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会社が傾き「人材の草刈り場」に…泥船から抜け出したくても競合他社への「安易な転職」は避けたい理由【キャリアのプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月5日 8時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

「あの会社、ヤバいらしい」…こんな情報が流れると、そこにいる会社の人材に競合他社が目を付けるのはよくあることです。「即戦力で活躍できるだろう」とWin-Winの関係になりそうですが、実際には、慌てて移籍を決めることにはさまざまなリスクがあります。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、会社が傾いたときに取るべき行動・考え方について解説します。

会社が傾くと、競合他社から「人材の草刈り場」として目を付けられる

企業というのは順風満帆を謳歌する時もあれば四面楚歌に窮する時もあります。時流や市況の変化についていけなかったり、意表を突かれるような不祥事に見舞われたり、存続が危ぶまれるような事態になることもあります。これらは企業の規模にかかわりません。実際、そのような企業が競合他社から「人材の草刈り場」にされてしまうのをよく目撃します。

業界によっては発展中の仁義なき戦いで、人材の争奪戦が繰り広げられている場合もありますが、草刈り場の発生頻度がいちばん高いのは、問題を起こした会社が傾いてきた時ではないでしょうか。傾いた会社があったとして、それがマークされた場合によくあるのは、競合他社から「あの会社は泥船だから、人材に片端から声を掛けてくれ」とオーダーが入ることです。

何らかの問題が起きると、その渦中にある企業は社内に動揺がありますから、「泥船から我先に逃げ出そう」と、すぐに見切りをつける人もいます。その一方で、最後まで泥船のなかで努力するような忠誠心の高い人も存在するわけです。現場は非常に混沌とした状況になりますが、社員としては自分の人生や家族の将来を優先的に考えて、善後策を模索するのは当然です。「我先に」となるのも仕方のないことだと考えます。

泥船に乗っている従業員は、転職の準備やキャリアの棚卸しをはじめるわけですが、そうした準備が整っている人は少ないのが現実です。動揺して冷静さを失ったなかで、とっさの判断をしてしまいがちです。

安易な移籍の結果、思ったようなパフォーマンスにつながらないケースも

そうなると判断ミスも起きやすくなります。最も多いのは、「安易な移籍」をしてしまうことです。直近の経験や過去の職歴が、競合他社である程度スライドして生かせるため、誘う側も誘われる側も、イメージがつきやすいのかもしれません。

「今の会社でやりたいことをやりきった」というのであれば、移籍も気持ちよくできるでしょう。しかし突然の不祥事が原因の場合、緊急避難的に同業他社に脱出する例を非常に多く見てきました。なぜなら、企業側は業績向上や抱えている問題を手っ取り早く解決できる人材を求めているからです。

しかし、これは本来の移籍と意味合いが少々違います。移籍する側も、自分のキャリアが同業なら生かせるであろうという前提で行動してしまいます。こういった競合他社の引き抜きや移籍はドラマチックになり過ぎてしまい、双方が冷静さを失いやすくなります。つまり、同業他社は「引き抜くこと」が目的になり、移籍希望者は「脱出する」のが目的になりがちなのです。その結果、中長期的かつ冷静な判断でのマッチングがどこかに行ってしまう、ということが多いようです。

業界を騒がせるような不祥事の場合は、慌てるがあまり動きが加速します。しかし、しばらくすれば動揺していた業界も自浄作用で冷静さを取り戻すことでしょう。その時になると、即戦力になると思っていた人材が、企業文化や環境の違いのせいか前職同様のパフォーマンスが出せていないということがあります。特に日本企業には、根深く特徴的な人間関係などがありますから、行った先ですぐお荷物になってしまうことさえあります。これは、どちらが悪いということではありませんが、双方の不幸になっています。

単に「移籍することだけ」を目的にしないことが大切

競合他社に身を寄せるようなヘッドハンティングの動きが過熱していたとしても、1年後に状況が好転することはよくあります。ですから移籍することだけを目的にして行動するのは避けましょう。競合他社への移籍は、今の経験を活かして飛躍できるチャンスがある一方で、多くのリスクも内在していることを忘れないようにしてください。

なお、競合他社から人材を引き抜く行為や、該当する企業の管理職15~20%の人材に勧誘を目的として声を掛けるという行為で、裁判所から「営業妨害行為」の認定を受けた判例があります。これは法解釈から見るというよりは、業界や企業に自浄作用を求めるものだったかもしれません。たしかに、管理職の1割以上に声を掛けるというのは過剰な接触で、「引き抜きすぎ?」と考えるべきであろうと思います。

福留 拓人 東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長

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