イージスアショアは必要ない
Japan In-depth / 2020年4月3日 23時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・官邸の独断専行で陸自のアショア導入決定、防衛省は蚊帳の外。
・性能、費用、貢献度においてアショア導入には課題残る。
・イージス護衛艦や滞空型無人機導入の方がはるかに利点多し。
防衛省はミサイル防衛のために陸自にイージス・アショア(以下アショア)を導入するが、これは必要ないどころか、自衛隊を弱体化させて寧ろ有害だ。
アショア導入によってアメリカ政府の歓心を買うために官邸、特に和泉補佐官の独断専行であるといわれている。しかも地元に説明せず、海自の導入しているレイセオンのものではなく、全く別のロッキード・マーティンのレーダーの採用決め手の導入を官邸で決めてしまった。当時の小野寺防衛大臣は知らせを聞いて大臣室で怒号をあげたというから、防衛省は蚊帳の外だった。
▲写真 和泉洋人内閣総理大臣補佐官 出典:首相官邸
当然ながら首相補佐官にそんな権限はない。ナチスドイツの総統府が思いつきで国防軍にあれこれ高圧的に命じるのと同じだ。軍事的な整合性もなく、アメリカの歓心を買うためだけに非常に高価な装備を自衛隊に押し付けることよって、自衛隊は弱体化するので中国や北朝鮮は大喜びだろう。
アショア導入の問題点は幾つもある。まず、日本の安全保障上の貢献度は小さい。対処できるのは蓋然性が低い北朝鮮からの弾道弾攻撃への対処のみだ。中国の脅威対処等、他の海域の日本の安全保障には役に立たない。
また2か所で約3千億円、下手すると6千億円以上の費用は費用対効果が低すぎる。導入に際してかかるのはアショアのシステムだけではない。レーダーを備えた短距離防御用のミサイルや対空機関砲、ドローン対処のためのジャマー、ゲリラ・コマンドウ対処のための防御陣地なども必要で、一箇所に最低1個中隊は張り付く必要があるだろう。導入予算は大幅に膨らむだろう。
次に問題なのは自衛隊がその存立基盤である国民、住民の支持、信頼を失うことだ。海自イージス艦のレーダーは、電波による影響度が大きいために沿岸から50海里以遠のみ運用可とされている。
レーダーはサイドローブと呼ばれる軸線以外の広範囲への漏洩電波輻射は避けられないため、超高出力のSPYレーダーは近隣に影響を及ぼすことを避けられない。逆にアショアがイージスレーダーを使うことが問題ないならば、イージス艦も停泊地でもイージスレーダーを使用するは可能だ、何のために50海里も離れて使用しているのだ、とういう話になる。
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