RTX 4070 Ti SUPERで4KプレイもイケるゲーミングPC、空冷でも14700Fが最大61度でド安定
ASCII.jp / 2024年2月29日 10時0分
前回に引き続き、サイコムの空冷ゲーミングPC「G-Master Spear Z790/D5」を紹介する。本機は通気性に優れたPCケースと、Noctuaのサイドフロー型CPUクーラーで、空冷でも静かに運用できる。今回はベンチマークを通して、その実力を探っていく。
i7-14700F&RTX 4070 Ti SUPER、最新タッグの実力やいかに
試用機材のCPUはインテルCoreプロセッサー(第14世代)の「Core i7-14700F」。ビデオカードはGeForce RTX 4070 Ti SUPER搭載モデルと、いずれも今年1月に発売したばかりの最新PCパーツ。メインメモリーはDDR5-4800の16GB×2構成と、かなり高性能な仕様だ。
Core i7-14700Fはプロセッサーのベースパワー(PL1)が65W、最大ターボパワー(PL2)が219WのCPUとなる。20コア/28スレッド(Pコアが8基、Eコアが12基)でマルチスレッド性能が高く、広範な用途で頼りになるモデルと言える。
定番ベンチマークでPCの基本性能を検証
まずは、G-Master Spear Z790/D5のCPU性能を「CINEBENCH R23」でチェック。このベンチマークソフトは約10分間CGレンダリングを行ってあと、その性能をスコアー化してくれるもの。
結果は「pts」という単位の独自スコアーで表示し、この数値が高ければ高いほど、CPU性能が高いということになる。なお、CPUテストは全コアを使用するMulti Coreと、1つだけ使うSingle Coreの2種類。
Multi Coreのスコアーは18929pts、Single Coreのスコアーは2084ptsという結果。Multi Coreのスコアーが若干低いと感じるものの、Single Coreのスコアーはかなり高い。コア/スレッド数の多さが特徴となるCore i7-14700Fだが、少数スレッドで動作するソフトでも活躍するだろう。
続いてはストレージ性能。試用機材には標準構成と同じく、Crucial製のPCIe 4.0接続M.2 SSD「T500」(1TBモデル)が入っていた。公称速度はシーケンシャルリード・ライトで、7300MB/s・6800MB/sと高速ながら、コストパフォーマンスも良いSSDだ。「CrystalDiskMark 8.0.4」でチェックしてみた。
シーケンシャル速度はリードもライトも公称速度に届かなかったが、その差は小さい。実効速度でも、地力が出せたと言っていいだろう。これだけ速ければ、動画編集時のファイルコピーなどもストレスなく行える。
PCの総合性能は「PCMark 10」で計測。このベンチマークソフトはブラウザーやオフィスソフト、動画や写真編集といった様々な用途のソフトを実行し、総合的に性能を評価してくれる。総合スコアーのほか、ブラウザーやビデオ会議のEssentials、ワープロや表計算を扱うProductivity、動画や写真編集などのDigital Content Creationといったサブスコアーもチェックできる。
総合スコアーは9302と、スペックから考えるともう少し高くてもいい結果と言える。サブスコアーを見てみると、Digital Content Creationのスコアーが若干低めに出た可能性が高い。とはいえ、一般的なPCと比べて「かなり高性能」という点に疑いはなく、幅広い用途で快適に使えるはずだ。
3Dグラフィックス性能をチェック
G-Master Spear Z790/D5の3Dグラフィックス性能は、「3DMark」でチェック。Direct X12 Ultimateに対応し、リアルタイムのレイトレーシングやグローバルイルミネーションといった重たい処理をふんだんに使ったテスト「Speed Way」の結果から見てみよう。
6338スコアーと優秀な成績で、さすがGeForce RTX 4070 Ti SUPER搭載ビデオカードを採用しているだけのことはある。この性能なら、ゲームでレイトレーシングを有効にしても快適に楽しめるだろう。では、DirectX 12を使用した「Time Spy」の結果も見てみよう。
こちらのスコアーも22076と非常に高い。こちらは解像度がWQHD(2560×1440ドット)のテストだが、実際のゲームでもWQHDはもちろん、4Kプレイも視野に入れていいレベルだ。ほかのテストも試してみたので、結果を下記にまとめておこう。性能比較の参考にしてほしい。
FF14・FF15なら4Kゲーミングでも快適
もう少し実際のゲーム寄りのベンチマークとして、重量級の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチマーク)も試してみた。
今回は高性能ゲーミングPC構成なので、画質はプリセットの最高となる「高品質」に設定。解像度はフルHD(1920×1080)、WQHD(2560×1440)、4K(3840×2160)の3パターンで検証した。
