世界の約2.9億人を苦しめる主要な公衆衛生問題です。慢性B型肝炎(注1)は肝硬変や肝細胞がんを引き起こし、年間約80万人が死亡しています。しかし、慢性B型肝炎を完治する効果的な治療法は未だ確立されていません。LHBsはHBVのウイルス表面に発現する膜タンパク質であり、そのN末端に存在するミリストイル化preS1ドメインが肝細胞の基底膜に発現し門脈血流から肝細胞への胆汁酸(注2)の取り込みを担う輸送体膜タンパク質Sodium-taurocholate co-transporting polypeptide(NTCP)と直接結合することで、HBVの肝細胞への吸着およびその後の感染が進行すると考えられています(図1)。PreS1が結合したNTCPの立体構造はこれまで解明されておらず、HBVによる肝細胞認識機構に関する構造学的知見は不十分でした。
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