1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

〈頻尿・尿もれ〉に悩む人、40歳以上の8人に1人といわれるが…「頻尿のさらなる助長」を招く、意外な要因【医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月23日 12時0分

写真

(画像はイメージです/PIXTA)

デリケートな問題のため、相談がはばかられる「頻尿」尿漏れ」の悩み。実は、悪化の要因は身体機能の衰えばかりでなく、メンタル部分も大きく関係しているのです。※本連載は、医師・常喜眞理氏の著書『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

40歳以上の8人に1人がトラブルを抱えています

加齢によって体はさまざまな影響を受けるのですが、そのひとつに排尿の問題があります。一番多いのが、いわゆるトイレが近くなる「頻尿」あるいは「尿もれ」ですね。

テレビでも関連グッズのCMをよく目にしますが、ある調査によれば40歳以上の8人に1人がこの問題を抱えているというデータもあります。

もちろん年代が上がるにつれて割合は高まり、80歳以上だと4割近い数値となります。

男女間でそれほど差はありません。

ただしデリケートな問題でもあるので、なかなか悩みを口にしづらい面があります。実際はもっと多くの方が悩んでいるのではないでしょうか?

歳をとれば、程度の差こそあれ誰にでも起こることですから、まずは正しくそのメカニズムを理解しておきましょう。

ちょっとお勉強~排尿のしくみ

では、排尿のしくみを簡単にご説明します。

腎臓でつくられた尿はいったん膀胱に溜められます。膀胱は薄い筋肉のようなもので伸縮性があり、約600ミリリットルの尿を溜める能力があります

この膀胱に半分ほど尿が溜まったあたりから、脳に信号が伝えられ、我慢するか排尿するかの判断を下すことになります。

「排尿する」となれば、脊髄(せきずい)をとおして指令が伝えられ、尿道を開き、膀胱がポンプのように収縮して尿を押し出すわけです。

排尿障害の原因のひとつは、老化による膀胱の筋力低下です。

伸縮性が失われて、尿をあまり溜められなくなり、頻繁に尿意を覚えるようになります。

また尿を押し出す力も弱まるので、排尿しても膀胱に尿が残ってしまい、すぐに尿意を覚えてしまいます。

あるいは、尿が尿道に残って漏れ出すことも起こります。

これに加えて、臓器の圧迫も排尿障害を助長します。

女性の場合、歳をとると子宮、膀胱、腸全体を吊っている膜や筋肉(骨盤底筋)が緩み、内臓の位置が下がってくる「下垂」が起こります。特に多産だった方は、子宮が何度も伸縮を繰り返したために、ことにそうなりやすい傾向があります。

この下垂した内臓は、骨盤の狭いところにはまり、子宮がただでさえおとろえている膀胱を圧迫して、頻繁に尿意を覚えることになるのです。

ただし、頻尿の原因はこれだけではありません。こうした臓器の老化に加えて、さらにメンタル部分も大きくかかわってくるのが、排尿障害の厄介なところなのです。

自信喪失が、さらに頻尿を助長する悪循環へ

脳が膀胱からの信号を受け取り、そこから脳が判断して膀胱に排尿の指令を出すのですから、メンタル面の影響は非常に大きなものがあります。

頻尿・尿もれを起こすようになると、排尿に対して自信がなくなります。

特に外出先では不安になり、「いまのうちに行っておかないと」と、ますます頻繁にトイレに行くことに………。ついにはまだ膀胱に余裕があっても、不安になっただけで尿意をもよおすようになります。なかには水の音を聞いただけで、尿意を感じる方もいます。

肉体的なおとろえから排尿機能が低下することで、メンタルもそれに引きずられるようにバランスを崩し、それがさらに排尿障害を加速するという悪循環に陥ってしまうわけです。

排尿障害は、こうした膀胱の筋力低下、内臓による圧迫、メンタルなどの要因が複雑に絡み合って起こるため、対処が難しい症状なのです。

ちなみに、頻尿の定義はなかなか難しいのですが、夜中に2回以上トイレに行き、生活に支障をきたすのが夜間頻尿。昼は8回以上が頻尿、あるいは排尿障害の目安となります。

では、次はこうした排尿障害に対する治療法についてお話ししたいと思います。

◆自分の“膀胱力”を信じること

 エコーによる検査と投薬治療 

病院でよく行われているのは、膀胱の収縮力の検査です。

トイレ直後、本人が尿を出しきったと思える状態で、エコー検査により膀胱のサイズを測ります。すると排尿直後にもかかわらず、膀胱が収縮しきれずに尿が残っているかどうかがわかります。この様子を見て投薬等の治療が行われるわけです。

 骨盤底筋体操 

女性の場合は内臓の下垂を改善する「骨盤底筋体操」というのがあります。肛門と膣を締めながら行う運動で、ネットで検索すると詳しいやり方が紹介されているはずです。

夜寝る前、または朝、布団の中で仰向けの姿勢のまま、お尻の穴を締めるように力を入れながら、軽くお尻を持ち上げます。数秒お尻を持ち上げたあと、楽にします。これを10回ほど繰り返しましょう。

朝はまだ体が硬いので、少し軽いストレッチをしたあとに取り組んでくださいね。

ほかに、電車に乗っているときにつり革につかまりながら、同じようにお尻の穴を締めるように力を入れ、かかとを少し浮かせて立つ動作もおすすめです。

すぐには効果が出ないと言われていますが、私の周囲では、朝にやっておくと、その日は調子がいいという声をよく聞きます。

 膀胱トレーニング 

それから「膀胱トレーニング」というのも行われています。尿意を感じたら5分から10分だけ我慢する、という簡単なものです。

これは膀胱の機能回復と、メンタル改善の両方に有効です。

膀胱にはもっと尿を溜める余力があるにもかかわらず、すぐに尿意のスイッチが入ってしまうのが頻尿のよくあるパターンです。そこをちょっとだけ我慢することで、膀胱の尿を溜める機能を呼び起こすわけです。

これは我慢する経験を積み重ねることで、不安からすぐに尿意のスイッチが入ってしまう習慣から脱することにもつながります。自信喪失状態から、自分の膀胱への信頼を取り戻すメンタルトレーニングとも言えます。

極端な水分の制限は危険です

とにかく排尿障害については原因もさまざまな上に、それらが絡み合うことも多いので、一概に対処法を言うのは難しいものです。お悩みの方は“悪循環”に陥る前に、一度、泌尿器科(ひにょうきか)にご相談することをおすすめします。

問題が問題だけに、女性は診察台に上がるのが恥ずかしくて病院に行きにくいかもしれませんが、最近では「女性泌尿器科外来」というのも増えています。ここでは婦人科並みのプライバシーへの配慮が行われています。不安な方は、こちらでご相談してはいかがでしょうか。

なお、トイレの回数を減らすために水分を控える方がいらっしゃいますが、腎臓を守るためにも水は必要なので、1日に1~1.5リットルは飲むようにしてください。ただし夕方からはやや控えめに。カフェインやアルコールも避けたほうがよいです。

歳をとればある程度の排尿障害は仕方がないのですが、夜中に二度三度とトイレに行くようでは、昼間の生活がつらくなります。映画やコンサートも、トイレを気にしていては楽しめません。

中高年からのクオリティ・オブ・ライフを維持するためにも、“膀胱力”を高める努力はしておきたいものです。

常喜 眞理 家庭医、医学博士

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください