結婚・子育て資金の贈与に関する非課税度とはどんな制度?
ファイナンシャルフィールド / 2019年1月18日 9時20分
2018年12月14日に、政府与党は2019年度の税制改正大綱を決定しました。焦点は、10月からの消費税10%導入に伴う「買い控え」への対応策でしょう。 その中には、子供や孫への教育や結婚・子育てのための資金贈与についての変更や、個人事業主の事業継承に伴う税負担を軽減する制度の増設などが盛り込まれています。 改めて資金贈与制度の概要をおさらいするとともに、変更点や新制度を確認していきますので、家族の資産の今後を話し合うきっかけにしていただければと思います。
教育資金の非課税制度とは?
教育資金の贈与には、非課税制度があります。「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」を定めた制度で、2013年度税制改正において創設されました。直系尊属には、祖父母、両親があてはまります。
そもそもこの制度が始まる前から、教育資金の贈与は非課税でした。
両親に進学費用を出してもらっていた方は少なくないと思います。その進学費用に税金はかかっていません。つまり、これまでも必要な教育費を、必要なときに、その都度子供や孫に渡すこと(贈与)に対して税金はかからなかったのです。
では、わざわざ非課税制度が創設されたのは、なぜか。そのポイントは「一括での贈与」という点です。制度は以下の通りです。
「直系尊属から教育資金の 一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」
<贈与対象> 30歳未満の子供や孫
<非課税額> 1人あたり最大1500万円
ただし、学校以外に支払われる費用(資格取得費・習い事等)は500万円まで
<対象期間> 2013年4月1日から2019年3月31日
結婚・子育て資金の贈与の非課税制度とは?
結婚や妊娠・出産・育児に関する費用についても、「結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置」が2015年の税制改正で創設されました。
結婚・子育て資金には、以下の費用も含まれます。
・結婚を機にかかる引っ越し費用
・妊娠に関する費用(不妊治療含む)
・出産後1年以内に支払われた産後ケアに要する費用(制限あり)
「結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置」
<贈与対象> 20歳以上50歳未満の子供や孫
<非課税額> 1人あたり最大1000万円
ただし、結婚に関して支払われる費用については300万円まで
<対象期間> 2015年4月1日から2019年3月31日
変更点-1(教育資金・結婚子育て資金共通)
今回の税制改正によって、教育資金・結婚子育て資金の非課税制度で共通して変更となるのは以下の2点です。
(1)2019年3月31日までの特例期間の2年間延長
(2)今まで所得制限のなかった受け取る側(子供ら)の合計所得金額が1000万円超の場合は対象外になる
なお、非課税額の上限には、両制度とも変更はありません。
変更点-2(教育資金のみ)
教育資金贈与の非課税制度については、さらに以下の点が変更されました。
(1)23歳以上の子供・孫への趣味・習い事代(資格取得等)などの費用は対象外とする
(2)30歳以上であっても学生などは対象とする
個人事業主の事業継承を促進するための納税猶予制度の新設
2017年度には中小企業の事業承継税制が改正され、10年間の特別措置が設けられました。そして今回の税制改正大綱で、「個人事業主対象」の事業承継税制が創設されることになりました。
現行制度では、個人事業主が事業に使う建物や土地、設備等を引き継ぐ場合は、控除を超える分については贈与税や相続税がかかります。新設される制度では、支払いの猶予が認められ、後継者が事業を続ける限りは支払わなくて済むようになります。
また、親族以外が後継者の場合でも制度の対象となります。この措置には後継者不足による廃業数の増加に歯止めをかけ、世代交代を円滑に推し進めるという狙いがあります。なお、この制度は10年間の時限措置となるようです。
まとめ
毎年のようにさまざまな税制度が改正されています。大事な資産を守り、有効に活用していくために、必要な情報をしっかり入手して、世代間で話し合う機会をつくっていくことが大きな一歩となります。
なかなかお金の話はしにくいものではありますが、法制度が変わるタイミングを良い機会ととらえてみてください。
参照
中小企業庁「事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)について」
執筆者:山本美紀(やまもと みき)
CFP(R)認定者
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