【ダイハツ】「認証は、要するに性善説」自動車ジャーナリストが不正の背景を指摘「抜け道があるなら考え直さなきゃいけない」
MBSニュース / 2023年12月21日 17時22分
国内の軽自動車市場で3割のシェアを占めるダイハツで不正が見つかり、国内外の全車種の出荷を停止する事態となりました。第三者委員会が公表した報告書によると、不正は34年前の1989年から始まっていて、新たに25の試験項目で174件の不正が見つかったということです。自動車ジャーナリストの桃田健史さんは「過去に例がない規模でやり方もかなり悪質」と話した上で、制度そのものについて「認証は多岐にわたっているが、性善説のものが多い。抜け道があるなら考え直さなきゃいけない」として、不正が起きる背景について解説します。(2023年12月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
桃田健史:自動車ジャーナリスト 日本自動車ジャーナリスト協会会員 高齢ドライバー問題や公共交通再編など取材
――ダイハツの車に乗っている人は不安を抱えていると思います。全車種が出荷停止となりました。軽自動車販売は、ダイハツが17年連続1位で33.4%、続いてスズキ30.5%、ホンダ17.6%です(2022年度)。影響はかなり大きいですか。
(桃田健史氏)過去に例がないぐらいの規模感です。これまで燃費不正などが、日野や三菱自動車、スズキであったんですが、不正の内容が174項目にわたるのと、車種もダイハツに加え他ブランドへのOEM供給まで広がって、やり方もかなり悪質です。OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、ダイハツが製造するけど、トヨタブランドの車、みたいな兄弟車のような関係です。
自動ブレーキ、踏み間違い防止 軽も装備が増えている
――不正の背景について第三者委員会は、「厳しいスケジュールで開発日程の死守が求められる」、「現場サイドから管理職に報告・相談ができない」、「不正やごまかしが見つからない職場環境」、などを指摘しました。
(桃田健史氏)こういう不正があると、だいたい複数の理由が出てくるんですけれど、最近は装備が増えているんです。例えば、予防安全(自動ブレーキ)、アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置とか、軽自動車もいろいろなものを法規の中でつけなければいけない。ただしその分コスト上がります。
でも、軽自動車は販売価格を抑えなきゃいけないから、安く、正しいものを短期間に詰め込むというのが、近年の流れです。そのため「現場のプレッシャーがあった」というんですが、今回、古いものは1989年とわかってるわけで、何十年も前から起こっているということは、それだけが問題ともいえない。企業体質等々、根深い問題だと思います。
「(衝撃検知でなく)エアバッグがタイマーで開く」
――不正を具体的に見ていきましょう。「本来、衝撃を検知して作動するエアバッグの認証試験で、タイマーで開くようにしていた」。これは、試験をパスするためにしていたのですか。
(桃田健史氏)カーテン式のサイドエアバッグ、ボンと開くものですが、検査ではECU(小さいコンピュータ)を使って感知することで、認証試験を通さなきゃいけないんだけど、『ECUの手配が間に合わなかったので、仮にタイマーを使って検査を通しちゃいました』というのです。
製造されている車には、ECUがついているんですが、「結果として開きますよね」っていうことで、試験を通してしまったということです。試験を通すのはECUがあるのが前提なのに、タイマーでやったいうことは隠して、通していたということです。
――続いての不正、「車からの脱出に関わるドアロック解除が、法規に適合していない可能性」、これはどういうことなんでしょうか?
(桃田健史氏)これも同じようなもので、ドアロックで法規状は何秒とかの条件があるのに対して、条件が合っていないということです。174の不正は様々あって、データを書き換えているものもある。使わなきゃいけない機械を使わずテストをして通したとか、ありとあらゆる不正があります。
認証は、「要するに性善説」
――これに対し桃田さんは、「安全面での不正は悪質、国には認証のあり方の抜本的な改革を求めたい」と話していますね。
(桃田健史氏)大きな問題です。認証っていうのは、『型式指定』という車を製造するための許可書をもらうための認証なんですよ。その認証は多岐にわたってあります。あまりにたくさんあるので、担当する国土交通省の機関は、それだけの人数で対応できないということで、対面で行える試験が少ないんです。
「要するに性善説」です。メーカーのデータを国側は信用して、出たものをベースに、許可を与えているというのが現状の認証なんです。全てではないですけれど。ただ抜け道があるんだったら、やり直さなきゃいけないです。考え直さなきゃいけないってことです。
――そうなると、ダイハツだけの問題なのか、他のメーカーは大丈夫なのか、となる、そこはいかがでしょう。
(桃田健史氏)おっしゃる通りで、製造するまでの開発工程、製造時の工程、車の大小にかかわらず、それほど大きく変わっているわけではないです。認証における、ある意味抜け道みたいのは同じところにあるでしょうし、今回の発覚を受けて、各自動車メーカーは徹底的に社内調査するはずなんですよ。だから現時点でなんとも言えませんけど。この後何も出てこないという可能性がゼロとは言えない。ただ、ダイハツの場合はあまりに多いというのが問題です。
――ダイハツだけの問題でも親会社のトヨタの問題でもなくて、自動車産業全体の問題として捉えた方がいいです。
(桃田健史氏)おっしゃる通りです。日本自動車工業会でも、これから真剣に議論をするでしょうし、自工会としての見解もこれから示されると思っています。個社だけの問題ではございません。
奥平社長「私としては、今まで通り安心して乗っていただければと思う」
――海外にもたくさん輸出していると思います、海外の反応はどうなんでしょう。
(桃田健史氏)まだ具体的な話は入ってませんが、SNSを通じても反応は当然です。ダイハツは東南アジア、インドネシアとかで販売シェアが非常に大きいので、真摯に向き合って、しっかりした説明が必要だと思います。
――ダイハツの奥平社長は、車の安全性について「社内の検証で、問題ある事象はなかった。私としては、今まで通り安心して乗っていただければと思う。」と話しました。ダイハツは「返品したい等の要望には個別に対応する」としています。ダイハツの車で大丈夫か、という人は、車を購入したところに、個別に問い合わせるということでしょうか。
あくまでも認証は「製造」に関すること ユーザーは直接言えない
(桃田健史氏)新車は正規の販売店、認定中古車の場合はダイハツの販売店でしょう。個別に中古車を買った場合はなかなか難しいと思うんですけど、ダイハツの本社のホームページを通じて、問い合わせ先がアップされていますので、それをすると。あくまでも認証というのは、製造に関することなので、ユーザーから何か直接言えることはないんですよ。リコールがあれば、それは対応していただくとなりますけど、リコールがないものに対して、累積すると何百万台ということになってくる。
それを個人に対して補償するかといっても、どこで何をどう線引きするのっていうのは、非常に難しい。それはダイハツがこれから対応すると思います。いろんなニュースや、ダイハツのホームページを見て、不安な方は販売店に問い合わせる。それから自分自身の感覚としては、どういうふうに考えるかというのは、個人の判断だろうと思います。
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