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「宇宙支配」を狙う中国の「静かなる第一歩」がチリで始動、大量の「ミニ中国」を南米に作る真の目的は?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月10日 13時33分

中国の天文台の建設予定地の近くにはヨーロッパ南天天文台もある  DIDI KIRSTEN TATLOW

中国科学院の全天観察プロジェクト「司天」によると、南半球と北半球の全空を30分おきに「完全にスキャン」して、「国家の戦略的ニーズ」を満たす世界的な監視システムを構築する上で、ベンタロネス天文台は世界5カ所の拠点の1つと位置付けられている。

中国は、その宇宙開発が安全保障と結び付いていることを隠していない。習は24年にも「広大な宇宙を探索して、宇宙強国をつくろう!」と訴えたし、中国の国防法は「宇宙、電磁空間、そしてサイバースペース」で中国の権益を守ると定めている。

中国政府は、「有効な宇宙ガバナンス」の構築にも意欲を燃やしている。

中国は、月への定住と資源採掘、火星と木星への到達、小惑星から地球を守ること、宇宙ゴミへの対処、そして超新星の爆発やガンマ線バーストの監視にも意欲を見せる。24年6月には、無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」が、世界で初めて月の裏側の土壌を持ち帰った。

アメリカにも同じような宇宙開発目標があるし、保有する衛星は中国よりも多い。軍事目的の宇宙開発計画もある。だが、中国は年間約200個の衛星を打ち上げて、急ピッチでアメリカを追い上げている。

24年8月には、イーロン・マスク率いるスペースXの衛星通信網「スターリンク」を凌駕するべく、低軌道衛星通信網「千帆星座」を構築する小型衛星第1号が打ち上げられた。

やはり政府系の衛星通信サービス「国網」を構築する計画も合わせると、中国は今後少なくとも2万5000基の低軌道小型衛星を打ち上げる計画だ。

24年10月時点の天文台の建設予定地  DIDI KIRSTEN TATLOW

また、中国を本部とする「宇宙環境ガバナンスシステム」を構築する計画や、ロシアなどと進める国際月面研究ステーション(ILRS)計画、「宇宙法」を起草中のアジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)などのプロジェクトも進んでいる。

アメリカで19年に設置された宇宙軍の幹部は、中国軍の宇宙開発はここ5〜6年間で急速に進歩したと語る。そして台湾有事など東アジアで紛争が発生した場合、米軍と同盟国の軍を危険にさらすレベルに達していると指摘する。

「彼らは、あらゆる軌道でわれわれの衛星を危険にさらす能力がある。ただ、中国の海岸線から遠く離れた場所で、中国はアメリカなどと戦いたいと考えている」と、宇宙軍で宇宙情報作戦を担当するグレゴリー・ギャグノン少将は語る。「だから習が権力を握って以来、これまでにないスピードで宇宙における軍事能力を強化してきたのだ」

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