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実はラーメンは「栄養満点の食事」だった… 「がんで死ぬ国」日本の中高年にとって重要な“あるもの”が摂取できるラーメンのすすめ

集英社オンライン / 2024年3月6日 8時1分

50〜60代になると、体力・気力の低下や心身の不調に苛まれることが増えてくる。定年退職を前に、健康や仕事、夫婦関係、実家の老親のことなどで頭を抱え始める人は多い。高齢者専門の精神科医の立場から「我慢しない」という新しい老化予防策を提唱する和田秀樹氏の著書『老化恐怖症』より、日本人の生活習慣の当たり前を見直すきっかけとなる章を一部抜粋し、紹介する。

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「運動はしたいが続けられない」
人がやってはいけないこと

定年後を見据えて、「運動習慣はなかったが、やはり運動をしたほうがよいのか」と考える人は多いようです。確かに、職場に毎日通勤する人が、定年後は自宅にずっといるようになれば、それだけで運動量は大幅に低下し、運動不足になりがちです。



コロナ禍の外出自粛の時期には老若男女を問わず、多数の人が同じ問題に直面したことでしょう。運動不足の影響は歳をとるほどに大きくなります。特に高齢者は、使わない筋肉が萎縮する「廃用性萎縮」が起きやすいことに注意が必要です。風邪をこじらせたり骨折したりなどでしばらく入院するだけで、退院時には歩くのも困難になるような状態が生じやすくなります。

年齢を問わず、使っている筋肉については、その負荷に応じて新たに作られる仕組みを持っています。ところが新しい筋肉を作る機能は、加齢に応じて低下してしまいます。筋肉を合成するのに働く成長ホルモンや男性ホルモンが減少し、食事で摂取したタンパク質が分解されて作られるアミノ酸から、筋肉が合成されるまで時間がかかるためです。

その結果、歳をとるほど、運動不足などの影響が若い頃よりも出やすくなるわけです。毎日の通勤がなくなる定年後に運動不足になることが明らかな場合、新たな生活習慣として筋肉を動かすための運動を取り入れることが対策になるのは間違いありません。

走ることが好きならジョギングがいいでしょうし、バッティングセンターやゴルフの打ちっ放しが好きでストレス解消になるという人は、筋肉の量を減らさないためにも、ぜひ続けることをお勧めします。

運動は「無理にはしない」

ただし、ストレスになるような運動の仕方は避けるべきです。日本人の死因第1位のがんをはじめとする様々な病気の予防には「免疫力の向上」が重要です。ストレスは免疫力の低下を招きます。運動習慣のなかった人が嫌々ジムに通うとか、心身に鞭を打つようにしないと始められないという人は、あえて運動すべきではないでしょう。

かくいう私も運動が大嫌いなので、一切していません。ただ、糖尿病があることがわかってからは、毎日歩くように心がけています。移動の際には1駅分だけ余計に歩くとか、なるべく一日30分以上は歩くようにしています。

また、運動を頑張りすぎる人はかえって老化が進みやすいことも指摘しておきます。カロリーを消費して効率よく脂肪を燃焼するには「有酸素運動」が推奨されますが、有酸素運動は体を酸化させる活性酸素も大量に発生させるものです。活性酸素は細胞レベルで老化を進めてしまうので、有酸素運動は活性酸素対策とセットで行わなければ、筋肉をつけるどころか老化が促進されてしまいかねません。

息が切れて運動が続かないときは

40代を過ぎたあたりからは、多くの人が疲れやすさを実感し、駅などでは階段ではなくエスカレーターやエレベーターについ乗ってしまいたくなるものです。しかし、それは体力が低下したからというより、年齢とともに体を動かす量が減ったせいと考えられます。

体力(持久力)の指標として、「最大酸素摂取量」というものがあります。これは「体重1キログラムあたり、1分間に組織が酸素を取り込む最大の量」のことで、炭水化物や脂肪を酸素によって「燃焼」させてエネルギーを作り出す能力を表します。

最大酸素摂取量は、20代以降はなだらかに低下していきますが、例えば30代で一念発起し、毎日トレーニングをすると向上させることができます。加齢による衰えはあっても、80歳で一般の20代くらいの最大酸素摂取量を維持できるとされています。

