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45歳で逝った出版社社長の「死を噛みしめた言葉」 本の制作に生きた男が残した1200の投稿

東洋経済オンライン / 2023年12月3日 12時0分

暗雲は突然訪れた。

退院から間もなくして病状を公表

2021年8月15日、激しい腹痛に襲われた岡田さんは入院することになる。すぐに腸内の通り道が塞がれる腸閉塞が起きていると判明し、大腸の右半分を切除する緊急手術を受けた。手術は無事成功。ところが、入院13日目に主治医から予想だにしない病状が告げられた。

<希望は常にある。
 でも、
 なにを感じればいいのかわからない。
 悲しいわけでも、苦しいわけでもないし、冷たくも熱くもない。
 ただ空疎というか、無に近い。
 なにも感じたくない。
 なにかを感じるのが怖くて、無意識に感じたり考えたりすることを避けているような感じ。>

(2021年9月6日/みずき書林ブログ「からっぽ」より)

退院後もしばらくは心が定まらない日を送ったが、やがて自分の中で方針が固まる。

<みずき書林/岡田林太郎に関わってくださる皆さまへ
 先月の15日から31日まで、腸閉塞で入院していました。
 開腹手術をして大腸を半分ばかり切除しましたが、おかげさまで手術は成功し、いまは退院して日常生活に戻っています。
 ただ、その治療と検査の過程で、胃に癌が見つかりました。
 スキルス胃癌という進行の早い厄介な癌で、それがすでに大腸に転移していました。つまり、ステージ4です。>

(2021年9月9日/みずき書林ブログ「病気について」より)

病状を明らかにすることに迷いはあったが、「この先の時間を分かち合う人たちには、知っていてほしい」という思いが募ったこと、そして、出版社の代表として最悪のケースに備えなければならない責任を感じていたことも決意を後押しした。記事の後半、夭折した歴史学者・保苅実さんに自分を重ね合わせることで、自らが理想とする生き様にも言及している。

<33歳の若さでがんで亡くなった保苅実は、死の直前に友人たちに宛てたメールで、以下のように書き残しています。
 「勇敢で冷静、そして美しくありたいと感じています」
 このことばがどこかに引っかかっていたのかもしれません。僕もステージ4の癌であることを知らされたときに、ともすれば取り乱しそうになる頭の片隅で、勇敢でありたいと考えました。
 保苅実にならって僕なりのことばで言うと、いまは、
 「勇敢に、丁寧に生きていたい」
 と思っています。>

(2021年9月9日/みずき書林ブログ「病気について」より)

裏を返せば「死に様」でもある。この日から、ブログでは日々の暮らしと書籍の販売促進、闘病に加え、自らの死後に関する言及も見られるようになる。ただしそれはあくまでifとしての言及だ。生きることを諦めたわけではない。

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