後悔だらけの人生を送っている人が知らない事実 生きることは後悔を重ねることだった
東洋経済オンライン / 2023年12月29日 15時0分
自分は後悔ばかりのダメな人生を送っている、と感じている人もいるかもしれません。ですが、アメリカ・ベストセラー作家、ダニエル・ピンク氏は「後悔は人生の本質的要素であり、生きるとは後悔を重ねることともいえる」と言います。「後悔」という感情について考察する氏の最新作『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』より、一部抜粋・再構成してお届けします。
「後悔」という感情とは一体何なのか
私たちが「後悔」と呼んでいる感情、その正体はなんなのか。
それはすぐに気づく感情である半面、定義することは驚くほど難しい。これまで科学者や神学者、詩人、医師など、さまざまな分野の専門家たちがその定義を試みてきた。
心理療法の専門家は、「ある人がなんらかの行動を取ったり、行動を取らなかったりした結果、その人物が望まない状態が生じた場合にいだく不愉快な感情」と定義した。
経営理論家は、「後悔は、意思決定者がほかの選択をしていた場合に生じたであろう結果と、現実に生じた結果を比較することにより生まれる」と述べた。
哲学者は、後悔とは「過去を振り返って不愉快な感情をいだき、その事態を招いた原因を明らかにし、将来ある種の行動を取る意思を表明すること」と言っている。
後悔を正確に定義することが難しく感じられるとすれば、それは非常に重要なことを物語っている。後悔は、ひとつの状態というより、プロセスと考えるべきなのである。
たとえば、父親の願望を受け入れて大学院を中退してしまった過去を持つバージニア州の52歳の女性は、「大学院の学位を取得すればよかった」という後悔を抱えている。「学位を取得していれば、私の人生の軌跡は違うものになっていたでしょう。もっと満足感と充実感、そして達成感を味わえたはずです」と彼女は打ち明ける。
彼女が後悔するとき、彼女の脳内ではこのようなことが起こっている。まず、何十年も前のまだ若かった頃に立ち戻り、実際に起きたこと(父親の望みに従ったこと)をなかったことにし、それとは別のシナリオを思い描く。そのあと、再びタイムマシンに乗って、過去をつくり変えることで変化した新しい現在へ戻り、満足感と充実感と達成感を味わう。
こうしたタイムトラベルとストーリーテリングの能力は、人間だけがもっている「超能力」と言ってもいいだろう。ほかの動物にはできないであろうこの超能力を、私たち人間は、いとも簡単に活用できる。
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