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たとえ本人のためでもお金を引き出せない…「認知症」で銀行口座が凍結されたときの対処法【司法書士が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月20日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症になり本人の判断能力が著しく低下すると、銀行口座が凍結されてしまう場合があります。口座が凍結されると、たとえ本人のためだとしても出金できないため、生活費や施設費などに必要なお金の工面に苦労するケースも。本記事では『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)から一部抜粋し、認知症による「口座凍結」への対策について解説します。

自分のお金でも、認知症になると銀行から引き出せない

現在、問題となっているのが、認知症を理由に本人名義の銀行口座が凍結されてしまい、いざという時に自分のお金が下ろせなくなることです。

本人の財産を保護することを目的に、役所、金融機関、保険会社など各機関で本人確認が強く求められるようになっています。家族、親族、知人ではなく、必ず本人その人の確認ができなければ取引が難しい社会なのです。

そのため金融機関では、本人が認知症で意思確認が難しいとわかった段階で、口座凍結という対応を取ることがあります。金融機関サイドとしては、本人の意思に反して出金等がなされることがないようリスクヘッジするのです。

口座が凍結されてしまえば、これまでのように親族などが本人の代わりに財産を管理することができなくなります。本人ための出金であったとしてもです。

よくあるのが、施設に入るためにまとまったお金が必要となったため、本人以外の人が定期を解約しようとする時です。金額が大きくなれば出金理由も聞かれますし、理由が正当だとしても、本人でなければ解約することは至難の業(わざ)といえます。本人が認知症と判明し、逆に口座が凍結されてしまうこともあります。

確かに、全国銀行協会の指針により、医療費など本人の利益となることが明らかな使途については親族が代わりに引き出せるとの考えが示されています。とはいえ、使途の確認や親族であることの証明が必要であり、話はそう簡単ではなさそうです。

対策としては、銀行によっては指定代理人を設定できるところもあるので、これを利用することです。デメリットとしては、指定を認めている金融機関が少ないことでしょう。

もう1つは、本人を直接銀行の窓口に連れて行くことです。ある程度、本人の判断能力があり、受け答えができれば対応してもらえるはずです。しかしながら、これも〝言うは易く行うは難し〟で、そう簡単な話ではありません。

認知症高齢者を連れていくには、介護に慣れた方の付き添いがいりますし、病院やデイサービスなどの合間を見て連れて行くのは、関係者にとっては大変な労力となることがあります。そして、いざ確認してもらう時に、うまく意思表示できなかったり、署名が難しかったりすると、徒労に終わることもあり得ます。

口座凍結に強い効力を発揮する「成年後見制度」とは

そこで登場するのが、「後見人制度」です。正式には成年後見制度と呼ばれていますが、ここではわかりやすく後見人制度とします。

口座凍結に、有無を言わさず効力を発揮するのが後見人制度です。後見人であれば、本人を銀行に連れて行かなくても口座凍結の解除をすることができます。他にも、心当たりの銀行に本人名義の口座がないか照会をかけることもできます。もちろん、新規に本人の口座を開設することも可能です。

後見人制度は口座凍結に関しては、無敵の制度なのです。筆者もこれまで後見人を利用することで、口座凍結を解除したことが多々あります。

一例を挙げれば、倒れた兄弟の生活費を立て替えている方から相談を受け、後見人制度を利用しました。筆者が後見人に就任し、本人口座から出金できるようになり、これまでの立替金や入院費を支払うことができました。後見人制度を使用する前、その方は何度も金融機関に直談判したのですが、本人の入院費すら出金できませんでした。

他にも、請求書がたまりにたまっていたおひとりさまの後見人となり、年金口座を探し出して無事に清算したこともあります。

このように後見人制度は銀行に対して、堂々と本人口座の使用を申し出ることができます。口座が凍結してしまった場合、利用を検討すべき制度となっています。

しかしながら、その後見人を決めるまでが、まずもって大変な作業となります。当然のことながら、本人が一筆、「後見人を誰だれにする」としたためたところで、後見人の権限が認められるわけではありません。法に則(のっと)った正式な手続きを踏み、後見人を選任しないといけないのです。

後見人は、認知症が進んだ方を保護・支援する法的な代理人です。本人の代わりに財産を管理し、生活の支援を行います。

後見人制度は、任意後見制度と法定後見制度とに分かれます。どちらも家庭裁判所を通す必要があります。口頭で申し立てることはできず、申立書や財産目録などを作成して、必要書類を集めた上で提出しなければなりません。本人の判断能力を確認するため、診断書も必要となります。

書類の提出を行うと家庭裁判所の審査が行われます。事案にもよりますが、1カ月~3カ月くらいで後見人が決まります。法定後見であれば、誰を後見人にするかは家庭裁判所の専権事項であり、結果が出るまでどんな人が後見人になるかはわかりません。通常は、司法書士、弁護士、社会福祉士といった専門職が選任されます。そして、選ばれた後見人が口座凍結などに対応していくことになります。

この後見人制度は介護保険法とともに2000年にスタートしました。しかし、実際のところ、すこぶる評判がよくありません。利用率も低調となっています。後見人制度のメリット・デメリットをきちんと調べたうえで、利用を検討すべきでしょう。

岡 信太郎

司法書士

※本記事は『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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