北朝鮮ミサイルの「標的」は日本
Japan In-depth / 2017年9月1日 19時37分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・8月29日、北朝鮮のミサイルが北海道上空を通り太平洋上に落下。
・日本メディアはミサイルが「通過」と書いたが、米メディアは日本国内の米軍基地などが「標的」となった、と書いた。
・日米間のこうした差はなぜ生まれたのか考えるべきであろう。
北朝鮮が8月29日に日本に向けて撃った弾道ミサイルは北海道上空を通り、太平洋上に落下した。日本の主要新聞はこの発射を日本「通過」と総括するところが多かった。ところがアメリカの新聞はこの北朝鮮弾道ミサイルが日本国内の米軍基地などを「標的」として実験発射されたとするのがほとんどだ。
同じ無謀な北朝鮮のミサイル発射でも日本とアメリカの反応の温度差は顕著である。やはり日本では核やミサイルの脅威がつい目先に存在するにもかかわらず、反応は鈍いといえそうだ。
北朝鮮の「火星12」と称されるこの中距離弾道ミサイルは約2700キロを飛び、北海道の襟裳岬の東の太平洋上に落ちた。このミサイル発射を朝日新聞8月30日朝刊(国際版)は「北朝鮮ミサイル 日本通過」という大見出しで報道した。脇の見出しには「2700キロ飛行 『グアム射程』誇示か」とあり、北朝鮮の狙いはまずグアムであるかのような総括の表現だった。ここで強調されたのは「通過」という言葉であり、このミサイルがあくまで日本の上空を単に通っていくという印象だった。(参考:朝日新聞ウェブ版記事2017年8月30日)
日本経済新聞8月30日朝刊(国際版)の記事も主要見出しは「北朝鮮ミサイル 日本通過」だった。(参考:日本経済新聞ウェブ版2017年8月29日記事)同時に「日本領域への落下物や飛行機や船舶への被害情報はない」点を強調していた。ここでもこのミサイルはただ日本領土のはるかの上空をなにごともなく飛んでいった、という感じの描写なのである。
▲写真 中距離弾道ミサイル迎撃実験の為発射された米THAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)アラスカ州コディアック打ち上げ基地 2017年7月 出典:米国防総省 HP
一方、アメリカの主要新聞でみる反応は異なっていた。ワシントン・ポスト8月30日付は「北朝鮮の完全に計算された発射」という見出しの記事で、アメリカ側専門家たちの意見の総合として「北朝鮮は今回は慎重にグアム島の米軍基地は狙わないが、日本国内のどこでも標的としうる能力を誇示した」という点を強調していた。
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