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「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 11時40分

単身でバリに渡り、現地で乳がんに気づいた日高利香子さん(筆者撮影)

「乳がんになっちゃってね。手術するの」

【写真】乳がん経験者の女性が手がけるヨガウェア。肩紐を絞ると、傷跡をカバーできる

電話の向こうの友が、からっと打ち明けた。

「……全摘になるんだって。まぁいいのよ。子どもも大きいし、もう使い途ないんだから。“ぱぱっと取っちゃってください! ぱぱっとね!”って先生に言ったの」

よかった。思ったより元気で、さばさばと笑う声に私はほっとした。

――けれど次の瞬間、彼女は火がついたように泣き出した。

女性にとって特別の意味を持つ乳房

日本人女性の乳がん罹患率は2022年予測で9万4300人と、がんの中では最も多い。乳がんによる死亡者数は、2022年予測で1万5600人(国立研究開発法人国立がん研究センター「がんの統計2023」より)。

命を落とさずとも、なんらかのかたちで乳房を“うしなう”人は数多い。

乳房は、女性にとって身体のほかの部位とは異なる意味を持つ。大きさ、かたち、柔らかさ……この愛しくも悩ましいふくらみを手放すとき、女性たちの“胸”に降りるものは何か。乳がんを乗り越えた、ふたりの女性に問うてみた。

「どうぞ、お手に取ってご覧くださいね。このウェアは、乳がんの手術をされた方にも気にせずお召しいただけます」

横浜にある古民家カフェの一角。色とりどりの小物や衣類を並べながら、日高利香子さん(仮名・50歳)が微笑んだ。現在バリに住む利香子さんは、日本に帰るたび小さなイベントを開き、自身が手がけるヨガウェアやバリの雑貨を販売しているという。

私が前述のウェアを見ていると、利香子さんが傍らにやってきた。

単身でパリへ

「もう5~6年ほど前になりますが、私、乳がんを経験したんです。乳房は全摘しましたが、猫のおかげで助かったんですよ」

「猫のおかげ?」

驚く私に頷いて、彼女は続けた。

「私が初めてバリを訪れたのは20代後半のころで、今から25年ほど前になります。当時のバリはヨーロッパと現地のカルチャーが小気味よくミックスされていて、一瞬で心を奪われました。“ずっとここにいたい!”と思って、その後、単身移り住んだんです」

もともとフラダンスのインストラクターをしていた利香子さんは、バリでフラ用品の製造販売をしようと思っていた。すると、噂を聞きつけた人たちからオーダーが相次ぎ、彼女は思いがけず嬉しい悲鳴を上げることとなった。

「本当はオリジナルのフラショップをやりたかったんです。でも、OEMでお客様からオーダーをいただいているのに、自分がさらにオリジナルを作るのは立場的に難しいものがありました。フラでなければなんだろう?と考えたとき、思いが向いたのがヨガウェアでした。ちょうどバリが“ヨガの聖地”と言われ始めた時期と重なりましたし、前職でカジュアルウェアの販売をしていたので、アイデアもどんどん湧きました」

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