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「宇宙支配」を狙う中国の「静かなる第一歩」がチリで始動、大量の「ミニ中国」を南米に作る真の目的は?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月10日 13時33分

司天計画では将来的な地球規模の「全天監視」ネットワークにメキシコの天文台も含まれることになっている。

パナマも最近、中国とロシアの月面基地建設計画に参加し、中国と共同で深宇宙探査を行うための基本合意書に署名。ブラジルも昨年11月、宇宙開発協力の拡大と千帆計画への参加で中国側と合意に達し、既に共同で衛星を打ち上げている。

中国が目をつけているのは中南米だけではない。なんとアメリカ本土にも宇宙活動の拠点がある。

本誌が入手した情報によると、マサチューセッツ工科大学(MIT)のヘイスタック天文台(Haystack Observatory)はこれまで長年、中国の宇宙活動の安全保障を支える「子午プロジェクト」の観測に協力してきたという。

このプロジェクトを担うのは中国科学院国家空間科学センターだが、ヘイスタック天文台のスタッフがその観測任務を請け負う形になっている。

「協力は結構だが、戦争になって、中国がアメリカの納税者のカネで設置されたアメリカ本土のレーダーにアクセスできるとなると話は別だ」と、データ分析サイト「データ・アビス」の創設者LJ・イーズは言う。

ヨーロッパでは、中国は北欧の3局のレーダーを結び、大気上層を高精度で観測するEISCAT(欧州非干渉散乱)プロジェクトに参画してきた。

中国が北欧諸国との共同プロジェクトを進める場所の1つが、北極圏に位置するスバールバル諸島だ。ここの島々は20世紀前半に成立した条約でノルウェー領となったが、条約加盟国はここを産業活動や極地観測に活用できる。ただし「戦争のような目的」の活動は禁止されている。

「情報は全て中国軍に伝える」

本誌の調査で、中国がスバールバル諸島の主要な島に開設した研究所は中国最大手の軍用エレクトロニクス複合企業の傘下にあり、条約に反して軍民両用研究を行っている疑いが浮上した。

【関連記事】「それが中国流のやり方だ」北極圏でひそかに進む「軍民両用」研究の実態...ロシアとの接近、核持ち込みの懸念も

中国は自国の北極圏での研究調査を「全人類に貢献する平和的な活動」と称しているが、欧米諸国の見方は違う。

「北極圏における中国の研究調査は戦略的・軍事的な目的に利用される可能性が高い」と、ノルウェーのトロムソ大学の政治学教授マーク・ランテーニュは言う。

「当然ながら情報は全て中国軍に伝えられる。それが中国政府の体質だ」

もちろん、自国の宇宙活動を支援するため地球規模のインフラ網を構築している国は中国だけではない。

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