1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

ブームの元祖は「ビッグダディ」林下清志氏…20代男子が心身の浄化のためにゴクゴク飲み干す透明度100%飲料

プレジデントオンライン / 2024年3月4日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alina Rosanova

「材料費0円」「無味無臭」の温かい飲み物を好む若い男子が増えている。マクドナルドやコンビニ、大手飲料品メーカーもそのマーケットを重視。コラムニストでイラストレーターの辛酸なめ子さんは「若者のアルコール離れが言われて久しいですが、もしかしたらお酒からこちらへ流れたのかもしれません。また、この飲み物を“ビッグダディ”こと林下清志さんも好んでいました」という――。

■アルコール離れの若者が朝からゴクゴク飲むモノ

アルコール度数8%を超えるストロング系の飲料の新規販売をとりやめたり、ラインナップを減らしたり、といった動きが大手飲料メーカーの間で広がっています。健康志向の高まりも反映していますが、ストロング系チューハイの縮小とは対照的に、水面下でじわじわ人気が出ている飲み物があります。

それは……「白湯」。パイタンのほうではなく、ストイックなお湯のほうです。

TBSの報道・情報番組「Nスタ」では先ごろ、「『白湯男子』が急増中」というテーマで取り上げていました。2024年1月にマクドナルドがホットティーの販売を終了。マックのホットティーはリプトンのティーバッグと熱湯が別々に出てくるので、ティーバッグを持ち帰り「白湯」として飲んでいた人が一定層いたらしく、惜しむ声が上がっていたそうです。ホットティーと白湯の需要がそれぞれあったことを受け、マクドナルドは、2月下旬より販売再開を決定。白湯のライフラインは守られました。

また、「冬の水分補給に関する調査」というアンケート結果(サーモス調べ、24年1月発表)によると、「白湯を飲みます」と答えた人で一番多いのは、20代男性で50%という結果に。20代女性も43%います。

ちなみに30代だと男性38%、女性33%、40代は男性33%、女性44%、50代男性18%、女性38%という結果になっていて、この調査では20代男性の白湯率の高さが目立っています。意外にも、20、30代は美容や健康意識が高い女性よりも多いです。50代男性が低すぎてちょっと残念ですが……。若者のお酒離れが言われて久しいですが、もしかしたら酒から白湯に流れたのかもしれません。

このところコンビニのホット飲料コーナーでもときどき白湯のペットボトルを見かけます。例えば、飲料大手のアサヒ飲料が2022年11月から発売している「おいしい水 天然水 白湯」は予想の3倍売れているとか。冬だけでなく通年販売で、二日酔いのときに飲む人も多いようです。アサヒ飲料の広報担当者は新聞の取材に「水(ミネラルウォーター)がそうだったように、白湯の需要も増えていくだろう」と市場の成長に手応えをつかんでいるようです(2023年3月20日付東京新聞「『天然水を温めただけ』懐疑論を覆した担当者の思いとは コンビニで人気の『白湯』」、日経クロストレンド「アサヒの『白湯』が想定の3倍超ヒット 男性市場の拡大に活路」)。

■人は味覚という煩悩を超えると「無味無臭」を好むように

白湯の健康効果に関しては医師や薬剤師などが、内臓の温度が上がって冷え性を改善する、血液の循環が良くなる、基礎代謝が上がってダイエットにもなる、といったことを述べています。また、東洋医学に詳しい島根大学医学部付属病院・教授の大野智さんによると「胃腸が温まることで、消化管(胃・腸など)活動を高める」「水分を摂取することで便が軟らかくなる」そうです(「便秘を改善⁉ 『白湯』の効果とは?」)。体内の余分な水分を排出してむくみ改善がある、という声もあり、自宅で準備すればほとんどお金がかからない白湯のパワーはすごいです。

