客離れの続く丸亀製麺がまた値上げのワケ

プレジデントオンライン / 2019年6月5日 9時15分

画像=丸亀製麺HPより

讃岐うどん専門店「丸亀製麺」で客離れが続いている。既存店客数は、16カ月連続で前年割れとなっている。うどんチェーンの雄に、何が起こっているのか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「2018年の値上げを引き金に、勢いが鈍化した。テレビCMの力に頼ってきたやり方も、限界がきている」と分析する――。

■既存店客数が16カ月連続で前年割れ

讃岐うどん専門店「丸亀製麺」が、客離れで苦しんでいる。丸亀製麺といえば、290円(税込)からという低価格でうどんが食べられ、昼時には行列ができる店舗も多い。しかし、最近はその人気に陰りが見え始めているのだ。

4月の既存店客数は前年同月比1.0%減だった。2019年3月期(18年4月〜19年3月)通期ベースでも、客数は前期比3.8%減と大きなマイナスとなった。16カ月連続で前年割れが続いている。18年3月期は0.8%増、17年3月期が3.0%増、16年3月期が1.8%増と伸び続けていたのが、なぜ突然失速したのか。

丸亀製麺が誕生したのは2000年。運営会社のトリドールホールディングス(HD)が兵庫県加古川市に1号店を開店したのが始まりだ。ロードサイドやショッピングセンター内を中心に出店を重ね、店舗数を大きく伸ばしてきた。11年には47都道府県への出店を達成。アジアや北米、ロシアなど海外にも積極的に出店しており、18年3月には「世界1000店舗」を達成した。

■店舗で打ちたての麺が魅力

丸亀製麺の売りは、価格の安さとおいしさだ。特にうどんの「打ちたて」の麺が大きな武器。全店に製麺機を置き、100%国産(北海道産)の小麦粉を使って店内で製麺している。

これは、最大のライバル「はなまるうどん」に対する差別化要因になっている。はなまるうどんも「かけうどん」を税別150円で販売するなど、丸亀製麺同様に安さが売りだ。だが麺に関しては、オーストラリア産を主体とした小麦粉を使って自社工場で製麺している。

丸亀製麺は打ちたての麺で人気を集め、店舗網を大きく広げた。同じく2000年に1号店を開店したはなまるに倍近い差をつけ、18年3月末時点で国内では817店を展開している。

業界の盟主として君臨してきた丸亀製麺の客離れの原因のひとつは、「値上げ」だ。18年3月下旬に、数種類のうどんや天ぷらなどトッピング商品で価格が引き上げられていたとネット上で話題になった。この事実を確認するためトリドールHDに問い合わせたが、期日までに回答はなかった。

だがトリドールHDでは、5月16日に発表した19年3月期の決算説明資料で、18年4月〜6月は商品単価の値上げの影響が出たと分析している。値上げは確かに行われていたわけだ。

■トリドールHDの売上高は大幅増収

この時期の既存店客単価は前年同期比で上昇したが、客数は4月が2.4%減、5月が9.0%減と大きく減少した。既存店売上高は4月こそ前年を超えたものの、5月と6月は大幅減となった。

現在まで続く客数減は、このときから始まっている。18年4月以降の客単価は上昇傾向にあるが、客離れを補うには至らず、19年3月期の既存店売上高は前期比2.7%減と大きく減った。それまでは増収が続いていたので、値上げが響いたと言わざるをえないだろう。

運営会社であるトリドールHDの売上高は決して悪くはない。むしろ絶好調だ。19年3月期連結売上高は、前期比24.5%増の1450億円と大幅な増収を達成している(5月14日発表)。だがこれにはからくりがある。18年1月に香港の人気中華麺チェーン運営企業を子会社化したことが主な要因なのだ。この企業の業績が19年3月期の海外事業の業績に反映され、同事業の売上高が前期比2.9倍の302億円と大きく伸びることとなった。

