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本気で「ごっこ遊び」ができるかを見ればわかる…脳科学者が指摘「藤井聡太級に脳レベルが高い人」の共通点

プレジデントオンライン / 2024年3月8日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

脳のストレス耐性が強い人は何をしているか。脳科学者の茂木健一郎さんは「将棋棋士の藤井聡太氏は子どもの頃から、将棋で負けると悔しがって泣き、将棋盤から離れなかったというエピソードがある。大人からみれば将棋はゲームであり遊びとみることもできるが、それに本気になって取り組む負けず嫌いな子どもというのは、ストレス耐性を高めるための優れた資質を持っている。大人も同様に、仕事のチームのなかでの自分の役割を理解し『ごっこ遊び』としてそれを精一杯演じ切ってみると、ストレス耐性、脳レベルを高めることができる」という――。

※本稿は、茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■強いストレスを長く受けると記憶力が低下する

現代社会を生き抜くビジネスパーソンの多くが、ストレスとうまく付き合っていかなければならないのではないでしょうか。

「自分はストレスなんてない」という人はごく一部であって、「あー、ストレスで胃が痛いよ」などと嘆く人が多いはずです。

ですが、最新の脳研究において、強いストレスが長く続くと、脳の器官の海馬にダメージが加わり、アルツハイマー病や認知症といった記憶障害などの影響が出ることがわかってきました。

職場の人間関係における悩みや、責任が重くのしかかる仕事を任されるなどで長い間強いストレスにさらされていると、自分では気づかないうちに物覚えが悪くなってしまう可能性があるのです。

「最近どうも物覚えが悪くなってきた気がするが、きっと年のせいだ」

そんなふうに考えがちですが、実はストレスが脳に影響を及ぼしているのかもしれません。

■「耐えることは美徳」に要注意

では、なぜストレスが記憶障害につながっていくのでしょうか。

脳がストレスを感じると、副腎皮質という器官からストレスホルモンのコルチゾールという物質が分泌されます。

これは、身体の応急処置的な反応で、血糖値を高め、身体にエネルギーを与えてくれます。

ところが、強いストレスが長く続くと、このストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌され、海馬を萎縮させることがわかってきたのです。

私たち人間というのは、短期的にでも過度のストレスが加わると、脳の働きが抑えられます。

それが長期にわたると、物を覚えたり思い出したりする能力が低下して脳細胞に障害を起こし、最悪の場合にはアルツハイマー病や認知症を発症させてしまう可能性も出てきてしまうのです。

また、最近ニュースなどでもよく耳にするPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、その患者の脳を調べると海馬が萎縮していることがわかっています。

つまり、記憶を失うまでいかなくても、強いストレスを長く受けたことによって記憶力が低下する現象が起きているのです。

社会においては、「耐えることは美徳」とされることもありますが、我慢し続けてストレスを長期的に受けていると、自分の脳がダメージを受けてしまうかもしれないということを認識する必要があるのです。

ネガティブな感情イメージ。黒い破れた紙の背景に人頭の形をした紙。
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

■ストレスをゼロにしてはダメ

ただ、気をつけなければならないことがあります。

普段からストレスを抱えている、ストレスを抱えやすい、あるいはストレスに弱いといった人がストレスをゼロにしようとするのは、潔癖症の人がやたら手を洗ったり、部屋中を殺菌したりするのと同じことだということです。

こうした過度な無菌状態をつくり上げ、雑菌のいない生活を送ってしまうと、身体の免疫力も低下してしまいます。

実は、ストレスも同じであり、ストレスに弱いからといってゼロにしてしまうと、脳がストレスに対処する方法を覚えなくなってしまいます。

歌舞伎役者の市川海老蔵(当時)さんは、幼少のころから舞台に上がり、常にトップを走り続けてきました。

直接、お話を聞く機会が何度かあったのですが、彼がこれまで歩んできた人生のなかで受けてきたプレッシャーを考えれば、相当なストレスがのしかかっていたはずです。

海老蔵さんのすごいところは、そのプレッシャーから逃げることなく、強い気持ちで立ち向かうことでストレスのワクチン注射をしたようなことが起こり、脳のストレス耐性が強くなっているというところです。

当然ながら、私たちが海老蔵さんの脳レベルまですぐに到達することは難しいかもしれませんが、日々場数を踏んでいけば、ストレスとの戦いに勝つことができるようになるはずです。

■働き盛りの30〜40代は要注意

ストレスの原因には、身体的なものや精神的なものをはじめ、実にさまざまなものがあります。

身体的な原因は、身体の負担を伴うものです。

たとえば、ビジネスパーソンであれば毎日の長距離通勤や深夜までの残業、アスリートであれば病気やけがなどがあります。

そして、精神的な原因は古今東西を問わず、やはり人間関係を伴うことが多いようです。

職場や学校、あるいは家庭でも、常に人間関係はついて回りますから、老若男女それぞれが抱える人間関係にストレスの原因があるといえるでしょう。

もちろん、ストレスの感じ方には個人差がありますが、現代社会で最も大きなストレスを感じているのは、働き盛りのビジネスパーソン、特に30〜40代の人たちではないでしょうか。

この年代というのは、社会へ出て間もなかった20代の頃とは異なり、職場では中堅として活躍する立場になる頃です。

あるいは、役職に就いて部下を指導する役割を担うようになる時期でもあります。

部下の女性社員を指導する男性社員
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

プレッシャーが強くかかっているこの時期は、やらなければならないことがたくさんあるので、焦れば焦るほど、ますます「うっかりミス」が増え、ストレスが溜まっていってしまう……。こんなことは多くの人が経験していることではないでしょうか。

