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日本映画「すべての夜を思いだす」海外セールスを担当したのは中国の会社だった 創立メンバーが語る“これまで”と“これから”【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年3月10日 6時0分

 2015年のベルリンでは、多くの中国の若手映画研究者と出会いました。ちょうどあの時は、中国のネット世界が、PCからスマホへ移行する時期でした。従来の大手ポータルサイトへの注目度が少しずつ下がっていたのに対し、個人ユーザーがSNSを使って、情報などを発表する“自媒体”が一気に増える時代だったんです。我々もその勢いに乗って、2015年の春に「Deep Focus」という“自媒体”を創り上げました。

──「Deep Focus」は、最初から注目されましたね。

 ある意味、「Deep Focus」は日本映画とも縁があるんです。2015年の映画界に、2人の凄まじい新鋭が活躍し始めました。それがビー・ガン監督と濱口竜介監督です。2人とも、ロカルノ国際映画祭で大活躍でしたよね。第37回ナント三大陸映画祭では、ビー・ガン監督の「凱里ブルース」が金の気球賞、濱口監督の「ハッピーアワー」が銀の気球賞をそれぞれ受賞しています。ナントでは、濱口監督のインタビューも実施しました。おそらく、中国大陸で初めての濱口監督へのインタビューになったと思います。また、同年「Deep Focus」として「凱里ブルース」のパリ上映も企画しました。その上映は大盛況で、いまだに当時の風景を時々思い出しています。その頃から、私とパートナーたちは“一緒に会社を作りたい”と考えるようになったんです。

──当時は、具体的にどのような事業にしたいのか等、最初から方向性は決まっていましたか?

 最初は何も決まっていませんでした。当時の「Deep Focus」の良さは、映画祭の最新情報、その年の素晴らしい作品を最速で紹介することでした。一部のファンに支えられて、媒体としての「Deep Focus」は順調に進んでいました。また、映画祭で知り合った中国の映画人も多かったので、中国映画界との人脈もどんどん広がっていました。ところが、あくまでも得意としていたのは“映画祭映画”というか“アート映画”が中心。あの時は、ちょうど中国映画市場が急速発展しているタイミングだったので、中国のメジャー映画界とは少し距離がありましたね。

 その時、私が考えたのは「いまの中国映画市場には何が足りないのか?」ということ。そこで“海外セールス”にたどり着きました。当時の中国映画市場では、そもそも海外セールスをやっている会社がほぼありませんでした。ジャ・ジャンクー監督などの巨匠たちは、最初からフランスの「MK2」などと契約し、海外展開もフランスの会社に任せています。では“小さな映画”が海外を目指したい時、どうすればいいのか――その時、ほとんどの若手監督が方法を知らなかったのです。そこで、我々は2017年から海外セールスの事業(=PARALLAX Films)を始めました。

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