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劣等感に悩んだ米マイクロソフトエンジニア牛尾剛がたどりついた「幸せを感じる働き方」

CREA WEB / 2024年1月29日 6時0分

 米マイクロソフトでシニアエンジニアとしてクラウドサービスに携わっている牛尾剛さん。しかし、人生でずっと劣等感に悩み、大人になってからADHDと診断されたという。しかし牛尾さんは、転職によって劣等感を払拭することができ、今も自分なりのメソッドを実行することで、自己肯定感をさらにあげていると話す。そんな牛尾さんが見出したマインドセットを綴った著書『世界一流エンジニアの思考法』も話題だ。牛尾さんに「幸せを感じる働き方」を聞いた。


──日本では若者の労働意欲が低くなっているといわれています。人口が減少し国力も低下しているなか、将来や自分に対する諦めも蔓延しているように感じます。牛尾さんにもそんな時期がありましたか?

 ありましたよ。というか、生まれてから僕にはずっと劣等感しかありませんでした。

 僕は幼少の頃から何をやってもできない“要領の悪い”子どもだったんです。何をするにも人の3倍くらい時間がかかり、大人になってからADHDと診断されました。

 それでも、僕はずっとプログラマに憧れ、どうすれば不得意なことでも効率よく人並みにできるかを意識的に研究し続けてきました。

 ただ、44歳で米マイクロソフトに転職し、現在、本場アメリカで数少ない日本人クラウドエンジニアとして僕が働けているのは、和田秀樹先生の『受験は要領』という書籍に出合えたことも大きかったと思っています。


幼少期は劣等感を抱いていたという牛尾剛さん。

──精神科医の和田秀樹先生は、多くの生徒を東大や難関大合格に導いてきた「緑鐵受験指導ゼミナール」の創設者ですよね。どんな気づきを得たのでしょうか。

 僕は子どもの頃から1回も「成功」したことがなく、それが半ばトラウマみたいになっていたんです。でも『受験は要領』で「試験で点数を取る」という受験にフォーカスした方法を知り、衝撃を受けました。そして、愚直にその著書に書いてあることを実行したら、それまでの僕の偏差値ではとてもいけなかったような大学に合格でき、大きな自信になりました。

 これが僕の人生で初めての「成功体験」となって、そこから「メソッド」にも興味を持つようになりました。

自分を「牛尾剛くん」というキャラクターにする

──牛尾さんがよく使っているメソッドがあれば教えてください。

 まずは「理解に時間をかける」ことです。

 日本では、「早くできる」ことに全力を注いでいました。「とにかく生産性をあげなければ」「どうすれば早くできるだろう」と常に焦燥感にかられ、アウトカム(成果)を出すことに集中していました。

 ところが、マイクロソフトで世界一流のエンジニアたちに接して、どんなに頭がいい人でも理解には時間がかかるのだということがわかったのです。頭のいい人の理解が早いように見えるのは、時間をかけて基礎を積み重ねているからです。これにより、違う状況になったときも応用が利き、いつでもどこでも即座に使うことができるのだと知ったのは、驚きでした。

 そこで、僕も初歩の学習を一からやり直してみることにしました。「別のやり方で同じことをしたらどうなるかな」と考えながら複数の解法で解いたり、メモリや速度の違いを見たりと、簡単なことからやると、とても楽しいこともわかりました。

 メールひとつ読むのも、英文を読み飛ばさずに時間をかけてゆっくり理解しながら読むように変えたところ、技術やコンテキストがかつてないほどクリアに理解できるようになりました。

──理解に時間をかけることで、結果として問題解決や実装が早くできるようになったのですね。ほかに牛尾さんが実践されているメソッドはありますか?

