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「ウソ、年金が減額されるの!?」働くシニア、呆然…気づかなかった〈在職老齢年金制度〉の実情【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月12日 11時15分

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(画像はイメージです/PIXTA)

働きながら年金を受け取ると、年金額の一部または全部が支給停止となることがあるため、注意が必要です。ここでは、在職老齢年金制度と高年齢雇用継続給付について見ていきます。 FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

会社で働きながら「老齢厚生年金」を受ける場合の注意点

私はもうじき65歳を迎え、非正規の立場で再雇用された勤務先を退職することになります。幸い、知り合いのツテで同業他社に正社員で再就職が決まっており、まだまだ働くつもりです。年金プラス給料で、ようやくゆとりある生活ができる、身を粉にして働いてきたかいがあった…と喜んでいたら、知り合いから「給与額によっては、年金が減額される」と聞き、驚きました。一体どういうことなのでしょうか?

東京都大田区 会社員 64歳

「高年齢者雇用安定法」が改正され、希望者は原則65歳まで継続して働けるようになりました。また、会社によっては定年が70歳に設定されており、老後も長く働き続けることができる…という人もいるかもしれません。

70歳まで働き続ける一方で、年金の受給開始年齢は原則65歳、繰り上げ受給すれば60歳のため、会社の給料に加えて年金ももらえたら、生活はラクになるかも…そう考える方もいるのではないでしょうか。

しかし、そう上手くはいきません。60歳を過ぎても働き続け、同時に年金も受給する場は合、一定の金額よりも給与を得ていると、年金が減額されてしまうのです。

在職老齢年金制度で、年金はどれぐらい減額される?

このように、60歳を過ぎても会社で働き続けながら年金を受け取る場合、老齢厚生年金が減額するよう調整をされてしまう制度のことを在職老齢年金制度といいます。

厚生年金に加入していない自営業者の方には関係ない話ですが、60歳以降に厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給することを考えている方にとって重要な話です。もし、60歳以降も会社員として働き続けるつもりならば、覚えておいたほうがよいでしょう。

では、実際にどれほど年金が減額されるのでしょうか。

減額となる基準は、年金と給与の合計金額が月額48万円以下かどうか、という点になります。47万円以下なら減額されませんが、48万円を超えると、超えた部分の2分の1が減額されてしまいます。

それでは、実際に減額の対象となるのか、60歳以上で働きながら年金を受給した場合、1ヵ月あたりどれほどの収入があるのか、計算してみましょう。

計算する項目としては、老齢厚生年金の基本月額と、総額報酬月額相当額です。

基本月額:1年間の老齢厚生年金を12で割った金額(加給年金額および経過的加算額は除く)

総報酬月額相当額1年間の給料とボーナスの合計を12で割った金額

※ 総報酬月額相当額は給与明細の月収とは異なります。

これらの合計額が48万円を超している場合、48万円を超えた部分が1/2に減額されます。

毎月48万円と聞くと、そこまで稼がないのでは? と思う方もいるかもしれませんが、年金をしっかり受給し、フルタイムで働くとなると、超してしまう方も少なくありません。

では、48万円を超えた部分の2分の1、というと具体的にどのように計算されるのでしょうか?

例を挙げると、老齢厚生年金の基本月額が10万円、総報酬月額が42万円だった場合、これらを足すと52万円です。これは48万円という金額を4万円分超えています。この4万円の2分の1、すなわち毎月2万円の老齢厚生年金が減額され、基本月額は8万円になるのです。

2万円減額されるとなると、大きな金額のように思えますが、給与による収入の42万円、減額後の老齢厚生年金の8万円に加え、老齢基礎年金も6万円程度受給でき、合計すれば56万円程度の収入となるため、そこまで厳しいものでもないかと思います。

在職老齢年金による減額後の収入例

(基本月額:10万円 + 総報酬月額:42万円 - 48万円)÷2

=減額分:2万円

基本月額:10万円 - 減額分:2万円

=減額後の老齢厚生年金:8万円

総報酬月額:42万円 + 老齢厚生年金:8万円 + 老齢基礎年金:6万円

=56万円

減額されてしまうのであれば、定年後に会社で働くとしても、厚生年金保険に加入しなければいいのでは? と考える方もいるかもしれませんが、年金受給者であっても、フルタイムとして会社で働き続ける場合は、70歳まで厚生年金保険への加入が義務付けられています。

もし、本当に厚生年金加入したくない場合、短時間勤務にすれば加入対象から外れるため、どちらが得なのか、どのように働きたいのか、十分に検討したうえで判断するようにしましょう。

会社員を続け、高年齢雇用継続給付をもらうと年金減額

ちなみに、雇用保険制度には「高年齢雇用継続給付」という制度があります。

高年齢雇用継続給付は、

●雇用保険の加入期間が5年以上

●60歳以上65歳未満

●60歳になった時点での給与から75%よりも少なくなった

という条件を満たす方を対象に、最高で給与の15%が雇用保険から支払われる制度です。

60歳以降も会社で働き続ける場合、給与水準を大きく下げられることも多く、75%を下回ることも十分ありますから、その場合、年齢雇用継続給付を受給できることになります。

この年齢雇用継続給付を受給するとなると、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付と給与の3つを同時に受取ることができます。

ただし、この場合も老齢厚生年金が減額されることになります。在職老齢年金制度による減額に加え、さらに標準報酬月額の6%が支給停止されてしまいます。

たとえば、基本月額10万円と総報酬月額20万円の方が、高年齢雇用継続給付を3万円もらっているケースを考えてみましょう。この場合は48万円を超えていないため、在職老齢年金制度による減額はありません。しかし、総報酬月額20万円のうち6%、すなわち1万2,000円が支給停止されてしまうのです。

とはいえ、1万2,000円が減額されたとしても、高年齢雇用継続給付を3万円受給できていることを考えれば、そこまで不利な制度ではありません。

給与の20万円と高年齢雇用継続給付の3万円、そして減額された老齢厚生年金8万8,000円と老齢基礎年金を合計すると、37万8,000円ほどの収入となるため、生活に困ることはないかと思います。

高年齢雇用継続給付を受給する場合の収入例

総報酬月額:20万円 × 0.06

=支給停止額:1万2,000円

老齢厚生年金:10万円 - 支給停止額:1万2,000円

=支給停止後の老齢厚生年金:8万8,000円

総報酬月額:20万円 + 老齢厚生年金:8万8,000円 + 高年齢雇用継続給付:3万円 + 老齢基礎年金:6万円

=37万8,000円

公的年金の制度は本当に複雑ですが、減額されてしまうことや、給付制度を十分に理解したうえで、年金を受給することが重要になります。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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