■出店攻勢は衰え、国内では飽和気味か

一方、丸亀製麺事業の売上高はさえない。19年3月期の売上高は0.5%減の899億円だった。出店により店舗数は増えたものの、既存店売上高が低迷したことが響き、減収となった。セグメント利益も減り、11.1%減の124億円にとどまっている。また、想定していた収益が見込めなくなったため、同事業で7億円の減損損失の計上を余儀なくされている。

国内での今後の成長は危うい。かつては出店攻勢により年に100店以上増えていたが、国内700店を超えた14年3月期以降、著しく伸びが鈍化している。19年2月期は25店の増加にとどまった。もはや出せる場所には出店しつくしたのか、主戦場だったロードサイド型の店舗数は伸び悩んでいる。一方、ショッピングセンター内の店舗数は緩やかに増えてはいるが、こちらも一時期ほどの勢いはない。国内では全体に飽和感が漂っているのだ。

この状況下で丸亀製麺が成長するためには、既存店の強化が欠かせない。特に季節限定の商品が鍵を握る。目新しさから集客が見込めるうえに、価格が多少高くても売れるので、客単価の向上が期待できるからだ。19年3月期は、「うま辛坦々うどん」(並盛り650円/18年10月発売)や「牡蠣づくし玉子あんかけ」(同670円/同11月発売)が好調だったという。

■季節限定商品+CMの戦略が奏功していた

丸亀製麺では、季節限定商品とテレビCMをセットで打ち出すのが定番の戦略になっている。「うま辛坦々うどん」と「牡蠣づくし玉子あんかけ」では、女優の松岡茉優がメインを飾るテレビCMを放映していた。

この手法が始まったのは、2014年8月からだ。当時の新メニュー「肉盛りうどん」の販売を促進するため、タレントの武井壮が「ヤバい」を連呼しながら同商品を食べる様子を映したテレビCMをオンエア。丸亀製麺にとって、初めての全国テレビCMになった。

これが大当たりし、8月の既存店売上高は前年同月比15.7%増と大きく躍進した。前年割れが続いていた不調を振り払った。客数も8.3%増と大きく伸長した上、同商品は並盛り590円と定価が高額だったため、客単価も6.8%増と大きく高まった。

「肉盛りうどん」の後には、「タル鶏天ぶっかけ」「知床いくらうどん」「Wカツカレーうどん」「だし玉肉うどん」といった季節限定商品の販売に合わせてテレビCMを放映したが、いずれも好評で集客に大きく貢献したという。「肉盛りうどん」発売の14年8月から16年7月まで、既存店売上高は24カ月連続で前年超えとなった。

■広告宣伝の費用対効果悪化が見て取れる

だがテレビCMは諸刃の剣だ。当たればいいが、販売につながらなければコストがかさむリスクをはらんでいる。

事実、丸亀製麺では広告宣伝の負担が重くなっている。トリドールHDの利益は大きく減少している。19年3月期の営業利益は、前期比69.8%減の23億円と大幅な減益となった。売上高営業利益率は前期から5ポイント低下し、1.6%と近年に見られない低水準となっている。人件費や原材料費のほか、広告宣伝費が大きな重しとなった。丸亀製麺事業の広告宣伝費の割合は、前期と比べて0.5ポイント上昇している。費用対効果が悪くなっているのだ。

丸亀製麺は今年4月23日にも値上げを実施している。トリドールHDの広報によれば、うどん6商品や天ぷらなどトッピング商品の一部を10円値上げしている。例えば、「釡玉うどん」の並盛りは350円から360円に引き上げた。

客の移ろいが激しい飲食業界では値上げは鬼門だ。丸亀製麺も、18年の値上げでその難しさを実感しているだろう。利益率改善のためにはやむを得ず、再び値上げに踏み切ったということなのかもしれないが、ますます客離れが加速するおそれがある。かつての絶好調がうそのように深刻な事態に陥る可能性もあり、今後の行方に注目したい。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売り上げ拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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