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歌姫ビヨンセの新曲「16キャリッジズ」「テキサス・ホールデム」が起こす、カントリー音楽の大革命

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月16日 15時10分

@Rmeena462/X

<黒人ポップミュージックの女王ビヨンセが打ち破る「カントリーは白人の音楽」という思い込み>

2月11日に行われたアメフトの最大のイベント、スーパーボウル。ビヨンセはそのテレビ中継のCMに出演して新曲の発表をにおわせ、当日のうちに「16キャリッジズ」と「テキサス・ホールデム」の2曲をリリースした。

キャリッジ(馬車)やテキサスという言葉が示唆するとおり、曲調は完全にカントリー。圧倒的な美声(と美貌)を持つ黒人アーティストとして、時にはソウル、時にはR&B、そして時には激しいダンスを伴うポップスを披露してきた女王ビヨンセの新路線に、当初は激しい議論が巻き起こった。

ビヨンセがカントリー調の曲を歌うのはこれが初めてではない。しかし今回の2曲は最も大きな論争を招くと同時に、最も大きなヒットとなった。黒人女性がカントリー部門で全米第1位を獲得したのは、ビヨンセが初めてだ。

ただ、オクラホマ州のKYKCなどカントリー音楽専門のラジオ局は当初、この2曲は「カントリーではない」として放送することを拒否した。

確かに一般にカントリー音楽といえば、政治的には保守で、著しく愛国的で、基本は田舎に住むアメリカ人が愛するジャンルというイメージが強い。それはアーティストとレコード会社、そしてファンを長年にわたり悩ませてきた問題でもある。

筆者は黒人文化とカントリー音楽の研究者として、ビヨンセという超大物アーティストの参入が、この議論に新しい風を吹き込むことを願っている。

ここで最も大きな問題となるのは、ビヨンセが黒人であることではないだろう。それよりも、彼女の曲の「カントリーらしさ」や、ポップスターが別のジャンルの音楽も自然に(そして本物らしく)表現できるかのほうが重要だ。

この課題には多くの先人が取り組んできた。しかも最近は、カントリーのヒットを飛ばす黒人ミュージシャンが増えている。

大きい黒人音楽の影響

カントリーは、第2次大戦前にはヒルビリーと呼ばれ、おおむね白人の音楽と考えられていた。これは成り立ちに由来する側面もある。もともとヒルビリーは、黒人ミュージシャンによる黒人のための「人種音楽」に対峙するジャンルとして1920~40年代に生まれた。

だがカントリーは当初から、黒人音楽のスタイルやパフォーマンスの影響を受けてきた。カーター・ファミリーなど20世紀前半に人気を博したカントリーの大スターたちは、黒人アーティストの曲調やテクニックを取り入れていた。ただ、この頃の黒人カントリーミュージシャンの録音はほとんど残っていない。

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