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「軍用地投資」やってみてわかったすごいメリット 節税効果大、収入確実など良いことずくめ!?

東洋経済オンライン / 2024年3月22日 12時30分

沖縄県の嘉手納基地(写真:鈴木雅博 /PIXTA)

私事ですが、昨年10月に嘉手納基地(沖縄県)の軍用地を購入しました。いまタワマンや保険を使った相続税の節税が難しくなったことを受けて、高齢の富裕層の間で軍用地投資がひそかに脚光を浴びつつあります。今回は、軍用地投資の実態をレポートし、相続税対策の切り札になるのかどうかを考察します。

【画像を見る】軍用地物件を扱う「うちなーらいふ」のホームページ

マンション投資と比べた軍用地投資のスキーム

軍用地投資といっても、沖縄県以外の読者は「え、何それ?」という方が多いかもしれません。まず、今回の取引事例で軍用地投資のスキームを説明します。

軍用地とは、米軍や自衛隊の基地などに使用している土地です。国(防衛省)が地主から土地を借りて、米軍や自衛隊に提供しています。国は、地主に借地料(軍用地料)を払います。

全国各地に軍用地がありますが、その7割が沖縄県に集中しており、軍用地投資と言えば、一般には、沖縄にある米軍基地や航空自衛隊那覇基地への投資となります。そのため、沖縄には軍用地を専門に扱う不動産会社がありますし、沖縄銀行や琉球銀行には軍用地用ローンがあります。

軍用地は、普通の不動産のように不動産会社を通して売買されており、筆者のような沖縄県外者でも自由に購入することができます。国籍も関係ないらしく、中国の投資家も買っているというのは、少し意外です。

今回、筆者は嘉手納基地内の雑種地119平方メートルを与那嶺一郎さん(仮名)から購入しました。その取得価額と収入・費用の明細は以下の通りです(なお、取得価額は昨年10月に発生、収入・費用は今年から毎年発生します)。

<取得価額>
本体価格:10,860,000円
仲介手数料:424,380円
司法書士手数料:51,000円


合計:11,335,380円

<収入・費用>
借地料:201,208円
固定資産税:18,792円
地主会会費:800円


年間ネット収入:181,616円

以上の取得価額と収入・費用から、今回の物件の実質利回りは1.60%(=181,616円÷11,335,380円)ということになります。

購入のために現地に赴く必要はありませんが、今回は初めての軍用地投資なので、旅行ついでに沖縄に行き、与那嶺さんと会って契約締結と代金支払いをしました。与那嶺さんは70歳。父親から軍用地を譲り受けたそうで、戦後の沖縄をどう生きてきたのかといった昔話をとつとつと語る姿が印象的でした。

軍用地投資のメリット

いま、若い会社員から高齢富裕層まで多くの日本人に人気なのがマンション投資。マンション投資と比較して、軍用地投資のメリット・デメリットを確認しましょう。まずメリットから。

① 確実に借地料収入を得られる

マンション投資では、空室リスクや家賃滞納リスクがあり、これらによって実質利回りがかなり低下します。一方、軍用地投資は借り手が国なので、確実に借地料を支払ってくれます。

② 借地料が毎年値上がりする

借地料は、一般の不動産相場に関係なく過去一貫して上がっています。そして、今後も上がり続けるでしょう。これは安全保障政策上、政府は安定的に軍用地を米軍に提供するために、地主と円満に土地の賃貸借契約を締結する必要があるからです。今回の初年度の利回りは1.60%にすぎませんが、取得価額に対する利回りは年々上がっていくと見込まれます。

③ 資産価値減少のリスクが(ほぼ)ない

賃料が毎年着実に上がるので、資産の市場価値も基本的には年々上がります。マンションと違って底地なので、経年劣化や自然災害などによる価値減少のリスクもありません。

④ 相続税を節税できる

軍用地は、相続税算定の元となる相続財産評価額が民間地よりも低いうえ、さらに借地権割合40%が差し引かれます。そのため、軍用地の相続税財産評価額は、実勢価格の3分の1くらいまで下がります。