FF15ベンチマークはスコアーだけではなく、簡易的な「評価」も表示してくれるが、いずれも「とても快適」以上となった。重量級のゲームでも十分プレイできるだけの実力があるというわけだ。
FFつながりで、人気MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下、FF14ベンチマーク)も試してみよう。この夏には大型アップデートの登場が予定されているだけに、今から楽しみにしている人も多いタイトルだ。
FF15ベンチマークよりもだいぶ軽量なテストになる。そのため、画質はプリセットの最高となる「最高品質」、解像度は4Kのみで検証した。
スコアーは18475、評価は最上の「非常に快適」と文句なし。レポート出力機能でフレームレートを見てみると、最低フレームレートでも80fpsを超えており、Core i7-14700F&GeForce RTX 4070 Ti SUPER構成のG-Master Spear Z790/D5なら。4Kでも十分快適に遊べることがわかった。
CPUクーラーの限界はどこ? PL1の設定を盛ってみた
前回も少し触れたが、G-Master Spear Z790/D5はベンチマーク中でもあまりファンの回転音は聞こえず、空冷PCのわりに結構静かだ。となると、CPUクーラーは冷却力よりも静音性を優先する設定になっているのかもしれない。 もしそうであれば、その設定次第ではさらなる性能向上が見込める。そこで、まずはモニタリングソフト「HWiNFO64 Pro」で、CINEBENCH R23(Multi Coreテスト)実行中のCPUパッケージ温度をチェックしてみた。
Core i7-14700Fの仕様通り、PL1は65W、PL2は219W。CPUの消費電力(CPU Package Power)は平均で約66.5Wと、PL1に近しい値になっている。気になるCPUパッケージ温度(CPU Package)は最大61度と、サーマルスロットリングで性能が低下する危険域(100度)まではだいぶ遠いことがわかった。
なお、ベンチマーク中の動作音は、PC正面約40cmの距離で36.1dB。アイドル時の35.7dBと比べ、わずかに回転数が上がったなと感じるくらいの静かさだった。つまり、PL1=65W、PL2=219Wのインテル推奨設定なら、温度も静音性もなんら問題がないということ。であれば、PLの値をいじれば、さらに性能が伸ばせるかもしれない。幸いCPU温度はまだ余裕がある。
PC自作の世界ではCPUのPL設定は「無制限」がデフォルトだ。そのため、ベンチマークするとBTOパソコンよりも性能が高くなることが多い。前述の検証でややスコアーが低めに感じた理由もそこにある。そこで、ちょっと極端だが、PL1をPL2と同じ219Wに設定。これでCPUの温度や動作音がどう変化するのか見てみよう。
CPU Package Powerは平均で約163.4Wと、219Wまでは届いていないものの、かなり大きく上昇している。とはいえ、CPUのパッケージ温度は最大で75度と、この設定でもまだ安全圏内。ただし、動作音は40.2dBまで上がり、さすがに無視できないレベルになった。
ちなみに、CINEBENCH R23のスコアーは、65W設定時の18929ptsに対し、219W設定時は20274ptsに向上した。とはいえ、30dB中盤の静音性を犠牲にしてまで得たい上り幅ではない。PL1=65W設定がちょうどいいバランスであることは確かだ。あいもかわらず、サイコムのPL設定は絶妙と言える。
しかしながら、静音性に目をつぶれば、このCPUクーラーならより高性能なCPUを選んでも、安定した動作が期待できそうだ。例えば、BTOメニューで同じくPL1の定格が65Wの「Core i9-14900F」(24コア/32スレッド)を選んでも、安全に運用できるだろう。
まとめ:バランス重視でコスパも練られた空冷ゲーミングPC
高効率なエアフローを実現するPCケースと、空冷ながらも冷却性能と静音性に優れたCPUクーラー。それらを組み合わせことで、G-Master Spear Z790/D5は最新CPU&GPUのハイスペックな構成でも快適に使える空冷ゲーミングPCになっている。
本体サイズが大きめな点は好みが分かれるところだが、そのぶん拡張性は高い。多数のHDDやSSDを搭載でき、5インチベイでは光学ドライブも運用できる。ゲームはもちろんだが、動画編集などのストレージを多数必要とする用途であっても安心だ。
静音性にとことんこだわるなら、サイコムのBTOパソコンにはさらに静かなSilent-Masterシリーズがある。しかし、「そこそこ静かで高性能」という条件なら、本機のほうが安く購入できる。「高性能な空冷ゲーミングPCはウルサイ」という先入観がある人にこそ使ってほしい。
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