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橋下徹"米朝会談の意味を理解しないバカ"

プレジデントオンライン / 2019年3月6日 11時15分

2019年2月28日撮影(写真=AFP/時事通信フォト)

ベトナム・ハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談は「決裂」に終わった。会談結果を酷評する声が多いなか、それでも「事態を動かす」ことを選んだ2人のリーダーから学ぶことは多いと橋下徹氏は指摘する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月5日配信)から抜粋記事をお届けします――。

■決裂しても米朝首脳会談は交渉術の最高の教材だ

2月28日、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による2回目の米朝首脳会談は決裂した。日本のメディアもそうだけど、世界中のメディアがこの米朝首脳会談について一斉に評論し、多くは否定的な意見が多い。

・トランプ大統領の準備不足
・金委員長の読みの浅さ
・実務者による協議をすっ飛ばしてトップ会談に重きを置きすぎた代償
・トランプ大統領は何も考えていないバカだ

特に政治行政の経験もなく、ひたすら本でお勉強をしてきたような学者やコメンテーターに限って、会ったこともない政治家に対して「バカだ!」と人をコケ(虚仮)にしてくるんだよね。僕も散々やられたよ。

あのね、命も狙われるようなそれなりのポジションに就いて責任を持たされている者は、それが正しいのか間違っているのかは結果を見なければ分からないとしても、少なくても一学者や一コメンテーターよりも深く色々なことを考えているんだよ。そこは間違いない。自分の命にもかかわってくるんだから。

トランプ大統領も金委員長も、バカではない。金委員長率いる北朝鮮は、日本人を拉致した問題を解決していないので良く評価するわけにはいかないが、それでも金委員長がバカではないことは確かだ。批判するなら言動の中身をきちんと批判していくべきだし、また、バカと虚仮にすることなく彼らの思考プロセスというものをしっかりと把握していくべきだ。そのような姿勢を取ることによって初めて、彼らにこちらの望む言動を取らせるためには何が必要なのかを知ることができる。

他人を動かすというのは、ほんと大変なんだよ。そして他人を動かすためには、その他人の思考プロセスをきちんと把握することが必要かつ重要。他人の思考プロセスを把握せずに、単にバカだ、アホだと罵っても、その他人が動くわけがない。

学者やコメンテーターのように他人を批判すれば仕事になる人たち、また持論を述べて自分は賢いだろうと悦に入れば仕事になる人たちは、相手の思考プロセスなどを把握しようとも思わないだろう。単にその相手を腐せばいいだけだから。しかし課題を解決するために他人を動かそうと思えば、まずはその他人の思考プロセスを把握することが絶対に必要となる。その他人の思考プロセスに合わせて、こちらも次の一手を考えなければならないからね。

たとえば日韓関係が冷え切っている今、日本国内の威勢のいい政治家やインテリたちは、韓国や文在寅韓国大統領を腐すだけ。でもそうじゃなく、韓国国民や文在寅大統領の思考プロセスを把握し、彼らにこちらが望む言動を取らせるためにはこちらはどのような一手を打つべきかを考えることが、本当は必要なんだ。韓国国民や文在寅大統領の思考プロセスについては、今後改めて論じたい。

今回は、トランプ大統領や金委員長の思考プロセスを把握することに努める。そうすると、両名に対峙するときの戦術というものが分かってくるのと同時に、実際の交渉ごとに活用できることが山ほどあることが分かる。まさに今回の米朝首脳会談は、交渉人にとっては最高の教材なんだ。

(略)

■トップと実務者との役割分担。トップの仕事は「事態を動かすこと」

トランプは準備不足のまま、自分の成果を誇示するためにトップ会談を重視しているという批判が多い。特に、外交官経験者や国際政治学者などは、専門家や実務者の協議を積み重ねるべきだと主張する。

もちろん具体的な詰めは専門家や実務者が担うところだし、そもそも専門家や実務者で協議がどんどん進むようなら、彼ら彼女らにまずは任せればいい。組織トップのマネジメントとして重要なことは、トップが自ら乗り出さなければならない状況なのか、それとも部下などの組織で対応すれば事足りるのかを見極めることだ。

(略)

専門家や実務者は確かに知識はある。しかし「力」はない。そうなると、専門家や実務者で事態が動かない膠着状態に陥ったときに、話がそれ以上進まなくなる。

また特に関係者が複雑に絡む問題になればなるほど、特定分野の専門家や実務者の協議では事態は動かなくなる。 ある分野の交渉ごとが、他の分野に影響するということはよくあることだ。ある分野で交渉が完結するなら、その分野の専門家や実務者で協議は進む。しかし他分野に影響するなら、その他分野を所管する者との協議がさらに必要となる。

(略)

事態が膠着してしまった場合、関係者が複雑に絡む場合にこそ、トップ会談が必要かつ重要になってくる。トップ会談で事態を動かし、目指すべき方向性を示す。そしてその中で、専門家や実務者が詰めの協議をしていく。これが複雑な交渉を組織で進める鉄則だ。

2月28日の米朝首脳会談決裂以後今に至るまで、特に新聞等の紙メディアにおいては、もっと専門家や実務者に協議させるべきだという専門家や実務者の意見が多かった。

では、これまで北朝鮮の核問題について専門家や実務者はどういう協議を行っていたというのか?

北朝鮮の核問題は、遠く金日成のときに遡る。明確に核実験をやり始めた2006年以後、国連安保理は北朝鮮に制裁を科すが、それから現在に至るまで専門家、実務者の協議はどうなっていたのか。まさに専門家、実務者の協議では事態が膠着して、解決の道筋が全く見えなかったではないか。

こういうときに事態を動かすために大衝撃を与えることこそがトップの役割であり、政治家の役割である。

(略)

(ここまでリード文を除き約2200字、メールマガジン全文は約9700字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.142(3月5日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【米朝会談に学ぶ「交渉術の授業」(1)】まずはトランプ大統領×金委員長の思考プロセスを読み解く》特集です。

(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=AFP/時事通信フォト)

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