合法的に"人をカモるビジネス"横行するカラクリ 「認知的な脆弱性を抱える人」が大被害に遭う
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 10時20分
ニュース沙汰になるような重大な詐欺師でなくても、この社会には善良な人たちの心の動きを利用して、「ズル賢く立ち回りたい人」がごまんと存在する。
「見えないゴリラ実験」(2004年イグ・ノーベル心理学賞受賞)で一躍有名になった心理学者、ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスの2人は、明らかに犯罪とはいえなくても、現代の企業の多くは「欺瞞的な手法」を標準的なビジネスとして採用しており、もはや合法と非合法の境界があいまいになっているという。望むと望まざるとにかかわらず、自分を守るために「ズルい人の手口」と「認知のしくみ」を学んでおかないと、生きにくい世界だということだ。
シモンズとチャブリスの最新刊『全員“カモ”』の冒頭で解説を寄せた作家の橘玲氏が、自身の経験をまじえながら、「フェイクが横行する時代」を生き抜くシンプルな対策を提示する。
自分は絶対だまされないと思っているなら、かなり危険
ワイドショーでたまたま見かけた特殊詐欺のニュースに「なんでこんな手口に引っかかるのか」と嗤(わら)い、自分は絶対だまされないと思っているのなら、あなたはかなり危険な立場にいる。なぜなら、誰もがいつかどこかでだまされることになるし、自信があるひとほどヒドいことになるからだ。
【写真を見る】「見えないゴリラ実験」で知られる世界有数の認知心理学者による最新作
『全員“カモ”』の著者である心理学者のダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスは、「見えないゴリラ実験」(2004年イグ・ノーベル心理学賞受賞)で、「全員“カモ”」になる理由を示した。
この実験についてはすでに知っているひとも多いだろうからネタバレすると、白のシャツと黒のシャツの6人の男女が、それぞれのチームに分かれてバスケットボールをパスする動画を見せられ、白いシャツのチームが何回パスしたかを数えるよう指示される(2個のボールが行きかうのでかなりの集中力がいる)。
するとこのとき、画面の右から着ぐるみのゴリラがゆっくりと登場し、中央で胸を叩いたあと、画面左へと歩き去っていく。その間、9秒間も画面にゴリラがいたにもかかわらず、多くの被験者はそれに気づかない(少なくとも半数はゴリラが見えなかった)。
ユーチューブで“Selective Attention Test” と検索すると動画が見つかるので、知り合いに試してもらうといい。見事に引っかかって、ちょっとした自慢ができるだろう。
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