人間の体は使い続けることで、高いレベルを維持することができます。つまり、日常の中で体を動かしてさえいれば、若々しさを保つことができるということです。運動習慣のなかった人が、定年後に週に1回、ジムに通ってトレーニングするよりも、毎日30分の散歩のほうが体力の維持にはつながりやすいはずです。

また、放っておけば一定の割合で低下していく最大酸素摂取量に比べて、握力の低下は少ないというデータもあります。日常生活で物を摑んだり握ったりする動作が、歳をとった後も若い頃とあまり変わらないことが知られています。

息切れをして運動が続かないという人も、最初は無理をしないで歩くことから始めれば、そのうち楽に続けられるようになるでしょう。一方、歩くだけで息が切れるという人は、私がそうだったように、心不全などの病気の可能性があるので、循環器内科などを受診して調べてもらう必要があります。心不全の場合、心エコー検査をすればすぐに有無が確かめられます。

痛みがある場合

運動をしようにも、いざ始めると膝や腰、足首などの関節に痛みを感じてしまうという人もいます。骨や筋肉、関節などに痛みがある場合、整形外科を受診するのが一般的ですが、原因が明らかではない慢性痛に関しては、解決しないケースも多いようです。

捻挫や関節炎など、X線検査などで疾患が明らかな場合を除き、慢性痛を取り除くには、整形外科よりもペインクリニックを受診するほうが治療の近道かもしれません。

たとえば、痛みを取るには鎮痛剤より、抗うつ薬が効く場合があります。神経細胞の接合部であるシナプス内でセロトニン濃度を高める働きをするSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などは、人間に備わっている痛みをなるべく脳に伝えないようにする神経システムを活発化させ、慢性痛による刺激に対して鈍感になる効果が期待できるのです。

そのように、痛みに対して様々なアプローチを試してくれるペインクリニックで痛みを取り除いた上でなら、運動を始めやすいかもしれません。少なくとも、痛いのを我慢して「健康のために」運動を続けるのは、本末転倒です。

「野菜が嫌い」「偏食が直せない」なら
サプリで補う足し算健康法

「健康のためには野菜を食べなければいけない」「カロリーの高い食事は体に悪いから、控えるべき」などと信じている人は多いのではないでしょうか。50代後半ともなると、「メタボ」への不安から、健康とは「やせていること」であり、「やせていると長生きできる」と思い込んでいるかもしれません。

しかし、これはまったくの間違いです。高齢になればなるほど「低栄養」の危険性が高まります。例えば、「太っているのは健康によくないからやせよう」と考えてカロリー摂取を控える食事制限を行うと、人間の活動に不可欠な栄養素まで不足することになりかねません。

タンパク質、コレステロール、脂肪といった栄養素を控えれば、たしかにやせるかもしれませんが、肌のツヤが悪くなったりシワや白髪が増えたりして、いかにも貧相な見た目になりかねません。運動したところで、栄養が足りなければ筋肉がつくどころかやつれていく一方です。

食事制限によりエネルギー代謝に不可欠な酵素やビタミン類が不足すると、糖や脂肪をうまく燃焼させることができず、細胞レベルで老化を促進してしまうことになりかねません。中高年になってそうした悪循環を招かないためにも、食事は糖質、脂質、タンパク質をバランスよく摂ることこそ、重要になるのです。

「体のために」嫌いなものを
食べる必要なし

「野菜が嫌い」だという人は、ジュースが飲めるならジュースで摂ればいいし、それも嫌ならサプリで補えばいい。これが私の考える「足し算健康法」です。ビタミン類のほか、食物繊維が含まれるものや、体内で抗酸化物質として働くβカロテン(ビタミンA)、亜鉛、セレンなどのミネラルを選ぶといいでしょう。

なかでも亜鉛は、体内で多くの酵素の組成に関わる重要な物質で、男性ホルモンであるテストステロンの合成に関わる酵素にも関与するため、男性ホルモンを増やすうえでは必須の栄養素です。さらには神経伝達物質の合成にも必要なので、亜鉛不足が続くとイライラや記憶力の低下を招きます。代謝や免疫機能にも重要な役割を果たし、欠乏すると味覚を感じなくなるなどの弊害が現れます。