⑤ 管理が容易

マンション投資だと集金・維持・更新など管理が非常に煩雑です。管理会社にそれを委託すると、手数料で実質利回りが大幅に低下します。一方、軍用地は底地なので、購入後は固定資産税の支払い以外の手間はありません。借地料の国との交渉も地主会がわずかな年会費(今回の物件は約800円)で代行してくれます。

⑥ 換金性が高い

マンション投資では、物件を売ろうと思ったがなかなか買い手が付かず、大幅に値引きしてようやく売れた、という苦い体験をよく耳にします。一方、軍用地は人気が高く、数時間から数日であっという間に売買が成約します。

基地返還は大きなリスクか?

このように、良いことずくめという感じの軍用地投資。デメリットはないのでしょうか。

① 基地返還のリスク

いま政府は、沖縄県各地に散らばっている基地などの施設を返還し、嘉手納基地などに集約しようとしています。返還されればただの土地になり、資産価値が下がってしまうリスクがあります。

もっとも、極東情勢が緊迫する中、主要な基地まで返還することは考えられませんし、仮に返還が決まっても実現まで数十年はかかるでしょう。物件を選べば、基地返還のリスクはさほど気にする必要はないでしょう。

② 利回りが低い

マンション投資だと、実質利回りが5%を上回るのが当たり前。それに対し軍用地投資の場合、利回りは2~3%。今回のような優良物件だと、2%を下回ります。

しかし、マンション投資はリスクが大きく、追加投資などで年々利回りが下がっていくのに対し、軍用地投資はほぼノーリスクで、購入後は年々利回りが上がっていきます。この2つを比較するのは不適切で、むしろ同じノーリスクの国債と比べて利回りが高いと見ることもできます。

③ 物件を見られないので不安

原則として米軍基地内には入れないので、物件を見ることはできません。今回、嘉手納基地のすぐ脇にある「道の駅かでな」の展望台から基地内を眺めましたが、嘉手納基地は広大です。「職員住宅が建っているあの当たりかなぁ」という程度で、正確な所在はわかりませんでした。

同行した妻は、所有権移転登記が完了するまで、「これって、もしかして詐欺に遭っているんじゃないの?」と不安がっていました。信用ある不動産会社を通せば問題ないとは思いますが、物件を見ずに投資しなければならないというのは、デメリットと言えるかもしれません。

軍用地投資は究極の相続税対策か?

こうしてみると、メリットが多く、明確なデメリットがあまりない軍用地投資。今後、さらに注目が高まると思われます。ただ、絶対にお勧めかというと、そうでもありません。

まず、軍用地投資は、最初は低利回りでその後じわじわと初期投資に対する利回りが上がっていく投資なので、短期間で大きく儲けたいという肉食系の投資家にはまったく不向きです。

国税による節税対策への包囲網がどんどん狭まる中、相続税対策をしたいという富裕層にとってはどうでしょうか。今後も政府が軍用地の地主に不利な制度改正をすることは考えにくく、軍用地投資は究極の相続税対策に見えます。

ただ、問題は良い出物が少なく、しかも小粒なことです。もともと軍用地の地主は約5000人と少数ですし、彼らにとって借地料は重要な収入なので、軍用地をあまり手放したがりません。

今回の与那嶺さんは、所有する広い軍用地を分筆して一部を売りに出しました。このように小間切れで少額の物件が売りに出されることが多く、富裕層の節税ニーズを満たす1億円以上の大型物件の出物はあまりありません。

短期間で一発逆転の節税をしようとするのではなく、日頃から沖縄の不動産情報を扱う「うちなーらいふ」などをチェックし、良い物件が出たらこまめに買っていくというのが得策でしょう。

日沖 健:経営コンサルタント

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