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「宇宙支配」を狙う中国の「静かなる第一歩」がチリで始動、大量の「ミニ中国」を南米に作る真の目的は?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月10日 13時33分

さらにギャグノンは、「今や西太平洋におけるアメリカや友好国の軍事活動は、宇宙から中国に常時監視されている」と語る。このため中国は、はるか遠くの標的もミサイルで攻撃することができる。

中国はその宇宙開発が軍事目的だという非難を否定している。「中国は宇宙の平和利用を唱え、宇宙の兵器化と宇宙における軍拡競争に反対し、宇宙における人類共通の未来を持つコミュニティー構築を推進している」と、中国国防省の張暁剛(チャン・シアオカン)報道官は11月に語っている。

「アメリカは宇宙を『戦闘領域』と見なし、宇宙軍を強化し、軍事同盟を確立して、宇宙を軍事化している」と、張は批判した。「アメリカこそが宇宙安全保障の最大の脅威であり、宇宙軍拡競争の最大の扇動者であることは事実が物語っている」

外部の人間はシャットアウト

乾燥気候で空気が澄み、標高が高いチリは地球上で最も天体観測に適した場所の1つだ。欧米諸国や日本の天文台もあり、世界の大型宇宙望遠鏡の約7割がチリに集中している。

ここは砂塵舞う道路の外れに広がるアタカマ砂漠の丘陵地帯。チリのカトリカ・デル・ノルテ大学(UCN)と中国科学院国家天文台(NAOC)の合弁事業で、面積約26平方キロのベンタロネス天文公園の整備が進もうとしている。

敷地内には約100基の宇宙望遠鏡が設置される予定で、中国側は建物と設備に8000万ドルの初期投資を行った。建設を担うのは100%チリ資本の会社だが、その実態は軍の建設工事を請け負う中国企業「中国建築股分有限公司」の子会社にほかならない。

「中国の今後の宇宙活動にとって、チリは非常に重要だ」と、中国科学院の天文学者、朱磊(チュー・レイ)は本誌に話した。岩だらけの不毛な地が広がり、鉱山開発のノウハウが蓄積されていることも、中国の月探査・基地建設計画に役立つというのだ。

合弁契約は「長く困難な」、そして「ちょっと変わった」8年の交渉の末にまとまったと、UCNの代表を務めたモニビディンは言う。交渉が難航したのは、中国側が施設の利用を制限しようとしたためだ。

「建設費を出した中国が所有権を主張するのはもっともな話だ」と、モニビディンは言う。だが、それではチリ政府は納得しない。

最終的にUCNが折れて、設備を使わないことを条件に敷地への出入りを認めてほしいと要求し、中国側も了承した。「あなた方のベッドやコンピューターは使わないが、ノックしたら入れてくれと頼んだのだ」と、モニビディンは説明する。

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