白湯を飲んで感じた味によっても体調がチェックできるそうです。苦いと感じた時は寝不足、ストレス、胃酸過多、甘いときはほてりやむくみがある、酸っぱい時は水分不足、しょっぱい時は冷えている、など。おいしいと感じられる時は体調が良いそうなので、積極的に白湯を飲む20代の「白湯男子」は若くて健康ということかもしれません。

また、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」の理念では、白湯には「水」「火」「風」の3つの要素が含まれているので、飲むことで心身のバランスが整えられるとされています(内科医・関由佳さん)。心が乱されがちなニュースが多い昨今、本能的に白湯を求める若者が増えているのでしょうか。

白湯はこれまでも意識の高い人の間で注目されていました。

私見ですが、ソフトドリンクは意識の高い順に、白湯>ハーブティー>カフェイン入りのお茶やコーヒー>ジュース、といったランクがあるように思います。

ポテンシャル高めの白湯男子
イラスト=辛酸なめ子

昔、美容意識が高い女友達とカフェに行って何気なく紅茶を頼んだら「えっ、ハーブティーじゃないんだ……」と驚かれたことがあり、軽い焦燥感を覚えました。それでも、ハーブティーはまだ味を楽しむという嗜好的要素があります。

人は味覚という煩悩を超えると、無味無臭の白湯を好むようになります。もはやカフェにも行かず、家でお湯をわかしてタンブラーや水筒に入れて持ち歩くようになったら、飲み物マウントの勝者といっても過言ではありません。水道水を沸かせば経済的にも節約になるし、ペットボトルや紙コップも使わないので環境にも優しいです。

■「白湯男子」の元祖は意外や、あの「ビッグダディ」

10年以上前ですが、ある方のインタビューをする仕事をしていた時、「ビッグダディ」こと林下清志さんが白湯をリクエストしたという話を聞いて、なぜだかちょっと敗北感を抱いた記憶があります。マッサージの仕事もしていたので健康への意識が高かったのでしょう。

林下清志『さらば、ビッグダディ』(扶桑社)
林下清志『さらば、ビッグダディ』(扶桑社)

白湯を取り入れている芸能人について調べると、他にも松本潤、長澤まさみ、桐谷美玲、米倉涼子、檀れいなどの名前が出てきます。そんな中、「白湯男子」の元祖はビッグダディということかもしれません。

令和の「白湯男子」はどんなふうに白湯を飲んでいるのでしょう。周りの人に聞いてみると、30代のIT系男性は「白湯は心身が浄化されます」と話しました。白湯のデトックス効果で煩悩や雑念がリセットされそうです。

20代整体師の男性は「冷たい水だと大量に飲むのが難しいですが、白湯だとごくごく飲めます」と言っていました。職業柄、健康意識が高く、水道水は基本飲まないとか。「日田天領水かシリカ水、クリスタルガイザーなどをよく飲んでいます。買ってきた水を温めて白湯にしています」と、こちらはコストがかかっています。ちなみにコンビニで売られているペットボトルの白湯について聞くと「コンビニの白湯はどこで採水したか書いてないこともあるので飲まないです」と、産地にもこだわりが。ただの「天然水」ではいけない、というわけです。

ただ、白湯は手軽に取り入れられそうに見えて、実はハードルが高めです。健康法に詳しい知人によると、「5分以上沸騰させたものを、冷める前に飲むことで深部体温が温まります」とのことで、レンチンや電気ケトルなどで手早く温めるのではなく、やかんで5分以上煮沸して、60度くらいまで自然に冷ますことで、やっと健康効果が高い白湯ができるようです。これだと、コーヒーやお茶を淹れるより手間がかかることになります。

「白湯好き」だと言っている人は、寸暇を惜しまず自分の体をいたわっている、ウェルビーイング意識の高い方々なのかもしれません。ストイックで穏やかで達観している「白湯男子」が増えることで、世の中もポジティブに変化していく予感です。

日本の未来は「白湯男子」や「白湯女子」に任せていきたいです。

----------

辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)
漫画家/コラムニスト
武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。

----------

(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください