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日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ

東洋経済オンライン / 2024年3月30日 11時40分

2024年の春闘では、多くの企業が賃上げを容認したが……(撮影:梅谷秀司)

「お金の本質を突く本で、これほど読みやすい本はない」

「勉強しようと思った本で、最後泣いちゃうなんて思ってなかった」

経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、発売直後から多くの感想の声が寄せられている。本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ」総合1位を獲得、19万部を突破した話題のベストセラーだ。

著者の田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。

「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会をつくることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」

今回は、日本人の賃金上昇には「限界」がある、その根本的理由を解説してもらう。

高い商品を作るか、クビにするか

春闘での約5%の賃上げが「33年ぶりの高さ」ということで話題になっている。とはいえ、これは労働組合に加入している人たちの話。中小企業で働く人が7割を占める日本において、組合組織率は1割にも満たないそうだ。

【写真】経済教養小説『きみのお金は誰のため』には、「勉強になった!」「ラストで泣いた」など、多くの読者の声が寄せられている。

仮に全体で5%賃金が上がっていたとしても、近年の物価上昇のペースには追いつけず、実質賃金は低下し続けている。

「賃金を上げるには労働生産性を上げること」というのが一般的な見解だ。労働生産性とは、おおまかにいうと、投入する労働に対してどれだけ生産できるかということ。企業の労働生産性を上げるにはシンプルに考えて2つのアプローチがある。

まずは、生産額(生産量×価格)を増やすこと。

しかしながら、日本のような成熟した経済においては、生産量を増やすことには限界がある。買ってもらえる量を増やすことは難しいからだ。リビングにテレビをもう1台置こうとはならないし、食料品を2倍食べようとはならない。

生産量を増やせないなら、価格を上げるしかない。実際に高機能なテレビを作ったり、高品質なイチゴを作ったりして客単価を上げる努力をしている。

企業の労働生産性を上げるもう1つの方法は、投入する労働を減らすことだ。要は働く人をクビにする。

「クビになんかできない。高い商品を作る努力をすべきだ」

終身雇用を是としている日本では当然の選択に思われるが、実はここに大きな落とし穴がある。日本全体で高い商品を作る努力をしても実質賃金は上がらないのだ。

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