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「3重」障害抱える女性、働くための人知れぬ努力 活躍に必要な企業側の「合理的配慮」とは

東洋経済オンライン / 2024年4月13日 8時0分

カフェで取材に応じる筒井さん。心身に障害を抱えながら、「国際的な舞台で活躍したい」という夢を追い東京五輪にも携わった(記者撮影)

一定数以上の従業員を抱える事業主には、障害者の雇用が義務づけられている。全体の雇用者に占める身体や知的、精神障害者の割合を定めたものが「法定雇用率」だ。この4月、その法定雇用率が2.3%から2.5%に変更された。

従業員40人に1人は障害者を雇わねばならない。国は段階的に雇用率を引き上げていく方針で、2026年度には2.7%となる。障害がある労働者の定着や戦力化に必要なことは――。

脳性マヒに発達障害、統合失調症

「障害に対する負い目はまったくない。自分の努力次第で、きちんと会社の力になれる」と胸を張るのは、福岡県久留米市出身の筒井華菜子さん(34歳)。

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筒井さんは約1000グラムで誕生し、後に脳性マヒが発覚。全身が動きにくく、伝い歩きしかできない。移動には電動車いすが必要で、同じ姿勢を長時間にわたり維持するのも難しい。

しかし、そうした障害を乗り越え、北九州市立大学の外国語学部を卒業。地元の住宅設備メーカーの契約社員としてキャリアをスタートさせた。与えられた業務は製品の輸出入に関わる英文書類の作成や翻訳だった。

「健常者の同期に負けたくない」と、残業もいとわず、がむしゃらに働いた。壁にぶつかったのは3年目。新人扱いが終わり、仕事の速さを求められるようになった。

筒井さんは両上肢にもマヒがあり、パソコンの操作に少し時間がかかる。会社側も事情を理解していたが、「もっと頑張れ」と命じられた。深夜まで作業しても締め切りに間に合わない案件が増え、焦りや不安が募った。細かなミスも続出し、上司に叱責されるようになった。

この時期には発達障害も判明。精神的に落ち込み、業務にも影響する負のスパイラルに陥る。結局、会社から雇い止めに遭った。

ハローワークを経由し、次は地元の大学で事務補助員として働いた。有期雇用のアルバイトで賃金は低かったが、仕事の内容は充実していた。高い語学力を見込まれ、研究者が海外の大学や企業と共同プロジェクトを始める際の契約業務を任されたのだ。気持ちも上向き、障害と少しずつ向き合えるようになった。どうすれば円滑に仕事が進むかを考え、実行した。

身体障害との付き合いでは電動車いすのリクライニング機能を活用。1時間に1回、5分ほどかけて全身を動かし、強張りやすい筋肉の緊張をほぐす。疲れがたまると、集中力が散漫になり、誤りが増えると気付いたからだ。

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