B型肝炎ウイルスが感染受容体に結合するしくみを解明
Digital PR Platform / 2024年1月17日 19時0分
[画像7]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/81746/700_453_2024011513151865a4b1566d20d.png
図6:HBVによる宿主細胞認識モデル
HBVは外開き構造をとっているNTCPを標的とし、ミリストイル化preS1をトンネル領域と強固に結合させることで、ウイルス粒子を宿主細胞膜に近接させる。この際、エンベロープに挿入されているミリストイル基は宿主細胞膜へと転移し、preS1の結合を補強すると考えられる。
本研究の成果は、HBVが肝細胞を認識するステップの詳細な構造基盤を提供するものです。また、今回明らかになったNTCPとpreS1の相互作用様式は他のウイルスでは報告のない誘導適合モデルに従うことから、ウイルスと宿主の多様な相互作用様式の一端を明らかにするものです。今後は、細胞表面に吸着したHBVがどのような分子機構で細胞内に侵入するのかについて、詳細に明らかにすることが求められます。
現在用いられている治療法では、慢性B型肝炎の患者に持続感染しているHBVを身体から完全に排除することは難しく、新規メカニズムに基づく抗HBV薬の開発が求められます。NTCPへの結合はHBV感染成立に必須のステップであることから、このステップはHBV感染を抑制する上で魅力的な創薬標的だと考えられます。本研究でHBVのpreS1と感染受容体NTCPの詳細な相互作用が可視化されたことで、preS1結合阻害薬を立体構造に基づいて合理的に設計することが期待されます。
〇関連情報:
「プレスリリース①B型肝炎ウイルス感染受容体であるヒト膜タンパク質の構造を解明」(2022/5/18)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_90020.html
発表者・研究者等情報
東京大学大学院薬学系研究科
大戸 梅治 准教授
清水 敏之 教授
浅見 仁太 研究当時:博士課程
京都大学大学院医学研究科
野村 紀通 准教授
岩田 想 教授
野村 弥生 研究員
横浜市立大学大学院生命医科学研究科
朴 三用(パク サンヨン) 教授
朴 在鉉(パク ジェヒョン) 研究員
石本 直偉士 博士課程
国立感染症研究所治療薬・ワクチン開発研究センター
渡士 幸一 治療薬開発総括研究官
小林 ちさ 研究生(東京理科大学大学院創域理工学研究科 大学院生)
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