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バイデン米政権、住宅コスト引き下げの計画発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月8日 15時30分

米国のバイデン政権は3月7日、住宅コストを引き下げる計画を発表した。住宅については、供給面がボトルネックになって価格が上昇(注1)しているほか、高金利の影響もあり、住宅の入手可能性が課題となっている(2024年3月5日記事参照)。また、こうした点は米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の議会証言のときにも、多数の民主党議員が取り上げる(2024年3月7日記事参照)など、政治的にも大きな関心が寄せられていた。3月7日に行われた一般教書演説にも盛り込まれた。

今回発表した計画の主な内容は次のとおり。

(1)住宅ローン救済クレジット

初めて住宅を購入する中流階級に2年間、年5,000ドルの税額控除を付与する。これは、住宅ローン金利を1.5%以上引き下げるのに相当するという。住宅ローン金利(30年固定物)は、2022年3月から開始されたFRBによる金融引き締め以来、3%程度上昇しており、その半分を補填(ほてん)することになる。今後2年間で350万世帯以上の中流世帯が初めて住宅を購入する際に役立つと説明している。また、その地域の住宅価格の中央値を下回る価格で住宅を売却する場合に、1年間最大1万ドルの税額控除を付与する。これにより、300万世帯が住宅売却時に支援されると説明する。ロックイン効果(注2)によって目詰まりしている中古住宅市場を活性化させることで、供給不足に伴う住宅価格の高止まりを抑える狙いがあるものと思われる。

(2)第1世代の住宅購入者向けの頭金補助

住宅所有に関して世代を超えた恩恵を受けていない住宅購入者(第1世代)に対して、最大2万5,000ドルの頭金補助を提供する。これにより40万世帯が最初の住宅を購入するのに役立つと説明している。

(3)借り換えのクロージングコストの削減

連邦住宅金融庁(FHFA)は、借り換えを行った場合に貸し主の権原保険を免除する実験的な取り組みなどを通じてクロージングコストを削減する。これにより、何千人もの住宅所有者が最大1,500ドル、平均750ドルを節約できるようになると説明している。

(4)住宅ローン成約コストの削減

消費者金融保護局(CFPB)は、金融事業者が住宅購入者や住宅所有者に課す反競争的な成約コストに対処するための規則制定と指導を追求する。これまでは、こうした成約コストのために数千ドルが初期費用に追加されるため、その分の頭金が減少してきたと指摘。今後数カ月以内に、財務省連邦保険局が権限保険業界について議論し、改革案を分析するための円卓会議を開催する。

(5)低所得者向け賃貸住宅の建設・保全のための税額控除

120万戸以上の低所得者向け賃貸住宅を建設、または保全するための税額控除を拡大する。これにより、結果として賃借人は数百ドルを節約できるようになるという。また、手頃な住宅を建設、または改築するための新しい税額控除(Neighborhood Homes Tax Credit)も設立する。

(6)住宅拡大のためのイノベーション基金

200億ドルの競争的基金を設立することで、手頃な価格の集合賃貸住宅の建設の支援、住宅開発に対する不要な障壁を取り除くための地域の行動の奨励、手頃な価格の賃貸住宅の生産を増やすための革新的なモデルの試験的な導入を行う。

(7)連邦住宅貸付銀行(FHLBank)に対する低価格住宅プログラムへの拠出増

全国にある11の連邦住宅貸付銀行に対し、低価格住宅プログラムへの拠出を前年純利益の10%から20%に引き上げることを求める。これにより、今後10年間で37億9,000万ドルを調達し、手頃な価格の賃貸住宅や分譲住宅の融資、取得、建設、改修を支援するとともに、低・中所得者の住宅購入や改修を支援する。

(8)企業家主による家賃つり上げと戦う

「不公正で違法な価格設定に関するストライクフォース」の一環として、連邦政府機関に対して、反競争的、不公正、欺瞞(ぎまん)的、詐欺的な商慣行によって家賃をつり上げる違法な企業活動を根絶し、阻止するよう求める。

(9)レンタルジャンク料の取り締まり

実際のサービス提供コストよりも高額だったり、家賃に含まれているべきものであったりするなど、誤解を招くような隠れた手数料(オンラインで家賃を払うだけのコンビニエンス料金や、郵便物の仕分け・ゴミの回収にかかる手数料など)を禁止するべく、連邦取引委員会(FTC)が規則を確定させる。

(10)住宅バウチャーの拡大

低所得の退役軍人や児童養護施設を退所した青少年に対するバウチャーを含め、50万世帯以上への賃貸支援をさらに拡大する。

(注1)S&Pケース・シラー(コアロジック20都市)では、2023年夏以降、前年同月比で見た住宅価格が再びプラスに転じている。

(注2)金利上昇局面で過去に低金利で住宅ローンを組んだ者が住み替えによる金利負担上昇を嫌い、現在保有する住宅に住み続けるようになる現象。

(加藤翔一)

(米国)

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