『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:遥かなる頂へと(松本山雅FC U-18)
ゲキサカ / 2019年8月15日 16時5分
最終的に選手たちの話し合いで結論は出なかった。「結局わからなかったみたいね。まあ、今日は松本に帰らないから、またホテルで映像を見せようかなと(笑)」と話した指揮官は、一転して表情を引き締める。「選手にしてみれば苦しい部分にちゃんと目を向けてやっていかないと、結局サッカーって良い時ばかりじゃないから。そういうことを僕は大事にしたいですけどね」。そこにはチームとして、個々のサッカー選手として、そして人間としての成長を促したいという西ヶ谷の意図が透けて見える。
実はこの大会に臨むに当たり、彼らはある選手を欠いていた。入道雲が泳ぐ群馬の青空の下、ベンチに設置されたテントの片隅で、風に揺られながらチームメイトを見つめていた22番のユニフォームの持ち主。キャプテンの山崎快は負傷のために登録メンバーから外れていた。「いつもこういう大事な試合の時にいないキャプテンなんです」と笑顔で明かした中村の言葉を、樋口が引き取る。「リーグ戦でケガしちゃって。でも、去年のプリンス参入戦前もケガしていましたし、今回も全国を決めるアルビとの試合でも、後半10分くらいで退場して。逆にその時は『アイツの分までやろう』って盛り上がって、良い試合ができたんですけど、まあ『いろよ』って感じですよね(笑)」
この大会は応援に徹していたキャプテンだが、チームメイトの信頼は厚い。「メッチャチームを鼓舞してくれるキャプテンなので、彼の分まで戦う気持ちは持っていました」(中村)「結構ムードメーカー的な感じで引っ張ってくれるヤツですね」(樋口)。山崎と一緒に戦おうという選手たちの気持ちが凝縮されていた、風に揺れるユニフォーム。ただ、やはりその緑と白の横縞はピッチに立っていてこそ輝きを放つ。全国の舞台で悔しさを味わった緑の友を、タッチラインの外から鼓舞することしかできなかったキャプテンが、彼らに残されたこれからの時間で果たせる役割はきっと少なくないだろう。
小学生時代から山雅で育った関島は、アカデミー全体を取り巻く環境の変化を教えてくれた。「Jリーグの下部組織になってからは注目度も違いますし、ファンの方からの見られ方が全然違いますね。あとは、ジュニアの時もジュニアユースの時も土のグラウンドでやっていたんですけど、かりがねの練習場もできて、設備も良くなって、そういう部分も変わってきていると思います」。最近気を付けているというエピソードが微笑ましい。「ホームゲームを山雅の格好で見に行った時は、やっぱりゴミの処理とかもしっかりしなきゃと思いますし(笑)、あとは練習会場に行く時とか移動の時に、やっぱり交通ルールをしっかり守らないといけないなって思います(笑)」。周囲からの視線も、彼らの人間的な成長を促しているようだ。
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