納豆が嫌いな人は、ナットウキナーゼのサプリを選ぶこともできます。納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には血栓を溶かし、血液をサラサラにする効果があるので、脳梗塞の予防にも効くとされますが、自分は好きではないので納豆は食べません。(私はもともと血液がサラサラ過ぎて出血が止まりにくい体質のため、摂る必要性があまりないという理由もありますが)

自分が食べたいものを食べることで必要な栄養素が不足するなら、それはサプリなどで「足し算」をすればよく、嫌いな食べ物を、「体のために」と我慢して食べる必要はないと考えています。

肉と魚を多く食べる重要性

肉食の習慣がある地域ではコレステロール値が高い人が多く、そのため心筋梗塞になる確率が高いといわれてきましたが、必ずしもそうではないことが最近の研究でわかっています。

欧米の多くの国々では人口10万人あたり150〜200人ほどの男性が心筋梗塞で死亡していますが、フランスやイタリア、スペインなどの南欧の国々は、同じくらいのカロリーを摂っていても心筋梗塞による死亡率が10万人あたり100人以下と目立って少ない傾向があります。さらに低いのが日本と韓国で、同50人以下です。

南欧諸国と日本・韓国に共通するのが、肉とともに魚介類を多く食べる食習慣があることです。そうした事実から、魚に含まれる脂の一種「DHA(ドコサヘキサエン酸)」が注目されました。DHAが日常的に摂取するサプリとして普及した結果、米国では心筋梗塞が激減したのです。

日本人はサプリなどを取り入れて栄養補給をすることを、あたかも「反則」のようにとらえる風潮が根強くありますが、まったくのナンセンスと言えるでしょう。

なお、日本人が肉や魚でタンパク質や脂肪を摂ることのメリットは、高齢になればなるほど高くなります。

ずっと日本人の死因第1位だった「脳卒中」が減ったのは、「血圧の薬」と「減塩運動」のおかげだと思っている人が多いようですが、それだけではないはずです。昭和30年代から40年代を振り返ると、脳卒中で倒れた人の多くは、血圧140〜150程度で血管が破れていました。当時の日本人の栄養状況が今と違い、タンパク質の摂取量が十分ではなかったため、血管がもろく、血圧150程度にも耐えられなかったからです。

現在、血圧が200を超えていたとしても、血管が破れるケースは稀です。現在も死因の上位に脳血管疾患がありますが、その内訳を見ると血管が詰まる「脳梗塞」が圧倒的に多く、血管が破れる「脳卒中」はそれに比べて圧倒的に少ないことがわかります。

同様に、コレステロールも男性ホルモンの材料になり、免疫細胞の材料にもなるので、高齢になるほど意識して摂取する必要があります。「がんで死ぬ国」である日本では、コレステロールの摂取がより重要と言えるかもしれません。

たとえば、お店で食べるラーメンのスープには動物性の食材のほかに野菜など数十種類の食材が使われています。もはや日本人の国民食であるにもかかわらず、「健康のための食事制限」の信奉者からは「塩分や脂肪分が多い」と白眼視されることの多いラーメンですが、実は「栄養満点の食事」と言うことができるのです。

自分が美味しいと感じる食べ物を無理して我慢せず、足りない栄養素はサプリで補うなどの工夫により、バランスのとれた食生活を実践することは、十分可能なはずです。そのほうが、心身ともに幸せを感じてより健康になれるのではないでしょうか。


写真/shutterstock

老化恐怖症(小学館)

和田秀樹

2024/2/1

1012円

192ページ

ISBN:

978-4098254651

ベストセラー精神科医による最新老化対策

まだまだ現役……のつもりが、体力・気力の低下や心身の不調に苛まれることが増えてくる50代から60代。若い頃にはバブル景気の勢いもあって“イケイケ”だったが、定年を前にした今、思い通りにいかない自分の健康や仕事、夫婦関係、実家の老親のことで頭を抱え始める人は多い。これまで他人事だった「老いの恐怖」をどうすれば乗り越えられるのか。ベストセラー作家の著者が高齢者専門の精神科医の立場から説く──。

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