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がん細胞が進行方向を決める仕組みを解明--北里大学

Digital PR Platform / 2024年2月19日 14時5分

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北里大学理学部生物科学科の堤 弘次講師らの研究グループは、がん細胞が上皮成長因子(EGF)の方向に運動する新たな仕組みを明らかにしました。




 がん細胞は遺伝子が変異することによって運動能を獲得することで、細胞外基質の中を浸潤し、他の臓器に転移します。上皮成長因子受容体は様々ながんで活性化しており、これががん細胞の異常な増殖能や運動能の獲得に寄与していると考えられています。しかし、上皮成長因子受容体の下流で、運動が促進する仕組みはまだ未解明の点が多く残されています。今回、FilGAPと呼ばれるタンパク質が、EGFシグナル伝達経路の下流でリン酸化されることを世界で初めて明らかにしました。そして、このリン酸化を阻害するとがん細胞がEGFの方向に向かって運動できなくなることを発見しました(図1)。
 本研究成果は、2024年2月9日(金)に、米国電子科学雑誌「PNAS Nexus」にオンライン掲載されました。


■研究成果のポイント
①がん細胞が上皮成長因子(EGF)の方向に向かって運動する仕組みを明らかにしました。
②がん細胞がEGFを受容すると、その下流でRSKとGSK3というリン酸化酵素(キナーゼ)(※1)によってFilGAP(※2)がリン酸化されることを世界で初めて明らかにしました。
③このFilGAPのリン酸化は、がん細胞が移動する際に作る「仮足」と、移動する際の足場となるコラーゲン繊維との「接着」の制御に重要であることを明らかにしました。
④FilGAPのリン酸化による細胞の「仮足」と「接着」の制御は、がん細胞がコラーゲン繊維中をEGFの方向に向かって運動する際の「方向決定」と「移動速度」の制御に重要であることを明らかにしました。
⑤本研究の成果は新たながんの浸潤転移の制御に向けた治療戦略の開発へと繋がることが期待されます。

■背景
 細胞運動は個体形成、傷の修復、免疫応答から、がん細胞の浸潤・転移まで、生命の一生を通じて大切な細胞の仕組みです。細胞が特定の方向に向かって移動する仕組みの一つとして走化性が知られております。走化性は細胞が小さな化学物質を感知してその方向に向かって移動する現象で、細胞は「仮足」と呼ばれる細胞の足を、化学物質の方向に伸ばして移動します。走化性はアメーバや免疫細胞ではその仕組みがよく調べられていますが、がん細胞が走化性を示す仕組みはよく分かっていませんでした。

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