 僕は自分で手を動かして何かをつくる仕事に関しては「三流」なのですが、「人にやってもらう」仕事を仕切ると、成功することが多かったので、コンサルタントやエバンジェリストとしては評価を受けてきました。

 そこで、何かできないことや困ったことに直面するたびに、自分を「牛尾剛くん」というキャラクターとしてとらえ、タスクに対して客観的に何がどこまでできているか、どこが問題かを棚卸しして、ひとつひとつ解決策を示し、1〜2週間ごとにふり返りを行うようにしたのです。

 さらに客観視するために、自分で解決策が見いだせないところは僕のメンターにも見てもらい、そこで受けたアドバイスを愚直に実行していくことで、9割のことは解決できるようになりました。


牛尾剛さん。

──メンターは日本の直属の上司みたいなものですか?

 僕の場合は、友人のクリスにお願いしています。クリスは友人であると同時に、自分がこんなふうになりたいと思う「超一流」の人でもあるので、僕から頼んでメンター役を引き受けてもらいました。

 2週間に1回30分程度のメンタリングをお願いしていますが、そこで未解決の「牛尾剛くん」の問題の相談もしています。ここでクリスから目からうろこのアドバイスをもらったりするわけですが、このとき、もらったアドバイスをそのまま愚直に実行することを徹底しています。

 僕が思うに、成功するメソッドって料理のレシピと一緒なんですよ。レシピ通りに材料をそろえて、レシピ通りの順番でつくれば、たいていおいしいものがつくれますよね。でも、下手に自己流にアレンジしてしまうと、暗黒に陥るじゃないですか。「その通りにやれば成功する」というメソッドがあるなら、その通りにやってみて、それでもうまくいかないところがあれば、そこの部分を「なぜうまくいかないのか」とその道のスペシャリストに聞く。そうやってちょっとずつでも進めていったら、何もしていない人より100倍できるようになりました。

「不幸そうな人がいない」マイクロソフト

──語学の勉強と似ていますね。

 そうかもしれませんね。先日読んだ本に面白いことが書いてありました。マイアミからロサンゼルスに向かう飛行機のヘッドが1度ずれると、行き先がサンディエゴに変わってしまうのだそうです。

 飛行機の角度1度なんて、肉眼では違いすらわかりませんが、行き先がそれだけ変わってしまうように、結果に大きな違いが出るんですよね。

 語学学習も、エンジニアの「勉強」もきっとこれと同じで、やっているときは効果が感じられなくて「こんなことして何になるんだろう」と気持ちが萎えるかもしれませんが、積み重ねていくことで確実に力になるのだと思います。


牛尾剛さん。

──牛尾さんは筋トレも続けていらっしゃいますよね。

 はい。筋トレは語学やエンジニアの勉強より、よっぽど効果がわかりやすいのでおすすめです。僕は毎朝必ず30分、ランニングとウォーキングをするようにしていますが、最初に1週間続けたら「気力のなさ」が解消されて、3カ月後には体力がついて、休日にだらだら寝込まなくなりました。

 リモートワークをしていると体力が落ちやすいので、メンタル面にも影響が出ます。毎日30分の身体への投資は、必ず行うことをおすすめしたいです。

──「世界一流」の思考法を身につけて、牛尾さんが一番よかったと感じているのはどのようなことですか?

 自分の「できない感」が払拭できたことです。日本にいた頃は、念願のソフトウェア業界に就職できても、同僚たちに比べて自分はずっと頭が悪いと思っていたし、仕事をコントロールできているという手応えもありませんでした。

 でもアメリカで、どんな人にとっても初めてのことは難しく、理解には時間がかかるという事実に気づいたことで、何かわからないことがあっても時間をかければできるという自信と、「自分ならできる」という安心感が生まれました。

 結局、シンプルな日々の積み重ねが一番強く、そしてそれを「やる」と決めるのは自分でしかありません。マイクロソフトにいて感じる日本との一番の違いは、「不幸そうな人がいない」ことです。もし仕事が面白くない、会社が合わないと感じているなら、どうすれば自分が幸せになれるかを考えて、仕事の仕方や会社を自分で「選択」すると、自分の人生がよりよいものになると思います。

文=相澤洋美
撮影=三宅史郎

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