もちろん、仕事をしていく上で、あるいは生活をしていく上では、うまくストレスと付き合っていく必要がありますが、先に述べたとおり、脳がダメージを受けるほどの強いストレスは可能な限り回避しなければなりません。

なぜなら、ごく短期間のストレスであれば緊張効果によって、脳機能の向上をもたらしますが、ストレスが長期化すると脳に対して悪影響を及ぼしてしまうからです。

■瞑想が認知症予防にもなる

では、手軽なストレス解消法といえば何でしょう。

食事や飲酒、趣味、運動などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

確かに、ストレス解消に効果的であるとされる食べ物も多くありますし、仲間との食事や飲酒は非常に楽しく、ストレスが発散できそうです。

スポーツや音楽、旅行、ショッピングなどを楽しむことも、ストレスの解消には効果があるかもしれません。

また、最近ではストレス解消法として注目されるマインドフルネスというものもあります。マインドフルネスとは、「今、ここ」で起こっていることに注意を向け、自分の感情、思考を判断せずに観察する心のトレーニングのことです。

マインドフルネスで瞑想(めいそう)をすることで、ストレスでダメージを受けた脳を活性化させて、認知症の予防にもなるという研究結果も発表されているそうです。

■「テンション・コントロール」で脳を活性化させる

自分に合ったストレス解消法を取り入れて脳をダメージから守り、認知症を予防していくのもいいですが、このような一過性のもので一時的に乗り切るのではなく、脳科学の見地から私が特にお勧めしたいのが「テンション・コントロール」というものです。何か物事に当たって、自らテンションを上げるのです。

「あいつ、なんかテンション高くない?」

まわりからそう思われるくらいがちょうどいいのです。

空回りしたって構いません!

学生でもそうです。試験勉強をしているときに、試験の前日なのにダラダラとテンションが変わらない人は、やはりいい成績を収めることはできません。

「明日は試験だ! 頑張らなくちゃ!」

と、そこでグーッとテンションを上げられる人のほうが、脳がうまく活性化して勉強もどんどんはかどっていくのです。

勉強をする制服を着た少女
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

■ストレスは脳に悪いことばかりではない

多くのビジネスパーソンは、日頃どれほどのプレッシャーを自分自身にかけて仕事に向き合っているのでしょうか。

私が知る限りにおいては、多くの人はそういう経験をせず、日々を過ごしています。

多くのビジネスパーソンがストレスに悩んでいるというのが、何よりの証拠ではないでしょうか。

ストレスに抵抗する能力である「ストレス耐性」には個人差があり、ストレスは受け止める側によって影響の度合いが変わります。

これもまた、脳がどれだけストレスに耐えることができるかということにもつながっていきます。

ただし、ストレスをまったくかけない生活でも脳機能は衰えていってしまいます。

たとえば、ほどよい緊張感からドキドキしたり、高揚感からワクワクしたりする体験というのは、逆に脳の機能を高める効果があるのです。

ストレスがまったくない環境では、意欲の低下が生じてしまうので、ただ単調な毎日を過ごしてしまい、脳の活性化はストップしてしまうのです。

つまり、ストレスは脳に悪いことばかりではないということです。

ここで重要なのは、ストレスのダメージをカットするよりも、普段からストレス耐性を鍛えて高めることを意識するということです。

もし、普段のストレスレベルが30だとした場合に、60のストレスに耐える方法を知っていれば、30のストレスなどたいしたストレスではなくなります。

■ストレス耐性を上げる「ごっこ遊び」

では、どのようにしてストレス耐性をアップさせていけばいいのでしょうか。

自分自身に対しての上手なストレスのかけ方として、お勧めの方法の1つが、皆さんが子どものときにやっていた「ごっこ遊び」です。

将棋棋士の藤井聡太四段(当時)は、子どもの頃から、将棋で負けると悔しがって泣き、将棋盤から離れなかったというエピソードがあります。

大人から見れば、「子どもの将棋なんてただのゲームだし、ちょっと負けたくらいで泣かなくても……」と思うかもしれません。

ですが、藤井四段はすでに子どものときから自分へのストレスのかけ方を知っていたという見方ができるわけです。

大人から見ればたわいない遊びであっても、それに本気になって取り組む負けず嫌いな子どもというのは、やはりストレス耐性を高めるための優れた資質を持っているといえます。そして、そうした資質を遡ると、「ごっこ遊び」とつながっていることが極めて多いのです。

消しゴムを持って「ガタンゴトン、列車だぞー」と、どれぐらい本気で遊べるかということが、ストレス耐性のレベルを上げることに深く関係しているのです。

■自分の役割を見つけ、演じる

「大人になってからごっこ遊びはちょっと……」と思っている方もいるかもしれませんが、大人になってからもストレス耐性を高めることはできます。

茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)
茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)

それは、役割を演じるということです。

たとえば、仕事のチームのなかでの自分の役割を理解して、それを精一杯演じ切ってみるのです。

1つ例を挙げるならば、友人同士でキャンプに行ったとしましょう。

キャンプに行けば、テントを張る人、買い出しに行く人、料理をつくる人、お酒を用意する人など、それぞれが何かしらの役割を担うわけですが、その場でパッパと自分の役割を見つけてそれをしっかりこなしていける、すなわち自分の役割を演じ切れる人が自分自身に上手なストレスをかけられる人だといえるのです。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。近著に『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)など。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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