老後の不安、どう解消する?アメリカの実験で分かった「歳をとること」に悲観的にならなくてよいワケ【心理学者が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月14日 11時15分
人間にとって、「よい歳のとり方」とはどのようなものでしょうか。病気がないことや記憶力が低下しないことが、「よい歳のとり方」ではないと、心理学者の内藤誼人氏はいいます。内藤氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、老後に向き合う考え方のヒントについて見ていきましょう。
ネガティブな感情は、歳とともに減る
「お年寄りは不満を口にする人が多い」というイメージを持っているのだとしたら、事実は違うということを知っておきましょう。
お年寄りというと、何にでも不満を感じて、ぶつぶつ文句ばかり言っているイメージがあるかもしれませんが、事実はまったく反対です。
私たちは歳とともに、どんどん落ち着いていくものです。
なかには、歳とともに愚痴や不満を吐き出すような人もいますが、それはあくまでごく一部の例外的な人です。大半のお年寄りは、とても穏やかで、落ち着いた人になるという年齢的な変化があることがわかっています。
米国スタンフォード大学のローラ・カーステンセンは、幅広い年齢層の184名にポケベルを渡し、1日に5回、ランダムなタイミングで音を鳴らしました。実験参加者は、音が鳴ったら、そのときの自分の感情の記録をつけるのです。「嬉しい」のか、「楽しい」のか、「悲しい」のか、といった具合に。
なお1日5回ランダムに音が鳴るといっても、さすがに深夜には鳴りません。午前9時から午後9時までのどこかのタイミングで5回です。また、感情の記録は1週間つけてもらいました。
そのデータを分析してみると、面白いことがわかりました。
一般的にネガティブな印象である、怒り、不満、悲しみ、嫌悪といった感情は、歳をとるほど「減る」傾向があったのです。カーステンセンによると、60歳くらいまではネガティブ感情がどんどん減っていき、そこで底をついて横ばいになるような曲線が描かれるといいます。
「お年寄りは、愚痴や不満が多い」どころか、歳を重ねるほど不満を感じにくくなります。不平不満を感じやすいのは、若い人のほうが多いのです。
「あの上司、いつかぶん殴ってやるからな」
「たいして高いものも買わないくせに、偉そうにする客だな」
「なんでこんなに電車が混んでるんだよ」
イライラしたり、不満を抱えて生活しているのは、高齢者よりも、歳が若い人ほど多く見られる傾向があります。お年寄りは、少々のことでは動じませんから、いちいち不満を感じたり、腹を立てたりもしないのです。
「どうして私はこんなにネガティブなんだろう?」と、心を痛めている中高年層もたくさんいると思うのですが、安心してください。そのうち、ネガティブな傾向は抑制されていきますから。
だれでも年齢的な心理変化をするのだということを知っておくと、「歳をとるのもそんなに悪くないな」と思えるのではないでしょうか。
人間は、どんどん変わるのです。
しかも、たいていの場合は、「ネガティブな人間からポジティブな人間へ」と好ましい変化が起きるのです。
年配者は悲観的ではない
「お年寄りほど悲観的だ」と思っているのだとしたら、それも誤りです。
実は、お年寄りは明るくて、楽観的。ネガティブ思考をするのは若者であって、年配者ではありません。「逆なのでは!?」と思うかもしれませんが、そうではないのです。
米国シカゴにあるデポール大学のジョセフ・マイケルスは、32名の年配者(平均73.33歳)のグループと、32名の若者(平均20.91歳)のグループにわけました。そして、2つのグループに対して、「友人の結婚式でスピーチを始めたところ、参列者がクスクスと笑いました」という文章を見せて、その後につづくストーリーを自由に考えてもらう調査を実施しました。
その内容について何人かの判定者が9点満点でネガティブな結果になっているかどうかの得点をつけたところ、次ページのグラフ(図表)のようになりました。
「さんざんなスピーチだったので、自殺したくなるほどだった」
「あまりにも恥ずかしくて、穴があったら入りたい」
「もう二度とスピーチなんてしないと決めた」
このように、ネガティブなストーリーを考えてしまうのは、お年寄りではなく、若者のほうが多い傾向が見られました。
実は私たちが考えるほど、「お年寄りは悲観的」ではないのかもしれません。だから、歳をとることも、それほど悲観的に心配したり不安がったりしなくてもいいのです。
内藤誼人
心理学者
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