[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:土のグラウンドから生まれる112人の一体感(都立東大和南高)
ゲキサカ / 2016年6月9日 8時42分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
「ああ、そうか」と妙に合点がいった。謙虚な言葉ばかりを口にしていたキャプテンの岸本真輝が自然とこう話す。「伝統的に言ったら『凄いことをやったな』という感じですけど、試合内容からしたら自分たちが通用していた部分もあったので、いわゆる“ジャイアントキリング”という感じではないと思います」。選手たちもそう感じていたのだ。普通に考えれば、無名の都立校が強豪の私立を倒すという事実から“ジャイアントキリング”というキーワードを想像しがちだが、おそらくこの試合を現場で見ていた方の中にも、そのフレーズを思い浮かべた方は決して多くないのではないか。内容の良かったチームが、結果でも上回って勝利をする。この日の都立東大和南高の勝利は、内容に結果の伴ったごくごく当然のそれだったのは間違いない。
2年連続で選手権予選のファイナリストとなった堀越高と、一昨年の新人戦から昨年の新人戦まで4大会続けて1次予選や地区予選で敗退している都立東大和南が激突した高校総体の東京二次トーナメント1回戦。「堀越さんの方がボールを持って、主導権を取るという展開を予想していました」という都立東大和南を率いる大原康裕監督の言葉を待たずとも、大半の観戦者が考えていたであろう構図は、開始10分も経たずに早くも覆される。平塚真史が、田中大地が、そして住谷大輝が次々と決定的なシュートを放ち、堀越ゴールを脅かす。最終ラインではCBの岸本と飯島彪貴にGKの山本浩也も加えた3人が丁寧にビルドアップを試み、正確なフィードとスムーズなパスワークを併用して、次々とチャンスを生み出していく。
「堀越は強豪校だったので『やってやるぞ』という感じで、体もみんなキレキレでした。ボールも凄く入りましたし、好きなようにできたので楽しかったです」という住谷の言葉はおそらくチームの共通認識。スコアレスではあったが、都立東大和南のイレブンが前半の40分で「やれる」という手応えを掴んだであろうことは想像に難くない。後半に入ってもその勢いは止まらず、6分に住谷のファインゴールで先制点をもぎ取ると、27分には投入されたばかりの柿崎拓真がファーストタッチで追加点を叩き込む。堀越も意地を見せ、最終盤の40+3分に1点を返したものの、このゴールと同時に試合終了のホイッスルがピッチに鳴り響いた。堀越の佐藤実監督も「チャンスの数や支配率も彼らの方がほぼほぼ上回っていましたし、もうちょっとスコアが開いてもおかしくないような内容だったと思います」と認める完勝劇。この日のメンバーや応援団に、マネージャーを加えた部員全員が飛び跳ねる試合後のパフォーマンスで勝利を共有した都立東大和南サッカー部の高校総体は、少なくともあと1週間の“延期”を余儀なくされることとなった。
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